KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
GPT-3が「最高」で「最悪」なAIである理由
Sierra & Lenny
人工知能(AI) 無料会員限定
Why GPT-3 is the best and worst of AI right now

GPT-3が「最高」で「最悪」なAIである理由

オープンAIが開発した大規模言語モデル「GPT-3」が作成する文章は、不気味なほどのリアリティで人間の書く文章を模倣できる。だが、こうした成果は主に、ニューラル・ネットワークの規模と訓練に使うデータをとてつもなく大規模化したおかげであり、現在のAIが抱える無視できない問題点も明らかにしている。 by Will Douglas Heaven2021.04.26

ディープマインド(DeepMind)の「アルファ碁(AlphaGo)」や、チェスをするIBMの「ディープ・ブルー(Deep Blue)」以降に登場したさまざまな人工知能(AI)の中で、人々の心を確実に捕らえているAIがある。「GPT-3」だ。

10 Breakthrough Technologies
この記事はマガジン「10 Breakthrough Technologies」に収録されています。 マガジンの紹介

GPT-3は、サンフランシスコを拠点とする研究所であるオープンAI(OpenAI)が開発し、2020年に発表した「大規模言語モデル」である。深層学習を使うアルゴリズムであり、言葉や語句を繋ぎ合わせるように、何千冊もの書籍やインターネット上の多くのテキストで訓練されている。人間が書いたテキストを不気味なほどのリアリティで模倣する能力を持ち、GPT-3の登場は真のマシン・インテリジェンスへの道を切り開く重要な節目になるのではないか、と評されている。

GPT-3は何ができるのか? 以下に例を挙げよう。太字の部分は人間が与えた文章で、それに続くのがGPT-3が作成した文章である。

ご覧のように、GPT-3はあたかも人間が書いたかのような、複雑な文章を作成できる。例として挙げた文章には文化的言及や、科学者がどのように反応するかという、実際にありそうな説明が含まれている。このように言語を使用できる機械が重要な理由はいくつかある。まず、言語は日常の世界を理解する上で必要不可欠だということだ。人間はコミュニケーションをとるため、考えを共有し概念を説明するために言語を使う。言語をマスターしたAIは、その過程で世界をより良く理解できるようになるはずだ。

また、大規模な言語モデルには、多くの実用的用途もある。より流暢な会話が可能な、より良いチャットボットの開発に役立つし、与えられた文章に基づいて一般的な記事や物語を生み出すことができる。いくつかの文を要約したり、それについての質問に答えたりもできる。GPT-3の利用は現在のところ招待制だが、すでに起業のアイデアを生むツールや、シナリオをAIが書くアドベンチャーゲームなど、いくつものアプリに使われている。

2020年に登場した大規模な言語モデルは、GPT-3だけではない。マイクロソフト、グーグル、フェイスブックはそれぞれ自社のモデルを発表している。しかし、GPT-3は抜きん出た万能選手だった。面白いフィクションや哲学的な論争から、プログラムのコードまで、何でも書けるように見えるからだ。2020年の夏、人々がGPT-3を試し始めると、ソーシャルメディアは瞬く間にその用途の …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る