KADOKAWA Technology Review
×
中国企業が続々発表、ナトリウムイオンはEV電池の主流になるか?
Imaginechina via AP Images
気候変動/エネルギー 無料会員限定
This abundant material could unlock cheaper batteries for EVs

中国企業が続々発表、ナトリウムイオンはEV電池の主流になるか?

ナトリウムイオン電池を搭載した電気自動車(EV)が、中国で相次いで発表された。材料が豊富にあり安価なナトリウムイオン電池は、材料価格が高騰し、入手が困難になりつつあるリチウムイオン電池の代替品になり得るのだろうか。 by Casey Crownhart2023.05.12

電池材料として、リチウム以外の新たな化学物質が浮上してきた。

リチウムは現在、携帯電話や電気自動車に電力を供給したり、送電網に電力を蓄えたりするバッテリーのカギとなる材料として、電池界に君臨している。

だが、電池のサプライチェーンに関する懸念が高まるなか、科学者たちは、電池テクノロジーにおいて最も高価で入手しにくい材料を削減しようと模索している。コバルトやニッケルなどの材料は、その必要性を減らせるような選択肢がすでに存在する。一方でリチウムを減らすとなると、頼みの綱となるものがほとんどなかった。

しかしここ数カ月、中国の電池メーカーや自動車メーカーが、リチウムの代わりにナトリウムを使う新たな種類の電池用材料への進出を発表している。新たに登場したナトリウムイオン電池は、諸企業が設定している高い期待に応えることができれば、定置型蓄電池と電気自動車用バッテリーの両方のコストを削減するのに役立つ可能性がある。

2023年3月、中国の自動車メーカーであるJACモーターズ(JAC Motors)が、世界初のナトリウムイオン電池搭載車と称する黄緑色の車の写真を公開した。このコンパクトカーには、別の中国企業であるヒナバッテリー(HiNa Battery)が製造した25キロワット時のバッテリーが搭載されており、プレスリリースによると、航続距離は最大250キロメートルだという。4月には、中国最大手の電気自動車向けバッテリーメーカーである寧徳時代新能源科技(CATL)が、自動車メーカーであるチェリー(Chery)の車に搭載予定のナトリウムイオン電池を開発したと発表した。これら4社はいずれもコメントの要請には応じなかった。

「これらの発表は非常に興味深いものです。ですが、判明していない詳細がたくさんあります」。ブルームバーグNEFのエネルギー貯蔵部門のアナリストであるアンディー・リーチは言う。CATLもヒナバッテリーも、生産スケジュールやナトリウムイオン電池の詳細な性能指標を発表しておらず、それどころか具体的にどのようなタイプのナトリウムイオン電池を使う予定なのかすら明らかにしていない。もっとも、詳細を不明にしておくのは、こうした大企業であれば驚くことではないとリーチは言う。「大企業は手の内を見せないようにするものです」。だが、ナトリウムイオン電池が実際の自動車にど …

ナトリウムイオン電池を搭載した電気自動車(EV)が、中国で相次いで発表された。材料が豊富にあり安価なナトリウムイオン電池は、材料価格が高騰し、入手が困難になりつつあるリチウムイオン電池の代替品になり得るのだろうか。
こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る