KADOKAWA Technology Review
×
化学実験を在宅で、IBMがロボット+AIでクラウド新サービス
IBM Research
IBM has built a new drug-making lab entirely in the cloud

化学実験を在宅で、IBMがロボット+AIでクラウド新サービス

IBMは人工知能(AI)、ロボット、クラウドを組み合わせて、科学者がリモートで化学実験ができるプラットフォームを構築した。新薬や新素材が市場に出るまでの期間を劇的に短縮し、費用を低下させることが狙いだ。 by Karen Hao2020.09.01

IBMは、人工知能(AI)モデルとクラウド・コンピューティングのプラットフォーム、ロボットを組み合わせて、「ロボRXN(RoboRXN)」と呼ばれる新たな化学研究所をクラウド上に構築した。科学者が在宅で新たな分子を設計したり合成したりするのを支援する。

科学者はWebブラウザー経由でロボRXNにログインできる。作成したい分子化合物の骨格構造を白紙のキャンバスに描くと、ロボRXNが機械学習を用いて必要な材料と調合の手順を予測し、遠隔地の研究所のロボットに指示を送ってその内容を実行させる。実験が完了したら、ロボRXNが結果と共に報告書を科学者に送信する仕組みだ。

A screenshot of IBM's RoboRXN platform, which lets scientists draw the skeletal structure of the molecular compounds they want to make.
科学者は作成したい分子化合物の骨格構造をこロボRXNのキャンバスに描く。

新薬や新素材が発見されて製品化されるまでには、従来であれば平均で10年間、1000万ドルかかるとされてきた。その時間の多くは、新たな化合物を合成するための実験と、その試行錯誤から発見を得るという骨の折れる繰り返しの作業に費やされる。IBMは、ロボRXNのようなプラットフォームが化合物の作成方法を予測し、実験を自動化することで、この過程を劇的に加速させたいと考えている。理論的には、これによって医薬品開発のコストが下がり、現在のパンデミックのような衛生上の危機に、科学者たちがよりすばやく対応できるようになる。現在のパンデミックの対応では社会的距離が必要とされているため、研究所での作業は停滞を余儀なくされている。

AIとロボット工学を用いて化学合成を高速化させたいと考えているのはIBMだけではない。数多くの学術研究機関やスタートアップ企業が、同じ目標に向かって取り組んでいる。そうしたスタートアップ企業のひとつであるキボティクス(Kebotix)の最高経営責任者(CEO)を務めるジル・ベッカーによると、ユーザーが分子の設計をリモートで送信し、合成した分子の分析結果を受け取るというコンセプトは、今回IBMのプラットフォームが新たにもたらした重要な要素だという。「ロボRXNにより、IBMは発見を加速させるための重要な一歩を踏み出しました」(ベッカーCEO)。

人気の記事ランキング
  1. What are the ingredients of Pfizer’s covid-19 vaccine? ファイザーの新型コロナワクチンの成分は?専門家が解説
  2. The first black hole ever discovered is more massive than we thought 白鳥座X-1ブラックホール、従来推定よりはるかに巨大だった
  3. Covid-19 immunity likely lasts for years 新型コロナ、免疫は長期間持続か=米新研究
  4. There’s a tantalizing sign of a habitable-zone planet in Alpha Centauri ケンタウルス座アルファ星のハビタブルゾーンに惑星が存在か
  5. So you got the vaccine. Can you still infect people? Pfizer is trying to find out. ワクチンを打っても マスクを外せない理由
カーレン・ハオ [Karen Hao]米国版 AI担当記者
MITテクノロジーレビューの人工知能(AI)担当記者。特に、AIの倫理と社会的影響、社会貢献活動への応用といった領域についてカバーしています。AIに関する最新のニュースと研究内容を厳選して紹介する米国版ニュースレター「アルゴリズム(Algorithm)」の執筆も担当。グーグルX(Google X)からスピンアウトしたスタートアップ企業でのアプリケーション・エンジニア、クオーツ(Quartz)での記者/データ・サイエンティストの経験を経て、MITテクノロジーレビューに入社しました。
Innovators Under 35 Japan 2020

MITテクノロジーレビューが主催するグローバル・アワード「Innovators Under 35」が2020年、日本に上陸する。特定の分野や業界だけでなく、世界全体にとって重要かつ独創的なイノベーターを発信していく取り組みを紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. What are the ingredients of Pfizer’s covid-19 vaccine? ファイザーの新型コロナワクチンの成分は?専門家が解説
  2. The first black hole ever discovered is more massive than we thought 白鳥座X-1ブラックホール、従来推定よりはるかに巨大だった
  3. Covid-19 immunity likely lasts for years 新型コロナ、免疫は長期間持続か=米新研究
  4. There’s a tantalizing sign of a habitable-zone planet in Alpha Centauri ケンタウルス座アルファ星のハビタブルゾーンに惑星が存在か
  5. So you got the vaccine. Can you still infect people? Pfizer is trying to find out. ワクチンを打っても マスクを外せない理由
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.2/Winter 2020
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.2/Winter 2020SDGs Issue

今、世界中の企業や機関の技術者・研究者たちが各地で抱える社会課題を解決し、持続可能な世界の実現へ向けて取り組んでいる「SDGs(持続可能な開発目標)」。
気候変動や貧困といった地球規模の課題の解決策としての先端テクノロジーに焦点を当て、解決に挑む人々の活動や、日本企業がSDGsを経営にどう取り入れ、取り組むべきか、日本が国際社会から期待される役割について、専門家の提言を紹介します。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る