フェイスブックが「若者離れ」対策、大学生限定SNSで原点回帰
フェイスブックが新たなサービスとして、大学生間のつながりをサポートする「フェイスブック・キャンパス」を発表した。しかし、インスタグラムやティックトックを好むZ世代の若者に受け入れられるかどうかは未知数だ。 by Tanya Basu2020.09.18
フェイスブックは、「フェイスブック・キャンパス(Facebook Campus)」という新たなサービスを9月10日に発表した。「学生が共通の興味についてクラスメートの仲間とつながれるようにする大学限定の空間」だという。
どこかで聞いたような文言だが、フェイスブック・キャンパスは初期フェイスブックへの先祖返りのような雰囲気をまとっている。当時、フェイスブックに参加するには大学のメールアドレスを所有し、限られた大学のグループに所属していなくてはならなかった。フェイスブックで「キャンパス」のプロダクトマネージャーを務めるカーマイン・ハンも、プレスリリースでそのような趣旨を語っている。「初期のフェイスブックは大学限定のネットワークでした。今、私たちは『フェイスブック・キャンパス』で原点に立ち返り、学生が大学から離れた場所でもそのような関係性を構築・維持できるようにサポートしていきます」(ハン)。現在「キャンパス」を使用できるのは米国の30の大学の学生に限られ、登録には大学のメールアドレスが必要だ。
フェイスブック・キャンパスのサービスは、ひとことで言えば、フェイスブックのプロフィールとつながった別のプロフィールだ。学生は趣味のグループに参加したり、キャンパス周辺で開かれているイベントをチェックできる(ここも既視感を覚えるポイントだろう)。学内限定パーティ用の個人向けニュースフィードや検索可能な名簿も用意されている。
フェイスブックのコピーとは一線を画す点として一番注目に値するのが、チャット機能だろう。キャンパスのチャットはリアルタイムで表示されるため、誰でもいつでも参加できる。ツイッチ(Twitch)のようなストリーミング・プラットフォームや、ユーチューブやインスタグラムでの生配信でのやり取りとよく似ている。
「キャンパス」は安全なのだろうか? その判断を下すのは時期尚早だが、安全性とプライバシーが心配なのは間違いない。特に、フェイスブック・アカウントにつながったプロフィールが簡単に検索できることを考えるとなおさらだ。フェイスブックは大学のメールアドレスと卒業年さえあればプロフィールを作成できると述べており、その他の情報を追加するかどうかはユーザー次第だ。だが「プライバシーは重要」と題した別の投稿記事で、フェイスブックは、「『キャンパス』にサインアップして自校のコミュニティの一員となったユーザーは、あなたの『キャンパス』のプロフィールや、あなたが『キャンパス』に投稿したコンテンツを見ることができます」と述べている。また、大学側にはチャットやWebページへのアクセス権はないとしているが、フェイスブック自身にもアクセス権がないかどうかは言及していない。
フェイスブックはサービスの多様化に本気で取り組んでいるようだ。今年は大統領選挙の年でもあり、また自社に多くのマイナスイメージが付いてしまったのを受けて、フェイスブックは今、ソーシャルメディア企業の元祖として自らを立て直そうとしている。「キャンパス」の場合は、原点に立ち返ることを意味する。同社は昨年、「フェイスブック・デーティング(Facebook Dating)」を立ち上げ、その約1年前には「フェイスブック・メッセンジャー・キッズ(Facebook Messenger Kids)」を導入した。これらの新たなサービスは、フェイスブックが利益を得ている同社の代表的なサービスのやり方を踏襲している。それは、同じような経歴や興味の人々が集まった個人向けの小規模ネットワークは、ネット上でコミュニティを形成する強力な方法であるということだ。
フェイスブックのプライバシー(もしくはプライバシーの欠如)のレガシーは、消費者に後味の悪い思いを残した。一方でZ世代は、フェイスブックの別のプロダクトであるインスタグラムの方を大いに好んでいる。フェイスブックは、前例のない学校再開シーズンにおいて、バーチャル・コミュニティの構築という原点に立ち返ることで、新鮮味があって、おしゃれで、時代に敏感なブランドとしての名声を取り戻そうとしている。問題は、Z世代がそれを受け入れるかどうかだ。
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- ターニャ・バス [Tanya Basu]米国版 「人間とテクノロジー」担当上級記者
- 人間とテクノロジーの交差点を取材する上級記者。前職は、デイリー・ビースト(The Daily Beast)とインバース(Inverse)の科学編集者。健康と心理学に関する報道に従事していた。