KADOKAWA Technology Review
×
【5/24まで】ひと月あたり1000円で購読できる春のキャンペーン実施中!
テクノロジーはなぜ「私たちのもの」ではなくなったのか?
Stephanie Arnett/ MITTR | Getty
カルチャー 無料会員限定
We used to get excited about technology. What happened?

テクノロジーはなぜ「私たちのもの」ではなくなったのか?

かつては、新しいテクノロジーが登場すると、それによる恩恵を最も受けるのは消費者である私たちだった。だが、今や最も恩恵を受けるのは、消費者からデータを吸い上げる企業だ。 by Shannon Vallor2022.12.29

私はそのとき、自宅でツイッターのフィードを眺めていた。人工知能(AI)やデータを研究する哲学者である私のフィードは、常に最新のテクノロジーに関するニュースで溢れている。しばらくすると、私は胃が締め付けられるような感覚に気がついた。楽しい時間を過ごしていない証拠だ。なぜだろうか? 政治や気候変動、パンデミックといった、いつものように暗いニュースを読んでいたわけではない。私はしばし手を止め、考えてみた。私は今、何を見ていたのだろうか?

まず、メタ(Meta)のVRゲーム「ホライゾンワールド(Horizon Worlds)」のプレゼンテーションでは、その美的センスの乏しさに目を見張った。あるツイッター・ユーザーが「廃墟の保育園の壁に描かれた絵」と例えた背景画像に、死んだ目をしたマーク・ザッカーバーグのアバターが登場している。そして、アマゾンがプロデュースした「リング・ネーション(Ring Nation)」というテレビ番組のニュースには静かなため息を漏らした。監視カメラ付きドアベル「リング(Ring)」で撮影されたのんきなバイラル・コンテンツで構成される番組だ。さらに、テキストから絵を描く画像生成AI「ステーブル・ディフュージョン(Stable Diffusion)」が出力したスクリーンショットには、思わず歯を食いしばった。このAIを訓練するために、数えきれないほどの人間のアーティストたちの仕事がタダで訓練データとしてつぎ込まれているからだ。

私はこの感覚が何なのか考え、そして思い出した。それは「あきらめ」という気持ちだ。「この場にいたくないのに、去ることもできない」。そんな感情だ。こうした思いをしないために、私はずっとテクノロジーを勉強してきたのにと、皮肉な気持ちになった。かつて、テクノロジーは私にとって幸せな居場所だった。

自然と私は自分の感情を一連のツイートに注ぎ込んだ。

ツイートは大きな反響を呼んだ。通知が爆発的に増え始め、何千もの返信やリツイートが殺到するようになると、最初の満たされた幸福感はやがてより深い悲しみへと変わっていった。多くの人々が、私と同じように重い気持ちを抱えていたのだ。

だが多くの人が声を上げているのを読み、カタルシスも感じた。

私たちの生活、そして私たちのテクノロジーに、何かが欠けているのだ。その欠如が、テクノロジーに携わる人々やそれを研究する人々の間で高まる不安に拍車をかけているのである。それこそが、エディンバラ大学で私が一緒に働く新世代の博士や博士研究員たちを駆り立てているものだ。彼らは、テクノロジーや科学、人文科学といったあらゆる分野の知識を結集して、テクノロジー・エコシステムの何が問題になっているのか、それをどのように解決するのか、解明しようとしている。そのためには、エコシステムにおける優先順位がいかに、そしてなぜ変化したのかを理解しなければならない。

かつ …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る