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電子決済大国で足踏みする
「デジタル人民元」
米ドル対抗で新機軸
Stephanie Arnett/MITTR | Envato
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What’s next for China’s digital currency?

電子決済大国で足踏みする
「デジタル人民元」
米ドル対抗で新機軸

いち早くデジタル通貨(CBDC)の実験を始めた中国が、デジタル人民元(e-CNY)の普及に苦戦している。公務員の給与支払い、学生証との統合などさまざまなアイデアが試されたが、ここに来て目標を国外へと変更した可能性がある。 by Mike Orcutt2023.08.08

中国のデジタル人民元(e-CNY)は、テック企業のアリババとテンセントが支配する決済システムを中央集権化したいという欲求から誕生したようだ。同国の中央銀行である中国人民銀行によると、デジタル通貨のe-CNYはテック企業が提供する商用プラットフォームに代わるリスクのない手段であると同時に、時代遅れになりつつある物理的な現金の代替手段でもある。

しかし、e-CNYの実証実験を開始してから約3年が経った現在も、中国政府は魅力的な用途を見つけ出すのに苦労しており、その導入は最小限にとどまっている。そこで、中国政府は目標を変えたか、少なくとも目標の範囲を広げた可能性がある。中国は、e-CNYを国外で国際貿易に使用する計画を進めているようだ。

もし、計画が成功すれば、世界の支配的な基軸通貨としての米ドルの地位に対抗し、その過程で世界の地政学的秩序を揺るがす可能性がある。

(表向きの)理論的根拠

外部から見て、中国政府のe-CNYに対する計画を完全に把握することは不可能だ。中国人民銀行は中央銀行によるデジタル通貨(Central Bank Digital Currency:CBDC)プロジェクトについて堂々と公表しているが、e-CNYが実際にどのように機能するか、あるいは最終的にどのように使用する予定なのかについて、具体的な詳細をほとんど明らかにしていない。

1つ分かっていることは、e-CNYの開発に長い時間がかかっているということだ。

アリババとテンセントはそれぞれ2004年と2005年にデジタル決済システムを立ち上げた。一方、中国政府は2014年にデジタル通貨テクノロジーの研究を開始し、既存の人民元に代わる中央集権型デジタル通貨の構築を目指して2016年にデジタル通貨技術に特化した研究機関を立ち上げている。そして2019年に、メタ(当時の社名はフェイスブック)が独自のグローバル・デジタル通貨を提案すると、人民銀当局者はそのデジタル通貨が中国の法定通貨である人民元の通貨主権を損なう可能性があるとの懸念を表明した。その翌年、中国はe-CNYの実証実験を開始し、現在も継続中である。

中国人民銀行デジタル通貨研究所の穆長春(ムー・チャンチュン)所長によると、e-CNYプロジェクトには3つの大きな目標がある。人民銀の決済システムの効率を向上させること、リテール決済システムのバックアップを提供すること、そして「金融包摂を強化すること」だ。

昨年、ワシントンD.C.の外交政策シンクタンクである大西洋評議会が主催したイベントにおいて、オンラインで講演したムー所長は、「私たちは一般の人々に24時間365日サービスを提供できるようになりました」と明らかにした。さらに、e-CNYによって人民銀の決済システムの利用対象が拡大され、とりわけフィンテック企業や通信事業者など、より多くの民間企業にその決済システムの利用対象が拡張されていると語った。

e-CNYについてムー所長は、中国のリテール取引で圧倒的に利用されている人気のモバイル決済アプリ「アリペイ(Alipay)」や「ウィーチャット・ペイ(WeChat Pay)」に不可欠なバックアップとしても機能すると述べた。中国では、ほとんどの人が現金やクレジットカードを使わず、携帯電話を使って買い物をするため、こうした商用プラットフォームは「非常に重要な金融インフラ」になっているという。したがって、これらの商用プラットフォームに何か問題が発生すれば、「中国の金融安定に非常に大きな悪影響をもたらします」。

その上、中国では10%〜20%の人々が銀行口座を持たず、商用金融システムにアクセスできないとムー所長は説明した。また、多くの業者が現金はおろか、カードすら受け付けなくなった中国では、他国から訪れた旅行者がモバイル主体の決済システムに参加するのに苦労することも多い。ムー所長によると、外国人旅行者は代わりにe-CNYを使うことができるという。

商用銀行アプリを使ってe-CNYを利用することは可能だが、人民銀が運営するアプリからも利用できる。中央銀行は通常、他の銀行とのみ取引するため、アプリを通じて個人客と直接つながろうという人民銀の選択は注目に値する。

「管理された匿名性」

世界的にCBDC導入を推進する動きが強まる中、中国はその推進の最前線に立っている。 世界100カ国以上がCBDC発行の可能性を検討しており、各国を悩ましている大きな問題は、中央銀行がどの程度直接関与すべきか、あるいは関与せずに通貨を民間の仲介業者に運営させるべきかということだ。たとえば、マネーロンダリングやその他の金融犯罪を防ぐために、従来型の銀行は利用者に身元確認を求める。しかし、ほとんどの中央銀行は何百万人もの利用者に対してこの種の管理業務をすることを望んでいない、と語るのは、大西洋評議会のデジタル通貨研究担当部長であるアナンヤ・クマールだ。

ところが、まさにその管理業務をしたいという人民銀の願望は、一部の人権擁護活動家がCBDC構想に反対する理由を説明している。世界中でリテール取引のキャッシュレス化が進んでおり、もし現金が使われなくなったら、政府はCBDCを監視と統制のツールとして利用するだろうと、非営利団体「人権財団(HRF)」の最高戦略責任者(CSO …

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