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On Energy, Trump Heads in the Opposite Direction from Public Opinion

トランプ政権、エネルギー政策で世論無視

アメリカ人は、化石燃料より再生可能エネルギーを政策的に優先すべきと考えていることがピュー研究所の調査でわかった。しかし、新政権は、世論も市場環境も気候変動も完全に無視した方向に向かっている。 by Michael Reilly2017.01.25

Rick Perry, Trump's pick to head the Department of Energy, was all thumbs at the inauguration last week.
先週の就任式ではぎこちない様子を見せるトランプ政権のリック・ペリー・エネルギー省長官

就任4日目、ドナルド・トランプ大統領のエネルギー政策に関する方向性にはブレがない。しかしアメリカの世論とは異なる方向であり、エネルギー業界を形成する市場原理にも逆らっている。

ピュー研究所が新たに発表した報告によれば、65%のアメリカ人は風力や太陽光といった代替エネルギー開発を連邦政府が優先させるべきと考えている。米国は石油やガス、石炭の拡大を重視すべきと考えるのは27%だけだ。

米国民の意志は、これまでの米国のエネルギー産業の動向を反映している。再生可能エネルギーは発電容量(送電容量としては足りない場合がある)として急速に成長しており、全体的な二酸化炭素排出量は減少傾向にあり、石炭によるエネルギー生産は急速に低下している(ほとんどは天然ガス需要が好調なおかげだ)。

こうした潮流は、トランプ大統領が米国のエネルギー政策として打ち出したい方向と大きく食い違ってはならない。

トランプ大統領が化石燃料を重視し、二酸化炭素排出量を削減することの重要性の無視は、少なくとも選挙戦までさかのぼる。選挙戦でトランプ大統領は、石炭産業の復活について強気の発言をし、気候変動は中国がでっち上げた「作り話」だとツイートした(後になって、あれは冗談で自分は気候変動について偏見のない他の意見を受け入れるつもりでいると訂正した)。トランプ大統領が指名した閣僚には、レックス・ティラーソン元エクソンモービル最高経営責任者(CEO)とリック・ペリー元テキサス州知事(以前、ふたつの石油パイプライン会社の役員だった)がいる。

この人選でさえエネルギー政策の方針に解釈の余地があったとしても、トランプ大統領が化石燃料の増産と消費促進を目指した大統領覚書に署名した火曜日、もはや方針は完全に定まった。ふたつの覚書により、キーストーンXLパイプライン(米国とカナダを結ぶ石油パイプラインで、気候変動対策に逆行するとしてオバマ大統領に着工を拒否された)が復活し、ダコタ・アクセス・パイプライン(米陸軍がミズーリ河をせき止めて作ったオアヘ湖の地下を通る石油パイプラインで、オバマ大統領が着工を延期させた)の完成に道筋がついた。さらに、別の覚書で、米国内に建設されるパイプラインは米国産の鉄鋼で建設されることが決まった。

一連の出来事は、エネルギー政策における劇的な変化の始まりに過ぎない可能性がある。オバマ政権は再生可能エネルギーの研究を支持し、環境保護庁が二酸化炭素排出量を制限するためにクリーン・パワー・プランを考案した。トランプ政権はこの方針とは異なる。米国エネルギー省は再生可能エネルギーとエネルギー効率を監督している部門の閉鎖を含め、大幅な削減を目指しているようだ。トランプ政権移行チームにいた有名な気候否定論者ミーロン・エベルには環境保護庁による追求を避けたい事案の希望リストがある。

こうした方針転換があれば、世論やエネルギー産業の動向にかかわらず、政策は実行に移されるだろう。世論やエネルギー産業の動向とは無関係に、だ。

(関連記事:New York Times, “トランプ政権は、炭鉱労働者の希望と地球の未来を粉砕する”)

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クレジット Photograph by Alex Wong | Getty
マイケル レイリー [Michael Reilly]米国版 ニュース・解説担当級上級編集者
マイケル・レイリーはニュースと解説担当の上級編集者です。ニュースに何かがあれば、おそらくそのニュースについて何か言いたいことがあります。また、MIT Technology Review(米国版)のメイン・ニュースレターであるザ・ダウンロードを作りました(ぜひ購読してください)。 MIT Technology Reviewに参加する以前は、ニューサイエンティスト誌のボストン支局長でした。科学やテクノロジーのあらゆる話題について書いてきましたので、得意分野を聞かれると困ります(元地質学者なので、火山の話は大好きです)。
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MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.2/Winter 2020
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