新型コロナ陰謀論で反ユダヤ主義のSNS投稿が急増
最近発表された報告書によると、主要なSNSプラットフォームで、新型コロナウイルス感染症にまつわる陰謀論を拡散し、反ユダヤ主義の過激な主張を唱える投稿が急増している。 by Charlotte Jee2021.10.14
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にまつわる陰謀論によって、反ユダヤ主義の主張が幅広い層に拡散している。そう警告する報告書が、反人種差別の権利擁護団体であるホープ・ノット・ヘイト(Hope not Hate)から発表された。報告書によると、今回のパンデミックは、世界支配を目指すユダヤ人主導の秘密のエリート集団に関する陰謀論「新世界秩序」に対する関心を再燃させただけではなかった。極右の活動家が、反ロックダウンや反ワクチンの考えを持つ人々を、積極的な反ユダヤ主義へと誘導しようとしているという。
ティックトック(TikTok)やインスタグラム、ツイッター、ユーチューブなど、報告書の筆者らが調査した9つのプラットフォームすべてにおいて、反ユダヤ主義的な投稿が容易に見つかった。アルゴリズムによる検出やモデレーションを避けるため、暗号のような言葉が使われている場合もあったが、大部分は公然と投稿され、簡単に発見できるものだった。当然ながら、プラットフォームで見つかった反ユダヤ主義的な投稿の量と、モデレーションの取り組みとの間には密接な関連があった。モデレーションが緩いところほど、問題のある投稿が多かったのだ。
報告書は、メッセージアプリの「テレグラム(Telegram)」が急速に最大の発信源の1つになりつつあると警鐘を鳴らしている。テレグラムは、反ユダヤ的な内容を広めている多くのチャンネルを擁しており、中には何万人もの登録者数を誇るチャンネルもある。新世界秩序に関する陰謀論を拡散しているあるチャンネルは、2021年2月の開設以来、9万人のフォロワーを集めている。ただ、そうした問題はすべてのプラットフォームに見られる。ティックトックで活動するユダヤ人クリエイターたちは、反ユダヤ的な内容が大量に溢れていると訴えている。ユダヤ人のアカウントがしばしば反ユダヤ団体の標的となり、大量の報告によってアカウントが一時停止されることがあるという。
急速な過激化の典型例として、報告書ではパンデミック中に急進化した男性を取り上げている。2020年のはじめ、アッティラ・ヒルドマンはビーガンのシェフとしてドイツで人気を博していた。ヒルドマンは、最初のうちはソーシャルメディアのインフルエンサーとして「ちょっと質問を投げかける」だけで、表向きはノンポリな姿勢を示していたが、わずか1年のうちに自身のテレグラムチャンネルでヘイトを撒き散らし、暴力を煽るような人物に変貌してしまった。
調査対象となったプラットフォームの多くには、ヘイトスピーチの規制やモデレーションのための猶予期間がゆうに10年以上あり、その間に一部では進展が見られた。しかし、反ユダヤ団体をうまく追放できるようになってきている一方で、個人が作成した反ユダヤ的なコンテンツについては対処に苦労している、と報告書は指摘している。
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- シャーロット・ジー [Charlotte Jee]米国版 ニュース担当記者
- 米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」を担当。政治、行政、テクノロジー分野での記者経験、テックワールド(Techworld)の編集者を経て、MITテクノロジーレビューへ。 記者活動以外に、テック系イベントにおける多様性を支援するベンチャー企業「ジェネオ(Jeneo)」の経営、定期的な講演やBBCへの出演などの活動も行なっている。