KADOKAWA Technology Review
×
猛暑に「バテない」作物 遺伝子編集で気候変動に新たな備え
Getty
気候変動/エネルギー 無料会員限定
Heat is bad for plant health. Here's how gene editing could help.

猛暑に「バテない」作物 遺伝子編集で気候変動に新たな備え

猛暑が続くと、病害虫に対する植物の防衛機能が働かなくなることで、作物の収穫量が減ってしまう恐れがある。デューク大学の研究チームは高温下でも防衛機能が働くように植物の遺伝子を改変することで、この問題を解決しようとしている。 by Casey Crownhart2022.07.25

インドから米国中西部にかけての農業生産量の多い地域では、今年になって最高気温を更新した所があり、食品の供給には良くない徴候となりそうだ。

昼も夜も暑いと干ばつ状態がひどくなるが、気温の上昇が作物に与える影響は他にもある。極端な気候になると、植物内の分子機構が働かなくなることもあり、作物ができなくなる。気候変動により、この脅威はますます高まるであろう。

主要作物であるトウモロコシ、小麦など、植物の中には温暖化によって、さらに厳しい状況に直面するかもしれないものがある。熱暑により、伝染病から身を守るための重要な機能を奪われてしまうからだ。通常レベルより少し暑くなっただけでも、植物は害虫に弱くなる。

生物学者たちはその原因をつきとめようとしてきたが、最新の研究で、植物の生育を遅らせることなく防衛機能を修復する道筋が見つかった。この方法を実際の農業に適用できれば、温暖化が進む中でも人口増加に見合った食品供給を確保する一助となるであろう。

植物の免疫システムは人間のものほど複雑ではないが、細菌や真菌の感染や、昆虫の攻撃に対して化学物質を生成するのは同じだ。

多くの植物において、免疫にはサリチル酸が重要な役割を果たす。サリチル酸には抗細菌作用があり、さらに他の免疫行動を起こすシグナルとしても機能する。

問題は、めったにないほど温度が高くなると、基本的にこの機能が働かなくなることにある。例えば、中欧など比較的冷涼な地域で育つ作物は、28℃を超える日が数日続くと防衛機能に支障をきたす。

この問題は数十年も前から研究者の間では知られていた。だが、最近になって、何が問題でどの …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. An ancient man’s remains were hacked apart and kept in a garage 切り刻まれた古代人、破壊的発掘から保存重視へと変わる考古学
  2. This startup just hit a big milestone for green steel production グリーン鉄鋼、商業化へ前進 ボストン・メタルが1トンの製造に成功
  3. AI reasoning models can cheat to win chess games 最新AIモデル、勝つためなら手段選ばず チェス対局で明らかに
  4. OpenAI has released its first research into how using ChatGPT affects people’s emotional wellbeing チャットGPTとの対話で孤独は深まる? オープンAIとMITが研究
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る