KADOKAWA Technology Review
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トンガ噴火で浮き彫りになったネットの脆弱さ、復旧に数週間か
NOAA/CIRA/RAMMB
Tonga’s volcano blast cut it off from the world. Here’s what it will take to get it reconnected.

トンガ噴火で浮き彫りになったネットの脆弱さ、復旧に数週間か

海底火山の噴火によって大きな被害が出ているトンガで、インターネット接続が途絶えている。破損した海底ケーブルの復旧に数種間かかると見られており、インターネット接続の脆弱さが改めて浮き彫りになった。 by Chris Stokel-Walker2022.01.21

トンガ沖の海底火山フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイは、過去13年間に数回噴火しているが、直近の1月15日の噴火は最も大きな被害をもたらした。噴火は地球規模で影響を及ぼしており、1万キロメートル以上離れたペルーでは、噴火によって発生した津波で2人が溺死した。

噴火場所に近いトンガの人々がどのような影響を受けたかはまだ分かっていない。しかし、津波によって多くの人が亡くなり、さらに多くの人が家屋を失ったのではないかと懸念されている。状況が分からないは、トンガのインターネットが突如遮断されたからだ。そのため、援助や救助活動の調整が非常に難しくなっている。高度に相互接続された世界において、トンガは今や完全に暗闇にあり、情報発信がほとんど不可能なのだ。インターネットの復旧は非常に重要だが、数週間かかる可能性がある。

Webのパフォーマンス向上を支援する企業、クラウドフレア(Cloudflare)のデータによると、インターネットのトラフィックは現地時間1月15日午後5時30分ごろ、ほぼゼロになった。Webトラフィックを監視している企業「ケンティック(Kentik)」のダグ・マドリー部長は、トンガの接続はまだ回復していないと話す。

トンガがオフラインになった原因はまだはっきりしないが、初期の調査によると、海外と接続する海底ケーブルが噴火による爆発で破損した可能性が高いという。

「トンガは主に1本の海底ケーブルでインターネットに接続しています」とマドリー部長は説明する。トンガとフィジーの間には830キロメートルのケーブルが走っており、2つの島国にインターネット・サービスを提供している。噴火前はインターネット接続を衛星インターネット回線でバックアップしていた。マドリー部長は「今回は、技術的な障害で切り替えられないのかもしれません」と言い、火山の噴火による衝撃波によって衛星アンテナが破損したのではないかとの見方を示す。

ジャマイカの携帯電話会社デジセル(Digicel)は、「トンガと外部との通信はいずれも、噴火による被害の影響を受けています」と声明で述べた。デジセルはトンガ政府とともに、海底ケーブル企業「トンガ・ケーブル・システム(Tonga Cable System)」の少数株主となっている。トンガ・ケーブル・システムと相互接続しているニュージーランドのサザン・クロス・ケーブル(Southern Cross Cable)は、沖合37キロメートル付近で断線している可能性があると見ている。また、トンガの首都ヌクアロファから48キロメートル付近で国内の海底ケーブルが断線しているとされている。コンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)事業者のアカマイ(Akamai)でネットワークを担当するクリスチャン・カウフマン副社長によると、このような破損は通常、海底ケーブルの光ファイバー心線に光を送り、信号が跳ね返ってくるまでの時間を計算することで発見するいう。

破損が確認されれば、トンガの接続性にとって最悪の知らせとしか言いようがない。「海底ケーブルの修復には数日から数週間かかるでしょう」(ケンティックのマドリー部長)。

トンガのインターネット・インフラが止まったのは今回が初めてではない。2019年1月にも海底ケーブルが切断され、インターネットが 「ほぼ完全」に遮断された。初期の報告では磁気嵐と雷によるものと見られていたが、その後の調査で、トルコ船籍の船が錨を下ろした際に断線したことが判明した。 修復にはおよそ20万ドルの費用かかり、修理の間、トンガは通信衛星による接続に頼ることになった。

トンガのインターネットは当面、この衛星回線が唯一の救いとなりそうだ。しかし、被害は未知数であり、困難な時期が続く可能性がある。「『海底ケーブルが損傷しても、衛星があるから大丈夫』と考えていたかもしれません」とマドリー部長は言う。「すぐそばの火山が爆発して、海底ケーブルも衛星回線も使えなくなったら、ほとんど打つ手がありません」。アカマイのカウフマン副社長は、噴火によって空中に舞い上がった大量の火山灰が、衛星による通信に影響を与えている可能性があると話す。

破損した海底ケーブルの修復は容易ではない。噴火の影響ほどではないにしろ、海底ケーブルの破損は毎週のように世界のどこかで発生している。修理には専門の船舶を現地に派遣する必要がある。その1つが、現在、トンガから約5000キロメートル離れたパプアニューギニア沖にいるCSレジリエンス(CS Resilience)だ。どの船もトンガまで駆けつけるには、数日から数週間かかるという。

「誰の海底ケーブルを先に修理するのかという優先順位があります。先に修理してもらうために、割増料金を払う国もありますから」。マドリー部長は説明する。何日もかけて現場に到着した船は、深海にフックを投下し、海底を走るケーブル(家庭用のホースほどの細さ)を引っかける。海底ケーブルは甲板に吊り上げられ、技術者が修理にあたる。「海底ケーブル自体はそれほど頑丈なものではありません」(アカマイのカウフマン副社長)。修理が終わったらケーブルは再び静かに水中に下ろされる。「このプロセスは、海底ケーブルが敷設された150年ほどの間、あまり変わっていません」(マドリー部長)。

もちろん、複合的な要因で修理のプロセスが複雑化することもある。トンガの沿岸が援助物資を届けようとする船舶で混み合う可能性が高く、海底ケーブルの修復は、人命救助、電力復旧、重要な食糧や水の供給より後回しにされるかもしれない。また、破断の位置によっても作業の難易度は変わる。一般に、岸から遠く離れれば離れるほどケーブルは海底深く敷設され、海上から探しあてて吊り上げるのが難しくなる。さらに、インターネット接続を維持するために必要な地上回線が簡単に修復できないほど損傷している可能性もある。「トンガはインターネットの極地にあります。インターネットの中核から外れるほど、(復旧のための)選択肢は減っていきます」(マドリー部長)。

今回のインターネット障害は、世界のインターネット接続がいかに単一障害点に依存しているかを示すものだ。英国サリー大学でサイバーセキュリティを研究するアラン・ウッドワード教授は、「インターネットは核戦争に耐えられるように設計されている、などという考えがウソだと分かる話です」と言う。「インターネットの大部分は、切れやすいチューインガムのようなもので繋がっています」。火山の噴火などのまれな物理現象を想定するのは難しいが、各国は複数の海底ケーブルで冗長性を確保するよう努めるべきであり、局所的な事故が複数の回線に影響しないよう、異なるルートを通る接続回路が理想的だとウッドワード教授は指摘する。

しかし、トンガのような人口10万人強の小国にとって、冗長化のコストは決して安くない。また、今回のような大規模な噴火では、たとえ島の反対側に海底ケーブルを敷設していたとしても、海底の動きによってそのケーブルに亀裂が入った可能性がある。

トニー・ブレア地球変動研究所(Tony Blair Institute for Global Change)でインターネット政策を分析するアンドリュー・ベネット上級政策アナリストは、「(インターネット)インフラのレジリエンス(回復力)には、より幅広い意味合いがあります」と言う。「英国や米国がトンガのようになることはないでしょうが、地政学的な緊張や海底ケーブルのようなものをめぐる議論がますます高まり、人々はより分断され、追い詰められつつあります。味方には最高のケーブル、それ以外にはどうでもいいケーブル、というようなことは望ましくありません」。

ベネット上級政策アナリストは、接続性のギャップを埋めるために2つの選択肢を提案している。1つは、MITテクノロジーレビューでも報じているとおり、衛星コンステレーションを使った衛星インターネットの急速な普及だ。もう1つは、この問題にもっとお金を割くことだ。「回復力のあるインターネット・インフラを公共財と見なすなら、余裕のある国はその費用を負担し、他国に提供すべきです」。同研究所によると、2030年までに世界のデジタル格差を解消するために必要なコストは、OECD諸国の国民総所得のわずか0.2%だという。

インターネットはガス、電気、水道と並ぶ第4の重要なサービスと言われることを考えると、10万人規模の長期に渡るインターネット停止は、噴火による直接的な物理的影響を悪化させるだろう。そして、豊かな欧米諸国以外のインターネットの、ある部分の脆弱性を特に浮き彫りにした。「インターネットは必ずしも、その中心部分が脆弱なわけではありません」とウッドワード上級政策アナリストは言う。「しかし、いつも端っこが少しずつほころんでいるのです」。

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Chris Stokel-Walker is a UK-based freelance technology and culture journalist, and author of TikTok Boom: China's Dynamite App and the Superpower Race for Social Media (Canbury Press)
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