新型コロナ、変異株でパニックにならなくていい5つの理由
新型コロナウイルスをめぐって、強力な変異株が次々と現れるのではないかと懸念する声がある。引き続き用心しつつも、変異株を必要以上に恐れることもない。 by Cassandra Willyard2021.05.14
5月10日、世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の世界的に懸念される変異株リストに新たなウイルスを追加した。今回追加された変異株は「B.1.617」と呼ばれるもので、インドの感染爆発の原因とされている。リストには、英国、南アフリカ、ブラジルで最初に確認された変異株も含まれており、今回の追加は4番目となる。WHOで新型コロナウイルスに関するテクニカルリードを務めるマリア・ヴァン・ケルホフ博士は記者会見で、「感染力の増大を示す情報がいくつかあります」と述べた。
新たな変異株が出現するたびに人々の不安は大きくなっている。「二重変異体」や「危険な変異株」を報じるニュースは、これらのウイルスが免疫反応を回避できるようになったり、現在有用とされているワクチンが効かなくなったり、ロックダウンに逆戻りしてしまったりするのではないか、といった不安をかき立てている。しかし、アルバート・アインシュタイン医科大学のウイルス学者であるカーティック・チャンドラン教授によると、今の段階では「ウイルスは根本的には変わっていません」と言う。
ワクチンはいずれ効果が薄れていくかもしれないが、現在私たちが大きな危機に瀕しているという証拠はない。ウィスコンシン大学獣医学部のウイルス学者であるトーマス・フリードリッヒ准教授は、「振り出しに戻ってしまうような差し迫った危険があるとは思いません」と言う。「懸念はすべきですが、パニックになるほどではありません」。
私たちが用心しつつも今後を楽観視できる5つの理由を紹介する。
1. 厄介な変異株にもワクチンは効く
初期の報告では、南アフリカで最初に確認されたウイルス(B.1.351)を含むいくつかの変異株に対して、現在の新型コロナウイルスのワクチンがあまり効果を発揮しない可能性が示されていた。検証試験では、ワクチンを接種した人の抗体は、元々のウイルスに対する場合ほどには変異株のウイルスを効果的に無効化することはできなかった。しかし、カタールでの実際のデータによると、ファイザー製ワクチンはB.1.351に対してもかなり効果があることが判明している。2度のワクチン接種でB.1.351の感染を防ぐことができたのは75%で、元のウイルスの治験で報告された95%の有効性には及ばなかった。それでも、ペンシルバニア州立大学の疾病生態学者であるアンドリュー・リード教授は「奇跡的」だという。「これらのワクチンは非常に優れています。活用できる余地は大いにあります」。
少なくとも研究所の実験結果を見る限りは、ある種の変異株は人の免疫システムをよりうまく回避できるようだ。例えば、5月10日に発表された小規模な研究では、世界的に懸念されている最新の変異株B.1.617は、ワクチンを接種した人や過去に感染したことのある人の抗体に対してより耐性があるという結果が示されている。しかし、モデルナ(Moderna)製やファイザー製のワクチンの接種を受けた25人全員の体内に、この変異株を無効化するのに十分な抗体が見られた。
2. 免疫反応は堅牢である
多くの場合、ワクチンの効果を検証している科学者たちが注目するのは、抗体そのものと、細胞にウイルスが感染するのを阻止するという抗体の持つ能力だ。研究所 …
- 人気の記事ランキング
-
- A tiny new open-source AI model performs as well as powerful big ones 720億パラメーターでも「GPT-4o超え」、Ai2のオープンモデル
- The coolest thing about smart glasses is not the AR. It’s the AI. ようやく物になったスマートグラス、真価はARではなくAIにある
- Geoffrey Hinton, AI pioneer and figurehead of doomerism, wins Nobel Prize in Physics ジェフリー・ヒントン、 ノーベル物理学賞を受賞
- Geoffrey Hinton tells us why he’s now scared of the tech he helped build ジェフリー・ヒントン独白 「深層学習の父」はなぜ、 AIを恐れているのか?