KADOKAWA Technology Review
×
米中チップ戦争が新章突入、EDA輸出禁止で何が変わるか?
Getty Images
コネクティビティ 無料会員限定
Inside the software that will become the next battle front in US-China chip war

米中チップ戦争が新章突入、EDA輸出禁止で何が変わるか?

半導体の設計に使われるEDAソフトウェアの輸出を米国が制限する動きを見せている。EDAソフトウェアとは何か? 中国にどのような影響を与えるのか? 解説する。 by Zeyi Yang2022.09.06

コンピューター・チップが手作業で設計されていた時代は、とうに過ぎ去った。1970年代のチップには数千個のトランジスターが搭載されていたが、現在では1000億個を超え、手作業での設計は不可能となった。そこで登場したのが、EDA(Electronic Design Automation:電子設計自動化支援)ソフトウェアだ。EDAは、電気技術者がこれまで以上に複雑なチップを設計・開発するのに役立つツールの総称である。

EDAは今、中国と米国の技術貿易戦争の最前線を形成している。8月12日、米国商務省は、特定のEDAツールに対する多国間輸出規制を発表した。中国をはじめとする150カ国以上、つまり米国の旧来の同盟国でない国に対して、特別に許可されたライセンスがある場合を除き、EDAの輸出を禁止する。

EDAは、半導体のサプライチェーンにおいて規模は小さいながらも重要な役割を担っており、そのほとんどは欧米企業3社によって独占されている。7月に米国が半導体製造に不可欠なリソグラフィー装置の輸出制限を要請したのと同様に、米国は強力な影響力を手にすることになる。では、なぜEDA産業は米国中心になってしまったのだろうか。そして、なぜ中国は独自の代替ソフトウェアを開発できないのだろうか。

EDAとは何か?

ECAD(Electronic Computer-Aided Design:電子系CAD)とも呼ばれるEDAは、チップ製造に使用される専用ソフトウェアだ。建築家が使うCADのようなものだが、集積回路上で数十億という極小のトランジスタを扱っているため、より高度なものとなっている。

EDAには、業界を代表するような単一のソフトウェア・プログラムは存在しない。むしろ、ロジック設計、デバッグ、部品配置、配線、時間や消費電力の最適化、検証などのチップの設計・製造プロセス全体を通して、さまざまなソフトウェア・モジュールが使われることが多い。現代のチップは非常に複雑なので、各ステップごとに異なるソフトウェア・ツールが必要になる。

EDAはなぜ重要なのか?

EDAの世界市場の規模は、2021年時点で100億ドル程度だ。5950億ドルという半導体市場のごく一部でしかないが、サプライチェーン全体にとって唯一無二の重要性を持つ。

今日の半導体のエコシステムは「三角形」で表すことができると話すのは、チップ設計とEDA業界に40年以上携わってきたコンサルタントのマイク・デムラーだ。一角には台湾のTSMCのような半導体製造工場(ファウンドリー)、他方の一角には英国に本拠を置くARMのような再利用可能なチップの設計ユニットやレイアウトを製造・販売する知的財産(IP)企業、そして3つめの角にはEDAツールがくる。この3者が揃うことで、サプライチェーンは円滑に回るのだという。

その名前からすると、EDAツールを重要視するのはチップ設計企業だけのように聞こえるかもしれないが、チップの製造前に設計が実現可能なものかどうかをチップ製造企業が検証する際にも使われる。ファウンドリーは、試作品として1つのチップを作ることはできない。チップ製造企業はその都度、数カ月もの時間と製造装置に投資する必要があり、数百個のチップが同 …

半導体の設計に使われるEDAソフトウェアの輸出を米国が制限する動きを見せている。EDAソフトウェアとは何か? 中国にどのような影響を与えるのか? 解説する。
こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
日本発「世界を変える」35歳未満のイノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

記事一覧を見る
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.8
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.8脱炭素イノベーション

2050年のカーボンニュートラル(炭素中立)の実現に向けて、世界各国で研究開発が加速する脱炭素技術、社会実装が進む気候変動の緩和・適応策などGX(グリーン・トランスフォーメーション)の最新動向を丸ごと1冊取り上げる。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る