KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
グーグル、ファーウェイのAIで気象予報はどう変わるか?
Stephanie Arnett/MITTR | Envato, Wellcome Collection
Weather forecasting is having an AI moment

グーグル、ファーウェイのAIで気象予報はどう変わるか?

グーグル・ディープマインドやファーウェイなど、AI研究で先頭を走っている企業が、気象予測AIモデルを相次ぎ発表した。既存の天気予報に迫る予測精度を記録しているというこれらのAIの利用には大きな利点がある。 by Melissa Heikkilä2023.08.09

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

猛暑の夏を迎えている。ここロンドンも暑い。扇風機の風を最強にしてこの記事を書いているが、それでも脳が溶けてしまいそうな暑さである。7月には記録的な暑さが襲った。

気候危機が深刻化するにつれ、容赦ない熱波、ハリケーン、洪水といった極端な気象現象がますます頻発するようになり、正確な気象予報を出すことがこれまで以上に重要になっている。

AIは、正確な気象予報に役立つという証を次々に打ち立ててきた。ここ1年ほどで、気象予報にAIを活用する動きが盛んになっていた。

エヌビディア、グーグル・ディープマインド、ファーウェイ(Huawei)が最近発表した3つの論文では、機械学習を利用した気象予測の手法を取り上げている。少なくとも従来の方法と同程度の精度を確保しながら、かなり速く気象を予測できるという手法だ。7月にはファーウェイが開発したAIモデル、「パングー・ウェザー(Pangu-Weather:盘古气象)」についての記事を掲載した。パングー・ウェザーは天気だけではなく、熱帯低気圧の進路も予測できる。 詳しくはこちら

ファーウェイの「パングー・ウェザー」、エヌビディアの「フォーキャストネット(FourcastNet)」、グーグル・ディープマインドの「グラフキャスト(GraphCast)」といったAIモデルが登場し、気象学者たちは「機械学習と気象予報の使い方を改めて考えさせられている」と欧州中期予報センター(ECMWF:European Centre for Medium-Range Weather Forecasts)で地球システムモデリングの研究で指揮を執っているピーター・デューベン博士は取材で語ってくれた。

欧州中期予報センターの気象予報モデルは、中期予報(15日先まで)の世界的標準とされている。パングー・ウェザーはかろうじて欧州中期予報センターのモデルに匹敵する正確さに到達したが、一方でグーグル・ディープマインドは査読なし論文で、テストしたすべての組み合わせのうち90%で欧州中期予報センターのモデルを上回ったと主張している。

気象の予測にAIを応用することには大きな利点がある。速いのだ。 従来の予測モデルは、大気物理学に基づく大規模で複雑なコンピューター・アルゴリズムであり、実行には何時間もかかる。ところがAIモデルは、わずか数秒で予測を出せる。

だが、AIモデルがすぐに従来の気象予測モデルに取って代わるようなことはないだろう。 AIを活用した予測モデルは、数十年前に遡る過去の気象データで訓練されている。つまり、過去にも起こっている気象に似た事象の予測に長けているということだ。ますます予測不能なことが増え続けている今、過去の予測に長けているというAIを活用した予測モデルの特性は問題だ。

AIモデルが稀な異常気象を予測できるかどうかはわからないとデューベン博士はいう。最大限正確な予測を得るには、従来の気象予測モデルと並行してAIツールを採用するのが進むべき道だろうとデューベン博士は考えている。

巨大テック企業の気象予報への参入は、純粋に科学的好奇心によるものではないと考えるのは、スイス連邦気象局「メテオスイス(MeteoSwiss)」の数値予測部門で責任者を務める、オリバー・フーラー博士だ。

我々の経済はますます天候に左右されるようになっており、特に再生可能エネルギーの導入拡大によってその傾向は強くなっているとフーラー博士は言う。テック企業のビジネスも天候に結びついており、物流からアイスクリームの検索クエリ数に至るまで、あらゆるものが天候に結びついていると付け加えた。

気象予報の分野は、AIを導入することで大きく前進する可能性がある。世界各国は気象データを追跡し、それを記録している。つまり、AIモデルの訓練に使える公開データは大量に存在するということになる。人間が持つ専門知識と組み合わせることで、AIは骨の折れる作業をあっという間に片付けてくれるだろう。その先がどうなるかは分かからないが、将来の見通しは刺激的だ。「例えば、この分野を探索して、今は存在しないサービスやビジネスモデルを見つけ出すこともできるでしょう」とフーラー博士は言う。

AIテキスト検出ツールは実に簡単に騙せる

チャットGPTがリリースされて数週間もたたないうちに、学生たちがこのチャットボットを使って無難なエッセーを数秒で書き上げてしまうのではないかと懸念されるようになった。こうした懸念に応えてスタートアップ企業は、文章を人間が書いたのか機械が書いたのかを見分けると約束する製品を作り始めた。だが、それらのツールを騙して検出を回避するのは、比較的簡単であることが判明した。

AIが作成したテキストを検出するのは不可能とまでは言わずともいかに難しいことであるか、以前にも記事にしたことがある。本誌のリアノン・ウィリアムズ記者の記事によると、新たな研究により、そうした文章を見分けることができると売り込んでいるツールのほとんどは性能が低いことが判明したという。研究チームが14の検出ツールをテストしたところ、それらツールは人間の書いた文章がどれかを言い当てるのは得意だが(平均96%の正解率)、AI生成の文章については正解率は74%に下がり、その文章に少し手を加えると正解率はさらに下がって42%にまで落ちるという結果になった。 詳しくはこちら

AI関連のその他のニュース

プライバシーや著作権について争う訴訟がAI企業に押し寄せている。米国は、AI規制に欠けているものを数百万ドルの訴訟で埋め合わせている。6月下旬にカリフォルニア州のある法律事務所が、オープンAIに対する集団訴訟を起こした。オープンAIが自社AIモデルの訓練に使うデータをインターネットからかき集めた際に、数百万人のプライバシーを侵害したという訴えだ。現在、俳優でコメディアンのサラ・シルバーマンはオープンAIとメタを訴えている。著作権で保護された自身の作品を両社が自社AIモデルの訓練のためにスクレイピングしたとの主張だ。アーティストらによる既存の著作権訴訟とともに、これらの裁判が、米国でのAI開発のやり方に対する重要な判例となる可能性がある。

オープンAIが新たな概念「スーパー・アライメント」を導入。オープンAIは、「スーパーインテリジェンス・アライメント」に取り組む研究者チームを編成している。要するに、人間よりも賢いAIシステムを制御する上での技術的課題の解決に焦点を当てるチームだ。

同社が構築しようとしている「超知能AI」がもたらす可能性がある害を軽減しようと、取り組んでいること自体はすばらしいことだ。だがその一方で、そうしたAIシステムはまだ極めて空想的なものであり、既存のシステムが多くの害をもたらしている真っ最中だ。少なくとも、オープンAIが現世代のAIモデルをもっと効果的に制御する方法を考え出してくれることを望む。(オープンAI

巨大テック企業は、ユーザーが矢面に立たされている限りAI規制を望むと言っている。この記事は、AI法に向けた動きの舞台裏で起きているロビー活動の概要をわかりやすく伝えている。テック企業は規制を支持すると言いながら、その一方で、自社のAI製品に厳格な規制をかけようとするEUの取り組みに抵抗している。(ブルームバーグ

スタンフォード大学のようなエリート校がなぜAI終末論に取りつかれるようになったのか。AIが人類を滅亡させるという懸念は、どこからともなくやってきたわけではない。実はこの記事が説明しているように、富豪層が密かに支援している運動であり、その大義名分のために大勢のエリート大学生を駆り集めているのだ。そして学生たちは、現在与えられたこの機会を利益にしようと躍起になっている。(ワシントンポスト紙

人気の記事ランキング
  1. Lego bricks are making science more accessible 科学を身近にするレゴブロック、大学の実験装置にも応用
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. Inside the US government’s brilliantly boring websites 米政府系サイトの常識を変えた「デザインシステム」革命
  4. Why artists are becoming less scared of AI 見えてきた「生成AIの限界」がアーティストの不安を取り除く
  5. A way to let robots learn by listening will make them more useful 見落とされてきた「耳」、音を学んだロボットはもっと賢くなる
メリッサ・ヘイッキラ [Melissa Heikkilä]米国版 AI担当上級記者
MITテクノロジーレビューの上級記者として、人工知能とそれがどのように社会を変えていくかを取材している。MITテクノロジーレビュー入社以前は『ポリティコ(POLITICO)』でAI政策や政治関連の記事を執筆していた。英エコノミスト誌での勤務、ニュースキャスターとしての経験も持つ。2020年にフォーブス誌の「30 Under 30」(欧州メディア部門)に選出された。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る