未来の職種:雲の種をまいて気候を操る「ウェザーメーカー」
地球温暖化により、近年、冬の降雪量が減ってきている。米国西部の砂漠の町が夏に水を確保できるように、クラウドシーディングにより冬の積雪量を増やすプロジェクトを主導している科学者がいる。 by Mara Johnson-Groh2024.08.30
- この記事の3つのポイント
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- 米国西部の冬の積雪量減少により水不足が深刻化している
- クラウドシーディングで人工的に雪や雨を降らせる取り組みが広がっている
- わずかな降水量の増加でも水資源確保に大きな効果がある
米国西部の大部分は、夏の数カ月間、河川や貯水池への水の供給を冬の間の積雪に頼っている。しかし気温の温暖化に伴い、降雪量はどんどん減少している。最近の調査では、1955年以来、年間積雪量が23%減少したことが示されている。いくつかの推計によれば、米国西部における雪解け水の流出量は、現在から今世紀末までの間に3分の2にまで減少する可能性がある。つまり、すでに水不足問題に直面しているこの地域において、農業、水力発電事業、都市用途で利用できる水の量がさらに減ることになる。
そこで、フランク・マクドナーの出番だ。大気研究科学者のマクドナーは、砂漠研究所(Desert Research Institute:DRI)でクラウドシーディング(雲の種まき)プログラムを主導し、ネバダ州と東シエラ山脈の降雪量を増やすことを目指している。マクドナーのようなスノーメーカーや、雨を作り出す他の者たちは、乾燥した世界における成長産業分野を象徴する存在である。
インスタント・スノー:雪を降らせるためのクラウドシーディングは、少量のヨウ化銀粉末を雲の中に注入することで機能する。この粉末が雲の水蒸気を凝縮させて氷の結晶を作り出し、それが雪片に成長するのだ。他の条件下では、そのような粒子に引き寄せられた水分子が結合して雨粒になる。マクドナーは、地上に設置した特注の遠隔操作装置を使い、空中に放出される粉末状のヨウ化銀を加熱する。粉塵や、ときには食卓塩が、飛行機から放出されることもある。
古い技術、新たな緊急性:ヨウ化銀の沈殿触媒特性は、1940年代に米国の化学者やエンジニアたちによって初めて研究された。しかしこの分野は、小さなニッチ市場にとどまっていた。現在、世界中の40%の人々が水不足の影響を受けており、気候ストレスに直面している貯水池の数も増えていることから、クラウドシーディングが世界的な関心を集めている。「私たちはこれをやらなければならない、というムードになりつつあります。人口が増えすぎて、水資源に対する需要が多すぎるからです」と、マクドナーは言う。現在、世界中で政府主導のクラウドシーディング・プログラムが増えつつあり、降雨量や積雪量の増加に取り組んでいる。さらには、降雨のタイミングを操作してひょうを伴う大規模な嵐が発生するのを防いだり、大気汚染を減らしたり、洪水のリスクを最小限に抑えたりすることも目指している。民間企業も注目している。クラウドシーディングのスタートアップ企業の1つ、レインメーカー(Rainmaker)は最近、数百万ドルの資金を調達した。
結果を生み出す:毎年冬の終わりに、スノーメーカーたちはデータを丹念に調べ、どのような影響を及ぼすことができたか確認する。マクドナーによれば、過去には自分が実施したクラウドシーディングによって、積雪量が5%から10%増加したという。それは干ばつを解消するほどの増加ではない。しかし砂漠研究所は、ネバダ州リノ周辺でクラウドシーディングをするだけでも、約4万世帯に水を供給し続けられる十分な降水量を新たにもたらすと見積もっている。いくつかの水力発電プロジェクトにとっては、「1%の増加が数百万ドルの価値を持つ」と、マクドナーは言う。「ここ西部では、水は本当に貴重なのです」。
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- マラ・ジョンソン=グロウ [Mara Johnson-Groh]米国版 寄稿者
- 受賞歴のあるサイエンス・ライター兼フォトジャーナリスト。地球上のあらゆる事柄(さらにはそれを超えた事柄)について執筆している。