KADOKAWA Technology Review
×
10/9「生成AIと法規制のこの1年」開催!申込み受付中
欧州医薬品庁にサイバー攻撃、ワクチン文書に不正アクセス
AP
Hackers accessed documents on covid-19 vaccines

欧州医薬品庁にサイバー攻撃、ワクチン文書に不正アクセス

欧州医薬品庁がサイバー攻撃を受け、ファイザーとバイオンテックが開発した新型コロナワクチンに関する文書が不正にアクセスされた。ただし、この件が同ワクチンの欧州での展開に影響を与えることはなさそうだ。 by Patrick Howell O'Neill2020.12.14

ファイザーとバイオンテック(BioNTech)が開発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを審査を進めている欧州医薬品庁(European Medicines Agency)が、サイバー攻撃を受けた。

欧州当局によると、ファイザーとバイオンテックの新型コロナウイルス(SARS CoV-2)ワクチンが英国で初めて使用されたわずか数日後、同ワクチンの規制文書が「違法なアクセスを受けた」という。

ファイザーとバイオンテックのワクチン「BNT162b2」は、今のところ西欧諸国で承認された唯一の新型コロナワクチンである。ただし、今回のサイバー攻撃で、欧州でのワクチンの展開が影響を受けることはなさそうだ。

BNT162b2の大部分の成分は公表されている。だが、欧州医薬品庁は、有効成分に関するより正確なデータやワクチンの製造方法の詳細といった非公開情報も保有している。こういったデータは規制当局だけが保有しているわけではないが、欧州医薬品庁はクリアリングハウスであり、国家が支援するハッカーにとって価値がある機密情報を持っているはずだ。

バイオンテックの声明によると、同社やファイザーのシステムはハッキングされておらず、個人データにアクセスされた形跡はないという。現在、司法当局が事件を捜査している。

ワクチンと欧州医薬品庁が標的にされた今回の攻撃は、パンデミックに関する情報を狙って相次いでいるサイバースパイ活動の一環として発生している。報道によると、国家が支援するハッカーは先月、新型コロナワクチンのサプライチェーン、特に輸送時にワクチンを極低温に保つテクノロジーとプロセスに関する情報に不正アクセスを試みた。この1年にわたり、ロシアや北朝鮮と繋がっているハッカーは、新型コロナウイルスのワクチンと治療法を研究する企業を標的にしている。中国とイランのハッカーは、関連情報を盗もうとしたとして米国から非難を受けた

ロシアと中国はすでに自国民にワクチン接種を始めている。米当局は12月7日の週の週末、ファイザーとバイオンテックのワクチンに緊急時使用許可を可否を決めるために会合を開き、製薬会社モデルナ(Moderna)のワクチンについては翌週、再度会合を開いて緊急使用許可の可否を決めることになっている(日本版注:米食品医薬品局(FDA)は12月11日にファイザーとバイオンテックの新型コロナワクチンの緊急使用を許可した)。

サイバーセキュリティの懸念により、すでに破滅的なパンデミックの状況は、いっそう複雑化している。さらに日和見主義的な犯罪者が、圧迫されている 病院にランサムウェア攻撃を仕掛けている。

人気の記事ランキング
  1. Sorry, AI won’t “fix” climate change サム・アルトマンさん、AIで気候問題は「解決」できません
  2. Why OpenAI’s new model is such a big deal GPT-4oを圧倒、オープンAI新モデル「o1」に注目すべき理由
  3. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
パトリック・ハウエル・オニール [Patrick Howell O'Neill]米国版 サイバーセキュリティ担当記者
国家安全保障から個人のプライバシーまでをカバーする、サイバーセキュリティ・ジャーナリスト。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る