KADOKAWA Technology Review
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SNS全盛の時代に
「デジタル・ガーデン」が
静かなブーム
Ms Tech | Wikimedia, Pixabay
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Digital gardens let you cultivate your own little bit of the internet

SNS全盛の時代に
「デジタル・ガーデン」が
静かなブーム

ソーシャルメディアの画一的な外観や操作感を避け、個性的でクリエイティブなサイトを作る人が増えている。インターネット上で独自の価値観を公開する、新たな庭園(デジタル・ガーデン)を育てようとしているのだ。 by Tanya Basu2020.09.29

サラ・ガーナーは何かしっくりこない違和感をずっと覚えていた。

ソフトウェア・エンジニアのガーナーは、自分の個人サイトを刷新しようとしていた。だが、そのサイトはどこか自分らしさに欠けているように思えた。自身のソーシャルメディアやプロとしての作品へのリンクといった必要な要素は揃っていたものの、自分の個性が反映されていなかったのだ。そこで、ガーナーは夢中になっている博物館に関するページを作成した。ページはまだ制作途中だが、好きな博物館への想いや沸きあがる感情を描写し、他の愛好家たちが博物館の情報やそこで学んだことを共有できる場所にしたいと思い描いている。

「私が求めているのは、不思議な感覚や、時を超えたつながりです」。ガーナーは言う。

「デジタル・ガーデン(digital gardens)」の世界へようこそ。ブログをより創造的に再構築したデジタル・ガーデンが、ネット愛好家の間で今、静かなブームになっている。マイスペース(Myspace)やタンブラー(Tumblr)のようなコラージュ風の芸術的なサイトや、フェイスブックやツイッターよりも予測不能で非定型なサイトを作ろうという動きが拡大しているのだ。

デジタル・ガーデンは幅広いトピックについて探求し、特にニッチな趣味を持つ人々の間で成長と学びを示すために頻繁に修正され、変更されていく。こうしたデジタル・ガーデンを通じて、人々は繋がりやフィードバックよりも、自分だけのものと呼べる静かな空間に重点を置いたインターネットを作り上げているのだ。

「みんなが自分の好きなように変なことをしています」

現在盛り上がりを見せているデジタル・ガーデンの起源は、マーク・バーンスタインが1998年に提唱した「ハイパーテキスト・ガーデン(hypertext garden)」の考え方に遡る。それは、インターネット上で人々が未知の世界に足を踏み入れられるスペースについて議論するものだった。バーンスタインは、「庭園(ガーデン)は農地と原野の間にある存在だ」と記している。「庭園とは五感を楽しむための農地であり、農産物を作るためではなく楽しみのために作られる」。バーンスタインのデジタル・ガーデンには、サンフランシスコのベイ・エリア(Bay Area)で食べられるカルボナーラの最近のレビューと、お気に入りのエッセーへの感想が掲載されている。

デジタル・ガーデンの新しい波では、書籍や映画について議論したり哲学や政治についての考えを述べたりする人もいる。中にはサイト自体が芸術作品であり、優れたビジュアルによって読者の探究心を誘う傑作もある。一方ではグーグル・ドキュメント(Google Docs)やワードプレス(WordPress)のテンプレートを使って、非常に個人的なリストを共有する、よりシンプルで実用的なものもある。デジタル・ガーデンのコンセプトを取り入れ、これまでの読書遍歴を反映した創造的かつ美しい、デジタル本棚を共有する熱心な読書家もいる。

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