周囲の磁場くっきり、初撮影チームがブラックホール最新画像を公開
「イベント・ホライズン・テレスコープ」プロジェクトの科学者らは新たな画像を公開した。2019年に公開した超大質量ブラックホールの画像を鮮明化したもので、ブラックホールがどのように物質を吸い込んで成長するのかを解明するための手がかりとなるだろう。 by Neel V. Patel2021.03.26
天文学者たちの国際チームが、M87(メシエ87)銀河の中心にある超大質量ブラックホールの最新画像を公開した。歴史的な2019年の画像をさらに鮮明化した画像であり、今回は「モンスター」と呼ばれるこのブラックホールの磁力線をたどる偏光も示されている。
「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」プロジェクトは、2019年4月10日に歴史的な偉業を達成した。ブラックホールの画像を史上初めて公開したのだ。地球から5300万光年の距離にあるこの明るいオレンジ色の円は、四大陸のそれぞれに設置された8か所の電波観測所によって画像化された。これらの電波観測所のデータを組み合わせて解像度を上げることにより、M87の中心部まで見通すことができ、超大質量ブラックホールの「事象の地平線(イベント・ホライズン)」の周りに渦巻く超高温のガスや塵によって輝く光を垣間見ることも可能になった(事象の地平線とは、ブラックホールの重力が強大なため、そこを超えるとどんな光や物質も脱出できなくなる帰還不能点のことである)。
天文学者たちの国際チームは、『アストロフィジカル・ジャーナル(Astrophysical Journal)』誌に掲載された2件の最新研究で、保存しておいたデータを最初の画像に遡るまで調べ、超大質量ブラックホールの周りの偏光の動きを分析した。光の波は通常、さまざまな方向に振動しているが、磁場によって偏光し、振動面が一つの平面内に収まるようになる。偏光した光は事実上ブラックホールの磁力線をたどるため、2019年に披露された時にはぼやけて見えたドーナツが、より鮮明に画像化された。
磁場はブラックホールの周りの物質の動き方や渦巻き方を形成し、周囲の物質の吸い込み方やブラックホールの進化にも影響する可能性がある。磁場がどのように働き、時間とともにどう変化していくかを研究することで、ブラックホールの周りに降着する物質がどのように振る舞い、どのように影響を受けるのかをより深く理解できる。そうすれば、超大質量ブラックホールがどのように形成され、どのように成長するのかについて、より多くのことが理解できるようになるはずだ。
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- ニール・V・パテル [Neel V. Patel]米国版 宇宙担当記者
- MITテクノロジーレビューの宇宙担当記者。地球外で起こっているすべてのことを扱うニュースレター「ジ・エアロック(The Airlock)」の執筆も担当している。MITテクノロジーレビュー入社前は、フリーランスの科学技術ジャーナリストとして、ポピュラー・サイエンス(Popular Science)、デイリー・ビースト(The Daily Beast)、スレート(Slate)、ワイアード(Wired)、ヴァージ(the Verge)などに寄稿。独立前は、インバース(Inverse)の准編集者として、宇宙報道の強化をリードした。