大型車のEV化で逆転の発想、「ただの箱」にゼロエミ技術
米カリフォルニア州のスタートアップ企業は、バッテリーとモーターを搭載したトレーラー部を開発している。ディーゼル・エンジンを動力とする既存のトレーラー・ヘッドを流用しながら、有害なガスの排出量の大幅な削減を可能にするアイデアだ。 by Casey Crownhart2024.07.31
- この記事の3つのポイント
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- セミトレーラーは米国で年間110億トンの貨物を輸送し温室効果ガスを排出する
- レンジ・エナジーはバッテリーとモーターを搭載するトレーラー部を新たに開発
- 大幅な燃費改善と排出削減が期待されるが、重量制限や充電インフラの課題も
セミトレーラーは、米国内で年間110億トンもの貨物を輸送しており、走行中は幹線道路に温室効果ガスなどの汚染物質を排出している。
セミトレーラーなどの大型トラックをゼロエミッション(排出ゼロ)技術に移行させることは、小型車の移行よりもさらに難しい。大型車にはより大きなバッテリーとより強力な充電器が必要になるからだ。ある企業は、セミトレーラーにある装置を搭載することが、大型車をゼロエミッション技術に移行させる上でカギになると考えている。
カリフォルニア州マウンテンビューに本拠を置くスタートアップ企業レンジ・エナジー(Range Energy)は、バッテリーとモーターを搭載することで、牽引を容易にするトレーラー部(トレーラー・ヘッドにけん引される部分で、通常は駆動力を持たない)を開発している。トレーラー部にバッテリーとモーターを搭載することで、ディーゼル・エンジンを動力とする既存のトレーラー・ヘッドを使いながら、大幅な排出量削減が可能になるという。このトレーラー部を、水素やバッテリーで動くトラックなどのゼロエミッション技術と併用することで、効率を改善し、航続距離を延ばすこともできる。
ゼロエミッション運送に向けた革新的な動きが活発化しているが、セミトレーラーに注目している企業は少ないと、レンジ・エナジーの創設者兼最高経営責任者(CEO)であるアリ・ジャヴィダンは言う。「基本的にトレーラー部は、車輪の付いたただの箱です」。
2021年に設立されたレンジ・エナジーは、バッテリーとモーターを載せることで、トレーラー部をよりスマートなものにすることを目指している。レンジ・エナジーの最新製品は、200~300キロワット時のバッテリーを搭載している。これは、乗用電気自動車が搭載しているものよりも大きく、SUVやピックアップ・トラックが搭載しているバッテリーでも、その容量は最大100キロワット時である。現在、完全な電気セミトレーラーに必要なバッテリー容量は800キロワット時を超えるとする推定があるが、レンジ・エナジーの最新製品が搭載しているバッテリーはこれよりはるかに小さい。
レンジ・エナジーが販売しているトレーラー部では、バッテリー・パックとそれを管理するシステムが後部のeアクスル(モーターなどの駆動部)につながっている。バッテリー・パックが電力を供給し、トレーラーの動きを後押ししているのだ。このトレーラー部はキングピン(ヒッチ)でトレーラー・ヘッドにつながっている。この仕組みは、トレーラー・ヘッドの動きを感知し、トレーラー部の反応を制御するのに役立つ。レンジ・エナジーの狙いは、トレーラー部に持たせた駆動部品で …
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