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贅沢品から必需品へ、欧州でもエアコン導入の動き
Adrien Fillon/NurPhoto via AP
The legacy of Europe's heat waves will be more air conditioning. That's a problem.

贅沢品から必需品へ、欧州でもエアコン導入の動き

このところ猛暑が襲っている欧州であるが、エアコンを設置している家庭は全体の10%未満だ。しかし気温上昇に伴い、エアコンの導入率は増えると考えられ、新たな課題が生まれている。 by Casey Crownhart2022.07.25

記録破りの猛暑が欧州を襲っている。だが、欧州大陸ではエアコンなしでこの暑さを乗り切ろうとしている人々も多い。

欧州でエアコンを設置している家庭は全体の10%未満だ。しかし気温上昇に伴い、この数値は上昇する。エアコンを使用する家庭が増えれば、新しい課題が生まれるだろう。欧州で現在使用されているエアコンのほとんどは効率が悪く、気候変動の原因となる二酸化炭素排出量が増える原因となるからだ。極端な場合、エアコンの普及が進み、暑い日に多くのエアコンが長時間稼働するようになると、送電網送電網に負荷がかかりすぎてしまう。

気候変動のせいで、世界の多くの地域では猛暑が常態化し、人々は適応する必要性に迫られている。しかしエアコンに関しては、その必要性と弊害のバランスの取り方を懸念している専門家もいる。

国際エネルギー機関(IEA)の2018年の報告によると、世界中のエアコン販売数は1990年から2016年にかけて3倍以上に増えたという。この傾向は今後も続き、世界中の冷房が使用するエネルギー量も、現在から2050年までの間に、さらに3倍になることが予想されている。

エアコン導入は世界各地で進んでいるが、その大部分はインドやインドネシアなどの暑い国に集中している。IEAによると、2050年までに増加すると予想されている冷房の約半分は、インドと中国の2国が占めている。イタリアのベニスのカフォスカリ大学の環境経済研究者であるエンリカ・デ・シアン准教授は、「インドと中国の所得が向上し、国民がエアコンを買えるようになったのです」と言う。

しかし、欧州などの比較的裕福な国々でもエアコン導入率が上がっている。デ・シアン准教授によると、こちらの主な原因は、都市化と気候変動による気温上昇だという。

多くの欧州人はまだ、エアコン導入に諸手を挙げて賛成というわけではない。ドイツのライプニッツ欧州経済研究センター(Leibniz Centre for European Economic Research)のエネルギー気候経済研究者である ダニエル・オズベルガウス博士は、「エアコンの消費エネルギーを考慮すると、当然ながらエアコンが熱波や気候変動の解決策だと考えるのは少々問題です」と言う。

現在、エアコンなどの冷房機器は世界の電力消費量の約10%を占めている。世界の電力はそのほとんどが化石燃料に依存しているため、エアコンの消費電力量は世界の地球温暖化ガス排出量の大きな部分を占めることになる。IEAのエネルギーアナリストであるケヴィン・レーン博士は、「エアコンはエネルギーを大量に消費するシステムなので、良く思わない人々もいます」と言う。

冷房機器が送電網にとって特に問題となるのは、1日で最も暑い時間帯に一斉に稼働する傾向があるからだ。テキサス州のように夏が暑く、エアコンが普及している地域では、この問題がよく生じる。停電を避けるため、テキサス州の送電網管理者は「午後のピーク時はエアコンの温度を上げよう」と、しばしば呼びかけている

レーン博士は、「現在の都市部には、一般的な窓型の機器よりも効率的な代替手段が存在します」と言う。セパレート型あるいはヒートポンプ方式のエアコン(編注:日本の家庭用エアコンで一般的なもの)だ。ヒートポンプは冷暖房機能を併せ持っているほか、既存の空調テクノロジーよりも効率が良い可能性がある。ヒートポンプの初期費用はまだ比較的高いが、消費エネルギーが少ないため、生涯コストは他の選択肢と同程度になる。

レーン博士はさらに、「気候がわりに穏やかで、熱波も長く続かない地域では、反射屋根、日よけ付き窓、風通しの良い建物といった受動冷却を採用すれば、エアコンなどのコストがかかる能動冷却の必要性を減らせます」と付け加える。

しかし現実には、世界の多くの地域で、冷房は贅沢品ではなく必需品になりつつある。そのような場合、レーン博士は、「いかに手ごろな価格で環境への影響を減らせるか」が重要だと言う。

「政府が気候の変動に配慮しつつ冷房を普及させたいのなら、最も効果的な方法の1つは規制を設けて新しい機器の最低効率を定めることです」。また、リベート制度を導入すれば、高価ではあるが効率の良い製品を購入しやすくなる。

エアコンは現在、状況に応じて、「贅沢品」と「必需品」の間に位置している。世界にはエアコン使用を減らし、温度を高く設定できる地域も多い一方で、冷房が必需品となりつつある地域も増えている。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの研究者であるスティーブン・ジャービス助教授は、「ひどい熱波が広がる中、エアコンは重要な役割の1つを果たしています。人間が本当に危険な状態に陥るのを防いでくれるのです」と言う。「現在の状況下では、エアコンは真の必需品になりつつあります」。

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MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。
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