KADOKAWA Technology Review
×
2024年を代表する若きイノベーターたちに会える!【11/30】はIU35 Japan Summitへ
死後は土に還る「堆肥葬」、
米スタートアップが開始
Ian Allen
生物工学/医療 無料会員限定
The startup turning human bodies into compost

死後は土に還る「堆肥葬」、
米スタートアップが開始

人間の遺体を堆肥化する「堆肥葬」サービスが、米国ワシントン州で始まる。サービスを提供するスタートアップ企業リコンポーズのカトリーナ・スペードCEOは、MITテクノロジーレビューのインタビューに応じ、堆肥葬に対する想いを語った。 by Britta Lokting2020.11.13

カトリーナ・スペードCEOが初めて人間の遺体を堆肥化してから5年。スペードCEOの奮闘とロビー活動が功を奏し、土葬または火葬の代替手段としての「地上分解」が、ワシントン州で合法化された。米国では初の事例である。別名「自然有機還元」とも呼ばれるこの方法では、亡骸を土に還す。

スペードCEOは2017年、人間の遺体の堆肥化に取り組む企業リコンポーズ(Recompose)をシアトルで立ち上げた。リコンポーズは、5500ドルを費やす意思と財力のあるすべての顧客に、遺体の堆肥化サービスを提供する。5500ドルは、ほとんどの葬儀よりもはるかに安い金額だ。

スペードCEOにとって、このビジネスは気候変動との闘いである。米国において、墓地は推定40万ヘクタールの土地を占めている。棺は毎年160万ヘクタールの森林を破壊し、土葬には3000万枚の木板と300万リットル以上の防腐処理液が使用されている。リコンポーズの持続可能性アナリスト兼顧問であるトロイ・ホトル博士によると、1人の遺体を堆肥化することで二酸化炭素の排出量を0.84〜1.4トン削減できるという。1トンの二酸化炭素排出は、石炭500キログラムの燃焼、または乗用車の4000キロメートル走行に相当する量だ。

堆肥葬を認めるワシントン州の法案は2020年の初めに施行され、リコンポーズが2020年11月に予定している遺体の受け入れ開始に間に合った。MITテクノロジーレビューは、人間の遺体の堆肥化の仕組みと環境への影響、そして堆肥葬が今後普及するかについて、スペードCEOに話を聞いた。

◆◆◆

——あなたは人間の遺体の堆肥化をビジネスとして探求した第一人者です。何がきっかけでこの方法を思いついたのですか?

自分の死について考えたとき、従来方式で埋葬されることに興味がありませんでした。火葬は、死後に人間がこの世に遺したものを破壊する行為だと、ふと思ったんです。人間の遺体に残った養分がすべて火葬時に焼却されるのは「私のやりたいことと反する」と感じました。

このように葬儀について考えていた時期に、友人から連絡がありました。そして、農場では牛の死体が丸ごと堆肥化されている話を聞きました。牛の死体の堆肥化は、米国の農場で何十年にもわたって実施されてきたことです。そのとき、牛を堆肥化できるなら、きっと人体も堆肥化できるだろうとひらめいたのです。こうして私は、農場で利用されてきた堆肥化の原理を取り入れ、それを人間の「デスケア」システムに応用することを始めました。

——2020年11月に最初の遺体を受け入れることになっていますが、今の心境はいかがですか?

私たちはワシントン州立大学と共同で予備研究を実施し、すでに6人のご遺体を受け入れて土に変えました。ですから、11月に受け入れるご遺体が世界初のものではありません。このテクノロジーにはとても自信がありますが、実際に遺体を土に返すのは自然の力です。私はこれまで何度もその過程を目にしてきたので非常に楽しみですが、少し不安もあります。

——デスケアについて考え始めたのは、大学院で建築を学ばれていた時だそうですね。どのような経緯だったのでしょうか?

しばらくの間、私は堆肥化に夢中になっていました。建築を …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. The winners of Innovators under 35 Japan 2024 have been announced MITTRが選ぶ、 日本発U35イノベーター 2024年版
  2. Promotion The winners of Innovators under 35 Japan 2024 have been announced MITTRが選ぶ、
    日本発U35イノベーター
    2024年版
  3. AI will add to the e-waste problem. Here’s what we can do about it. 30年までに最大500万トン、生成AIブームで大量の電子廃棄物
  4. Kids are learning how to make their own little language models 作って学ぶ生成AIモデルの仕組み、MITが子ども向け新アプリ
  5. OpenAI brings a new web search tool to ChatGPT チャットGPTに生成AI検索、グーグルの牙城崩せるか
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る