KADOKAWA Technology Review
×
日本発・世界を変える「U35 イノベーター」募集中!
マイクロプラスチックが海鳥の腸内細菌に影響、人体の場合は?
Getty Images
生物工学/医療 無料会員限定
Microplastics are messing with the microbiomes of seabirds

マイクロプラスチックが海鳥の腸内細菌に影響、人体の場合は?

マイクロプラスチックは、今や地球上のあらゆるところに存在し、人間や動物の体内にも残留している。海鳥を対象に実施された新たな研究では、腸内細菌叢に影響を及ぼす可能性が明らかになった。人間に悪影響を与えることはあるのだろうか。 by Jessica Hamzelou2023.05.17

プラスチックの小さな破片は、存在しない場所を探す方が困難だ。私たちが吸い込む空気、私たちが飲む水、そして私たちが食べる食品の中にも、プラスチックの小片が混ざっている。ある推計によると、毎週クレジットカード1枚分ほどのプラスチックを飲み込んでいる人もいるとのことだ。マイクロプラスチックは、ヒトの血液、胎盤、そして便から見つかっている。しかし、このように大量に存在している小さなプラスチックの破片が、私たちや他の動物にどのように影響しているかは、完全にはわかっていない。

このほど、海鳥を対象に実施された新たな研究によって、マイクロプラスチックが腸内細菌叢に影響を及ぼす可能性が明らかになった。腸内細菌叢とは、腸の中に住む数兆個の微生物の集まりのことで、ヒトを含む動物の健康に重要な役割を果たしている。海鳥は海からプラスチックを飲み込んでおり、飲み込んだプラスチックは胃に蓄積されることがすでに判明している。今回の研究では、マイクロプラスチックによって海鳥の腸内で潜在的に危険な微生物の量が増える可能性が示された。それには、プラスチックを分解できる微生物もいくつか含まれる。

ノルウェー科学技術大学の生物学者で、プラスチックが生態系やヒトの健康に与える影響について研究しているマーティン・ワグナー准教授(今回の研究には関与していない)は、「この研究成果によって、プラスチック汚染が野生生物にもたらしている影響をより広く捉えられるようになりました」と言う。ワグナー准教授は、この結果を「懸念すべきもの」と考えている。プラスチックが物理的な怪我を引き起こすことがあること、そして動物にとって有毒であることは、かなり前からわかっていた。それに加えて、動物の体内に生息する微生物集団にまで影響があるらしいと判明したわけだ。ワグナー准教授は、「今回の研究によって、プラスチック汚染、特にマイクロプラスチックによる悪影響が非常に幅広い範囲に及ぶことが、しっかりと示されています」と言う。

プラスチックまみれの惑星

マイクロプラスチックとは、直径が5ミリメートルに満たない微小なプラスチック粒子のことだ。プラスチック汚染の結果として生じるもので、世界各地の生態系で見つかっている。ドイツのウルム大学大学院の博士課程で微生物学を研究し、現在はイタリアのトレント大学で博士研究員を務めるグローリア・ファケルマンは、「マイクロプラスチックは、はるか遠くにある深海、そして北極海、さらにはチベット高原にまで到達していることがわかっています」という。「河川にもマイクロプラスチックが存在します(中略)そして、土壌中のマイクロプラスチックについて調べる研究も多くのグループが始めています」。

研究者は、動物がどれほどのプラスチックに曝露されているのか、はっきりとは把握していない。しかし、海鳥が特に影響を受けるということは確かだ。海鳥は外洋で長い時間を過ごし、水面で魚を食べている。その際に、浮遊しているプラスチックもたくさん飲み込んでしまうのだ。

海面に浮遊するプラスチックは、海鳥にとって非常に有害である可能性があると先行研究によって明らかになっていた。胃がプラスチックでいっぱいになった海鳥は、満腹だと勘違いしたまま餓死してしまうことがあるのだ。また、プラスチックの破片からにじみ出す化学物質も有害となることがあり、炎症などを引き起こすことがある。微生物はプラスチックの表面 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2026 「Innovators Under 35 Japan」2026年度候補者募集のお知らせ
  2. The UK’s generational tobacco ban might not work. I’m supporting it anyway. 2009年以降生まれには一生売らない——英「たばこ根絶」への賭け
  3. AI agents are not your “coworkers” AIエージェントの「従業員化」、作業ミスの見逃しを招く
  4. IBM has unveiled chip technology that could help extend Moore’s Law another decade 微細化の限界を超え、IBMがムーアの法則を10年伸ばす積層チップ
MITテクノロジーレビューが選んだ、AIの10大潮流 [2026年版]

AIをめぐる喧騒の中で、本当に目を向けるべきものは何か。この問いに対する答えとして、MITテクノロジーレビューはAIの重要なアイデア、潮流、新たな進展を整理したリストを発表する。

特集ページへ
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る