核融合はこの50年でどう進展したか? MITTRの誌面から
過去50年間にわたるMITテクノロジーレビューの記事から読み取れるのは、核融合エネルギーに対する人類の試行錯誤の痕跡だ。 by MIT Technology Review Editors2022.03.03
1972年1月号:『核融合エネルギーの探求』
核融合エネルギーは、長期的な社会的報酬の見込みやその成功の可能性が非常に高いため魅力的であり、過去20年間、大規模で真に国際的な研究努力が展開されてきた。米国は制御熱核融合炉の研究に、これまでに4億ドル以上、ソ連はその2倍以上の予算を割り当てている。
人類が必要とする膨大な「環境に優しい」電力を供給するために、いずれ核融合エネルギーか太陽エネルギーのどちらかが求められるようになるのは疑問の余地がないないようだ。今後20〜30年の間に制御熱核融合によって大量のエネルギーが得られるのか、それとも核融合エネルギーの開発はもっと長く待たねばならないのかは、5年以内に判断できるようになるはずだ。
1983年10月号:『核融合の悩み』
核融合計画の目標は、重水素(デューテリウム)と三重水素(トリチウム)を燃料とする原子炉を作ることだ。重水素は陽子を1個と中性子を1個、三重水素は陽子を1個と中性子を2個含む水素の同位体だ。この燃料を選択した場合、エネルギーを生み出す反応を実現するという問題を容易にする一方で、そのエネルギー源を有用な発電所に変えることは難しくなる。最も深刻な問題は、重水素-三重水素の反応で放出される高エネルギー中性子に関するものだ。この粒子が原子炉の構造を損傷し、放射性物質を発生させる。重水素-三重水素による核融合を採用した原子炉は好ましくない影響の連鎖により、確実に大型で高価、かつ信頼性の低い電力源となってしまう。
こうした欠点が現在よりも広く認識されるようになれば、核融合計画は期待外れなものになり、たとえどのように賢明な方向転換をしても、今後数十年にわたり他の核融合計画の見通しを暗くするだろう。
1994年5月・6月号:『常温核融合へのウォームアップ』
常温核融合の効果は、今世紀で最も興味深い科学的パズルの1つだ。その実用性にはまだ疑問が残るが、何ごとも発見したからといってすぐに実用的な価値が見出せるとは限らない。超伝導は1911年に初めて観測され、20世紀の大部分では停滞していたが、現在は磁気共鳴画像システムによる進展が見込まれる。アインシュタインは、1920年以前にレーザーの基本原理を予言していた。それから数十年後、スーパーマーケットのレジ打ちや光ファイバー通信が実現した。
正確な比較はできないが、レーザー理論は、誰もが実際にレーザー・システムを構築する方法を理解する数十年も前から受け入れられていた。常温核融合を実験室の出来事から、永続的な価値のあるものに変えるのは、実験をする科学者たちの双肩にかかっている。
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- MIT Technology Review編集部 [MIT Technology Review Editors]米国版 編集部
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