KADOKAWA Technology Review
×
2024年を代表する若きイノベーターたちに会える!【11/30】はIU35 Japan Summitへ
デンマークの「コロナ・パスポート」計画はどこまで現実的か
Martin Sylvest / Ritzau via AP
生物工学/医療 無料会員限定
Why Denmark’s “corona passport” is more of a promise than a plan

デンマークの「コロナ・パスポート」計画はどこまで現実的か

デンマーク政府が「新型コロナ・パスポート」の発行を発表した。ワクチンの接種履歴や検査結果を証明する取り組みに期待は高いが、実現には課題が多い。 by Lisa Abend2021.02.24

2月上旬、デンマークのモーテン・ボドスコフ財務相代行が「新型コロナ・パスポート」の発行をまもなく開始すると発表すると、ニュースは瞬く間に世界中に広がった。新型コロナ・パスポートとは、新型コロナのワクチンを接種済みか、または免疫を獲得済みであることを証明するアプリだ。海外旅行やレストランでの食事、映画館で過ごす夜、さらには大規模な音楽フェスといった日常が戻ってくるかもしれないとの期待に、多くの人が強い興味を覚えたのだ。

ボドスコフ財務相代行が発表した見通しは強気なものだった。「我々は最初の第一歩を踏み出しました。3〜4カ月で、デジタル・新型コロナ・パスポートが出張などで使えるようになるでしょう」。

この構想は、パンデミックに対してこれまでデンマークが採ってきた断固たるアプローチとも一致しているように見える。デンマークは2020年3月、新型コロナウイルスを封じ込めるために、欧州で初めてロックダウン(都市封鎖)を始めた国のひとつだ。2020年11月には、新型コロナの変異株がミンク農場で発見され、ミンクからヒトへの感染が確認されたことから、政府は飼育されていたミンクの殺処分を即座に命令した。

だが、実のところ、今回の「新型コロナ・パスポート」の発表は、実質的な開始というよりは意志表明だと言える。

デンマーク政府は楽観的なスケジュールを立てているようだが、計画の詳細はほとんど発表されていない。新型コロナ・パスポートに含まれる情報は規定されておらず、システム開発の入札公告すらもまだ始まっていないのだ。さらに専門家によると、仮に計画どおりに進んだとしても、世界中で同様の認証への取り組みを妨げてきた、保健医療と倫理の厄介な問題に取り組む必要があるという。

「1週間で準備が整う」

新型コロナ・パスポートは、パンデミック以前の日常への早急な復帰を目的としているが、詳細はまだ議論の最中にある。

「我々の提案は、アプリのようにデジタルで動作するものです」。政府と協力してプロジェクトを進めるデンマーク産業連盟(Confederation of Danish Industry)のヘンリエット・ソルトフト副理事は話す。「このアプリは自動的にアップデートされ、新しい検査結果を取得するとそれを画面に表示します」。

技術的には、新型コロナ・パスポートはそれほど複雑なものではない。スマホにはすでに保健医療情報が保存されているし、複数の企業は何カ月も前から必要なソフトウェアを開発しては政府や議会に売り込んでいる。IBMグローバル・ビジネス・サービス(IBM Global Business Services)デンマーク公共部門の幹部、マーティン・ピーターセン・レナーズは、同社のツールは …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. The winners of Innovators under 35 Japan 2024 have been announced MITTRが選ぶ、 日本発U35イノベーター 2024年版
  2. Promotion The winners of Innovators under 35 Japan 2024 have been announced MITTRが選ぶ、
    日本発U35イノベーター
    2024年版
  3. AI will add to the e-waste problem. Here’s what we can do about it. 30年までに最大500万トン、生成AIブームで大量の電子廃棄物
  4. Kids are learning how to make their own little language models 作って学ぶ生成AIモデルの仕組み、MITが子ども向け新アプリ
  5. OpenAI brings a new web search tool to ChatGPT チャットGPTに生成AI検索、グーグルの牙城崩せるか
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者決定!授賞式を11/20に開催します。チケット販売中。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る