KADOKAWA Technology Review
×
Innovators Under 35 Japan 2026 候補者募集開始!
28日周期で排卵を再現する女性生殖器官ガジェット
This Gadget Has a Real Working Menstrual Cycle on It

28日周期で排卵を再現する女性生殖器官ガジェット

アメリカの研究者が、人間の生殖細胞を使った女性生殖器官ガジェットを開発した。避妊薬の研究や生殖器官にかかわる病気の治験に役立つ。男性版も開発中だ。 by Emily Mullin2017.03.30

A close-up of a device that mimics the human menstrual cycle. Each compartment contains living cells from a different part of the female reproductive system.
人間の排卵周期を再現するガジェットの詳細(それぞれの区画に、女性の生殖器官の各部分から採取された細胞が生きたままおさめられている)

バーチャル世界に再現された人間を「アバター(avatar)」と呼ぶ。では、女性の生殖器を生物学的に再現したら何と呼べばいいだろうか?

「エバター(Evatar)」 とでも呼べばいいだろうか。

小さな肺や肝臓のように動作するチップ型の臓器は、MIT Technology Reviewで以前紹介したことがある。開発者によれば「エバター」は世界初の、卵子が成熟して排出されるまでの28日間の排卵周期を再現する研究用ガジェットだ。

装置は、B6判コミック本ほどの大きさで、プラスチック製の各区画が、女性の卵巣、卵管、子宮、子宮頚部、肝臓の働きを模倣する。エバターには、さまざまな事情で手術を受けた女性から提供された本物の人間の細胞が使われている。 小さな肝臓まで収められているのは、薬を代謝する器官だからだ。

装置を開発したノースウェスタン大学とシカゴ・イリノイ大学、ドレイパー(本社マサチューセッツ州ケンブリッジ)の科学者によれば、エバターはプラスチック製の小区画に、個々に培養された各組織を、微細な管でつなぎ合わせてネットワーク化されている。20個の電動マイクロポンプで、栄養素とホルモンを混ぜ合わせた青色の液体(血液の代わりに、各組織を連動させる)が装置を循環する。

A blue fluid is pumped around the Evatar to perform the function of blood and circulate a cocktail of molecules and hormones.
青い液体がポンプでエバターに送られ、血液の代役として微粒子とホルモンの混合液を装置全体に循環させる

装置が排卵できるかどうかは、マウスの卵巣(人間の卵巣を入手するのは難しい)で試験された。ネイチャー・コミュニケーション誌に掲載の論文によれば、約14日間で卵巣から卵子が排出されたという。

プロジェクトを率いたノースウェスタン大学のテレサ・ウッドラフ教授(産婦人科)によると、研究チームは、男性版の同様の装置も開発中だという。また、同じ女性から組織サンプルの提供を受けて幹細胞を使えば、やがては「個人用エバター」が実現するかもしれない。

エバターの登場で、科学者は人間の生理機能をシミュレーションできる身体機能チップ(body-on-a-chip)の実現に向けて前進した。ドレイパーのジョナサン・コペタ生物系・組織エンジニアによれば、人工的に排卵周期を再現するシステムがあれば、製薬会社は避妊具の開発や子宮筋腫、子宮内膜症、子宮頸がんや卵巣がん等の病気の治療薬の試験を安全に実施できるという。「歴史的に、女性の生理学は医薬開発の過程では十分に注目されていませんでした」とコペタ・エンジニアはいう。

人気の記事ランキング
  1. It’s time to address the looming crisis in entry-level work. 「コーディングを学べ」もう通用せず、AIが若者の雇用を奪い始めた
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2026 「Innovators Under 35 Japan」2026年度候補者募集のお知らせ
  3. Anthropic’s Code with Claude showed off coding’s future—whether you like it or not 「Claudeに任せてしまおう」 たった1年で激変したソフトウェア開発
タグ
クレジット Images courtesy of Case Western; Draper Laboratories; and Northwestern Medicine
エミリー マリン [Emily Mullin]米国版
ピッツバーグを拠点にバイオテクノロジー関連を取材するフリーランス・ジャーナリスト。2018年までMITテクノロジーレビューの医学生物学担当編集者を務めた。
▼Promotion
社会実装都市「ひろしま」の魅力に迫る ローカル ✕ イノベーション
MITテクノロジーレビューが選んだ、AIの10大潮流 [2026年版]

AIをめぐる喧騒の中で、本当に目を向けるべきものは何か。この問いに対する答えとして、MITテクノロジーレビューはAIの重要なアイデア、潮流、新たな進展を整理したリストを発表する。

特集ページへ
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る