次世代原子炉、「溶融塩」が再び注目される理由
第4世代原子炉の開発を進める米国のケイロス・パワー(Kairos Power)が、溶融塩冷却システムにおいて2つのマイルストーンを達成した。安全性の向上と建設コストの削減が期待される。 by Casey Crownhart2024.02.05
合計1カ月以上にわたって、米国ニューメキシコ州アルバカーキにあるケイロス・パワー(Kairos Power)で12トンの溶融塩がパイプ内を流れた。
ケイロス・パワーは、冷却材に溶融塩を使用する新しいタイプの原子炉を開発しており、その最初の大規模な試験冷却システムが1月初旬に1000時間の連続運転を達成したばかりだ。同社にとって、ここ数週間で達成した2つ目の大きなマイルストーンとなった。1つ目のマイルストーンは、2023年12月、米国原子力規制委員会(NRC)が同社にとって初となる試験炉の建設許可を与えたことだ。
原子力発電所は、気候変動に対処する上で極めて重要な要素である「二酸化炭素を排出しないエネルギー」を安定的に供給できる。しかし、最近の大規模な原子力発電所の建設は、遅延と予算の高騰に苦しめられている。ケイロス・パワーをはじめとする次世代原子炉の開発に取り組む企業は、コストと建設期間を削減できる可能性がある新たな原子力技術を提示することで、原子力発電への期待を復活させたいと考えだ。
ケイロス・パワーの共同設立者で最高技術責任者(CTO)のエドワード・ブランドフォードは、同社の技術・建設アプローチは、現在の商業用原子炉とは「根本的に異なる」と語る。
今日、ほぼすべての商業用原子力発電所は、同じ種類の濃縮ウランを燃料として使用し、核分裂反応によって発電し、水を使用する冷却システムによって温度を制御している。
しかし、コストと安全性を改善するために、この方式に手を加えようとする企業が増えている。ケイロス・パワーの場合、TRISO(トリソ)と呼ばれる代替燃料の使用を計画している。TRISOは、グラファイト・ケーシングに埋め込むことができる小さなウラン含有カーネルから作られる。TRISO燃料は耐久性に優れ、高温、放射線、腐食に対する耐性を持つ。さらに、原子炉の冷却システムには水の代わりに溶融塩が使用される。
溶融塩は、より安全な原子力発電所を開発する上で非常に役立つだろうとブランドフォードCTOは話す。水冷式原子炉の冷却システムは、水が沸騰しないよう高圧に保つ必要がある。水が沸騰すると原 …
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