KADOKAWA Technology Review
×
A Robot Physical Therapist Helps Kids with Cerebral Palsy

ロボット理学療法士が、自宅でリハビリ指導

リハビリのための病院通いは面倒だしお金もかかる。ロボット型の理学療法士なら、自宅でリハビリの指導が受けられる。カメラ付きなので、動きが違うと手本まで見せてくれる。 by Will Knight2017.02.17

This robot, called Darwin, helps people with their physical therapy.
理学療法を受ける患者の補助ロボット「ダーウィン」

アトランタ在住の脳性麻痺の女児は、定期的に理学療法を受けて症状を回復させようとしている。通常は患者が診療所を訪ねて、何時間も退屈な反復運動をすることになるが、この女児は最近自宅で治療を受け始めた。「ダーウィン」という小型の理学療法ロボットが指示を出してくれるのだ。

ジョージア工科大学の研究チームは、ロボットで理学療法を受ける人の治療目標達成を支援している。研究チームは、簡単なゲームとロボットによる励ましの言葉、身振りでの合図を組み合わせると、同じ作業を自分だけでする場合より、患者の意欲が大幅に向上することを発見した。

実験で、研究チームは3Dモーション・トラッカー(3次元動作追跡装置)を使って患者の動きを観察した。ダーウィンは指示された運動をするよう患者を励まし、患者の動きが指示と違う場合は、動作を実演して手本を見せてくれる。1件を除くすべての実験で、ロボットを利用すると患者の活動量に著しい改善が見られた。

「理学療法でまず問題になるのは、子どもたちがやりたがらないことなんです」。ダーウィンによる今回の実験を主導したジョージア工科大学のアヤナ・ハワード教授は「治療効果を得るには毎日の運動が欠かせないのです」という。

ハードウェアが安価になり、プログラミングが簡単になったことで、ロボットは日常生活の意外な場面に登場するようになるだろう。ロボットは理学療法士を完全に置き換えないだろうが、経済的事情で理学療法士の治療を受けられない人でも、決まりきった指示を伝えたり、励ましの言葉をかけたりできる。実際、すでに数多くの企業が家庭用の簡易式ロボット・アシスタントを開発している(「おしゃべりなC3-PO型ロボットは一家に1台あれば十分だ」参照)。

産業用ロボット・アームをコンピューター・ビジョン・システムと連動させれば、それだけで簡易型の家庭用アシスタントの完成だ。「新しいロボット機材に目をつけたら、その使用目的を変えて、他のことに応用できます。アルゴリズムの力でね」とハワード教授はいう。

ハワード教授の研究チームは、ロボットを小児保育の日常作業に役立てる方法を探っている。ハワード教授によると、ロボットは託児保育の場面で単純作業をこなしたり、あるいは児童の食事や着替えの世話をしたりできるかもしれない。ハワード教授は、託児所での人とのふれあいは、大半が他の子どもとの交流で得られるため、託児所がロボットを使うことで、児童の人間とのふれあいが減るとは限らない、と主張している。

スタンフォード大学で、テクノロジーを教育に応用する方法を探る研究室を指揮するダン・シュワルツ学部長は「子どもがロボットを怖がってしまうこともよくあります」と、ロボットを使うアイデアに可能性はあるが、機械が歓迎されない場合もあるという。「ロボットは、命がないのに生きているようなものですからね。小さな子どもには『不気味の谷』に関わるいろいろな課題がかなり顕著に現れるんです」

ハワード教授は、ダーウィンのようなロボットは、薬を飲むよう知らせたり、日課の体操するよう促したりと、高齢患者のケアにも応用できるという。実際に、日本製のアザラシ型ロボット「パロ」は既に介護施設に導入され、入所者のストレス軽減に役立っている。

南カルフォルニア大学でソーシャルロボット工学を研究するマヤ・マタリク教授は、人間とロボットが意思を疎通する仕組み、その動態を解明することが、大きな課題だと語る。「ユーザーが真に必要としていること、そしてユーザーの望みを、私たちは理解しなければなりません。この2つは別のものであることが多いのです。人々をより深く理解することから生じる課題、長く残る、優れたテクノロジーを生み出すための課題は、依然として最も困難なことです」。

人気の記事ランキング
  1. What are the ingredients of Pfizer’s covid-19 vaccine? ファイザーの新型コロナワクチンの成分は?専門家が解説
  2. Covid-19 immunity likely lasts for years 新型コロナ、免疫は長期間持続か=米新研究
  3. The first black hole ever discovered is more massive than we thought 白鳥座X-1ブラックホール、従来推定よりはるかに巨大だった
  4. There’s a tantalizing sign of a habitable-zone planet in Alpha Centauri ケンタウルス座アルファ星のハビタブルゾーンに惑星が存在か
ウィル ナイト [Will Knight]米国版 AI担当上級編集者
MITテクノロジーレビューのAI担当上級編集者です。知性を宿す機械やロボット、自動化について扱うことが多いですが、コンピューティングのほぼすべての側面に関心があります。南ロンドン育ちで、当時最強のシンクレアZX Spectrumで初めてのプログラムコード(無限ループにハマった)を書きました。MITテクノロジーレビュー以前は、ニューサイエンティスト誌のオンライン版編集者でした。もし質問などがあれば、メールを送ってください。
Innovators Under 35 Japan 2020

MITテクノロジーレビューが主催するグローバル・アワード「Innovators Under 35」が2020年、日本に上陸する。特定の分野や業界だけでなく、世界全体にとって重要かつ独創的なイノベーターを発信していく取り組みを紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. What are the ingredients of Pfizer’s covid-19 vaccine? ファイザーの新型コロナワクチンの成分は?専門家が解説
  2. Covid-19 immunity likely lasts for years 新型コロナ、免疫は長期間持続か=米新研究
  3. The first black hole ever discovered is more massive than we thought 白鳥座X-1ブラックホール、従来推定よりはるかに巨大だった
  4. There’s a tantalizing sign of a habitable-zone planet in Alpha Centauri ケンタウルス座アルファ星のハビタブルゾーンに惑星が存在か
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.2/Winter 2020
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.2/Winter 2020SDGs Issue

今、世界中の企業や機関の技術者・研究者たちが各地で抱える社会課題を解決し、持続可能な世界の実現へ向けて取り組んでいる「SDGs(持続可能な開発目標)」。
気候変動や貧困といった地球規模の課題の解決策としての先端テクノロジーに焦点を当て、解決に挑む人々の活動や、日本企業がSDGsを経営にどう取り入れ、取り組むべきか、日本が国際社会から期待される役割について、専門家の提言を紹介します。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る