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タリバン政権下で生き残りをかける「コンテンツ密売人」たち
AP Photo/Felipe Dana
Can Afghanistan’s underground “sneakernet” survive the Taliban?

タリバン政権下で生き残りをかける「コンテンツ密売人」たち

インターネット接続が不安定なアフガニスタンでは、「スニーカーネット」の商人らがデジタルコンテンツを路上販売してきた。取り締まりの厳しいタリバンの支配下にある現在も、生き残りをかけ、ひっそりとビジネスを継続している。 by Ruchi Kumar2021.11.29

今年8月、タリバンがアフガニスタン政権を掌握した時、ムハンマド・ヤシンは大急ぎで難しい決断をしなければならなかった。反乱軍が支配権を握るという衝撃的な事態に国が動揺している中で、21歳のヤシン(仮名)は、小さな仕事場に潜んで仕事に取りかかった。

まずコンピューター上の機密データの一部を消去し、残りは2つの最大容量のハードディスク・ドライブに移し、その後、ビニールで覆って秘密の場所の地下に埋めた。

こうした予防策を取ったのは、ヤシンがアフガン情報部に属していたり、政府とつながりがあったりしたからではない。ヤシンはコンピューターに国家機密など隠してはいない。ヤシンは地元で「コンピューター・カー(kar)」と呼ばれている。安定したインターネット接続を得るのが難しい国で、デジタル・コンテンツを手渡しで販売している業者のことだ。「映画や音楽、モバイル・アプリケーションや、iOSのアップデートなど、ほぼ何でも売っています。アップルIDやソーシャルメディアのアカウントの作成、スマートフォンのバックアップやデータの修復も手伝っています」とヤシンは言い、声を抑えて「(盗品の)スマホのロック解除や、いかがわしいビデオも用意できますよ」と付け加えた。

タリバンが8月12日にヘラートを掌握した時、ヤシンと仲間は、タリバンの侵攻部隊が彼らの街、マザールシャリーフを接収するのも近いだろうと推測した。

「マザールでも状況はもっと緊迫していました。そこで、私や協力し合っているマザールの他のコンピューター・カーは密かに会合を開き、コンテンツをすべて守るにはどうすべきかを決めました」(ヤシン)。コンピューター・カーの非公式の組合は、数年間に集めた数百テラバイトのデータを所有していた。そのほとんどは、タリバンからすれば問題視されたり、犯罪とさえ見なされたりするような類のものだった。

「消去はしませんが、かなりまずいコンテンツは隠すということで意見が一致しました。アフガニスタンでは頻繁に政権が交替しますが、私たちのビジネスをそのせいで中断するべきではないと考えたのです」。

ヤシンは発見されるのを、あまり心配していない。

「国民は銃やお金、宝石など何やかやを隠しています。ハードディスク・ドライブを隠したからといって私は怯えてはいません。見つけられることはないでしょう」とヤシンは話す。「私は21世紀の少年です。ほとんどのタリバンは過去に生きているのです」。

ハーミド・カルザイ元大統領がアフガニスタンで最初に携帯電話で通話してから20年経たないうちに、人口3900 万足らずの国で、携帯電話利用者は2300万人近くになっている。しかし、インターネット・アクセスは別の問題だ。2021年初頭、インターネット・ユーザーは900万人未満だった。この遅れは、主として物理的セキュリティの問題が広がっていることや、高いコスト、山岳地帯のインフラ開発が進んでいないことなどが原因となっている。

そのため、アフガニスタンの至る所でヤシンのようなコンピューター・カーに出会える。彼らは接続が可能な時には、インターネットから情報をダウンロードすることもあるが、たいていは近隣の国々からハードディスク・ドライブで情報を物理的に輸送する。これは「スニーカーネット」と呼ばれている。

「私は自宅ではWi-Fiを使って音楽やアプリケーションをダウンロードします。インタネット用のSIMカードも5つ持っています」と、匿名を希望する別のコンピューター・カーであるモヒブラは話す。「しかし、ここのインターネット接続は当てにならないので、毎月ジャララバードへ4テラバイトのハードディスクドライブを送り、コンテンツを保存してもらいます。1週間で最新のインドの映画やトルコのTVドラマ、音楽、アプリケーションなどの入ったハードディスクが戻ってきます」。代価は800~1000アフガニ(8.75~11ドル)だという。

「人々は銃やお金、宝石、何やかやを隠しています。ハードディスクドライブを隠したからといって私は怯えてはいません。私は21世紀の男で、ほとんどのタリバンは過去に生きています」。
——コンピューター・カーのムハンマド・ヤシン

映画や歌、音楽ビデオから講義まで、わずか100アフガニまたは1.09ドルで、5ギガバイト以上のデータをスマホにインストールできると、モヒブラは説明する。「ダリー語やパシュトー語(アフガンの公用語)の吹き替えの最新ハリウッド映画やボリウッド映画、世界中の音楽、ゲーム、アプリケーションを手に入れています」。8月上旬、タリバンが支配権を握る数日前にこう教えてくれた。

もう少し値段はかかるが、モヒブラは顧客のソーシャルメディアのアカウントの作成や、スマホやノートPCの設定、メールの代筆まで手伝っている。「あらゆるコンテンツを販売しています。『100%フィルム』以外のすべてです」と、ポルノ映画のことを口にした(「フリー・ビデオ(ポルノの別名)」はいくつか持っているが、信用できる顧客にしか売らないと、後で打ち明けた)。

顧客のほとんどは男性だが、女性も音楽や映画をよく購入するという。ほとんどはパキスタン経由のもので、パキスタンの方がインターネット接続が良好で安価だという。

カブール西部の混雑した通りにあるモヒブラの小さな店で、私たちがビジネスの話をしていると、2人の女性が入ってきた。2人の女性は取材を断ったが、自分たちは「ウェディングDJ」で、豪華なウェディング・パーティで流す最新の音楽を探しているのだと言った。モヒブラは最新のインド音楽を何曲か選んで、試聴するように勧め、それぞれに70アフガニで100曲以上の楽曲のプレイリストを転送した。

カーにとっては残念なことに、タリバンの台頭以降、このような顧客は完全に姿を消してしまった。暴力的で過激な政権は、音楽を禁止し、女性の自由を制限した。

ヤシンとモヒブラはすぐに、ビジネスを新政権に合うように変えなければならなかった。いかがわしいボリウッド映画やイランの音楽ビデオを、タリバンのタラナ(音楽無しの歌)やコーランの朗誦に取り換えた。アフガン人はスマホに有名人の写真を貼って持ち歩くのを好むが、今やいろいろなスタイルのタリバンの旗の写真に入れ替わった。カーが提供する「フリー・ムービー」はすべて隠され、その隠し場所はカーだけが知っている。

「フリー・ムービーがタリバンに見つかったら、ものすごく罰せられるでしょう。処刑されてしまうかもしれません」。ヤシンは言いながら身震いしながら話した。

コンテンツの取り締まり

タリバンの政権掌握はビジネスにとって良くないと、2人は認める。2人の平均収入は90%近く落ち込み、1日当たり3000アフガニ(32ドル)から350アフガニ(3.80ドル)へと減少した。

「その中から、最低でも100アフガニは発電燃料代として消え、約50アフガニは通りで使用するスペース代として市当局に払います」とヤシンは言う。「5人の兄弟姉妹と両親を養うには、十分ではありません」。

コンテンツの規制に加えて、タリバンは、ヤシンのようなコンピューター・カーも取り締まってきた。サービスを拡大して、迫害を逃れるアフガン人の手助けをするようになっていたからだ。

「隠れている人や、退避を待っている人が、スマホのデータをフラッシュドライブにバックアップする手助けを求めて私のところへ来ます。検問所でスマホをチェックしているタリバンの戦闘員に捕まらないようにするためです」と、ヤシンは述べる。

わずかな料金を取ることもあるが、場合によっては無償で作業をすることもあったという。

「たいていは個人的なデータで、タリバンが承認しないかもしれないようなものです。しかし、時には、前政権や外国の同盟国の支持者だと分かるような情報である場合もあります。そうした情報をスマホに入れていると、逮捕されたり、処刑される可能性もあります」とヤシンは言う。

モヒブラは、タリバンが政権を握った今、コンテンツ取引業者を取り締まっているのを皮肉に思う。タリバンも急進化や人員募集のために、スニーカーネットを利用していたからだ。

「たまに、戦闘員を称賛するタリバンのタラナや、実施した処刑のグラフィック・ビデオを配信するために、接触してくる男たちがいます」と、モヒブラは述べる。「イデオロギーや宣伝を若者の間に広めるために、私たちのサービスを使用したかったのです」。

モヒブラはこれまで、そうしたコンテンツを顧客と共有することは決してなかったという。

「ですが、今日ではタリバンは私たちの中に入り込み、そうしたコンテンツを要求します。タリバンの旗や武器を持った戦闘員の写真も依頼してきます。私は家族を養わなければならないので、従います」。

だが、アフガンのコンピューター・カーは進取の気性に富んでいなければ何の価値もない。多くのカーが禁止されたコンテンツを、目立たないように販売し続けている。一筋の光明を探す他のカーたちは、多くのアフガン人、特に女性が家の中に留まることを強いられているので、何らかの娯楽コンテンツを扱うビジネスが上向くのではないかと期待している。

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による都市封鎖の間、子どもたちは自宅に閉じ込められていたので、アニメ・ビデオの需要が高まりました」と、モヒブラは言う。「今は、タリバンや広範囲にわたる失業のせいで、人々はまた家にこもっています。もっと映画を見るようになるかもしれません」。

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Ruchi Kumar is an independent journalist reporting on conflict, politics, development and culture stories from India and Afghanistan.
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