デンマークの「コロナ・パスポート」計画はどこまで現実的か
デンマーク政府が「新型コロナ・パスポート」の発行を発表した。ワクチンの接種履歴や検査結果を証明する取り組みに期待は高いが、実現には課題が多い。 by Lisa Abend2021.02.24
2月上旬、デンマークのモーテン・ボドスコフ財務相代行が「新型コロナ・パスポート」の発行をまもなく開始すると発表すると、ニュースは瞬く間に世界中に広がった。新型コロナ・パスポートとは、新型コロナのワクチンを接種済みか、または免疫を獲得済みであることを証明するアプリだ。海外旅行やレストランでの食事、映画館で過ごす夜、さらには大規模な音楽フェスといった日常が戻ってくるかもしれないとの期待に、多くの人が強い興味を覚えたのだ。
ボドスコフ財務相代行が発表した見通しは強気なものだった。「我々は最初の第一歩を踏み出しました。3〜4カ月で、デジタル・新型コロナ・パスポートが出張などで使えるようになるでしょう」。
この構想は、パンデミックに対してこれまでデンマークが採ってきた断固たるアプローチとも一致しているように見える。デンマークは2020年3月、新型コロナウイルスを封じ込めるために、欧州で初めてロックダウン(都市封鎖)を始めた国のひとつだ。2020年11月には、新型コロナの変異株がミンク農場で発見され、ミンクからヒトへの感染が確認されたことから、政府は飼育されていたミンクの殺処分を即座に命令した。
だが、実のところ、今回の「新型コロナ・パスポート」の発表は、実質的な開始というよりは意志表明だと言える。
デンマーク政府は楽観的なスケジュールを立てているようだが、計画の詳細はほとんど発表されていない。新型コロナ・パスポートに含まれる情報は規定されておらず、システム開発の入札公告すらもまだ始まっていないのだ。さらに専門家によると、仮に計画どおりに進んだとしても、世界中で同様の認証への取り組みを妨げてきた、保健医療と倫理の厄介な問題に取り組む必要があるという。
「1週間で準備が整う」
新型コロナ・パスポートは、パンデミック以前の日常への早急な復帰を目的としているが、詳細はまだ議論の最中にある。
「我々の提案は、アプリのようにデジタルで動作するものです」。政府と協力してプロジェクトを進めるデンマーク産業連盟(Confederation of Danish Industry)のヘンリエット・ソルトフト副理事は話す。「このアプリは自動的にアップデートされ、新しい検査結果を取得するとそれを画面に表示します」。
技術的には、新型コロナ・パスポートはそれほど複雑なものではない。スマホにはすでに保健医療情報が保存されているし、複数の企業は何カ月も前から必要なソフトウェアを開発しては政府や議会に売り込んでいる。IBMグローバル・ビジネス・サービス(IBM Global Business Services)デンマーク公共部門の幹部、マーティン・ピーターセン・レナーズは、同社のツールは …
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