作物改良、新時代へ:遺伝子編集で実現する「第二の緑の革命」
1960年代の「緑の革命」により、世界は人口増加による飢餓の問題を回避できた。最近では、気候問題が農業生産高に及ぼす影響を緩和するため、クリスパーなどの遺伝子編集技術に基づく、新たな緑の革命が黄金期を迎えつつある。 by Bill Gourgey2024.10.28
- この記事の3つのポイント
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- 1960年代の緑の革命により小麦と米の収穫量が倍増した
- 現代の植物工学は単位面積あたりの収穫量の向上に注力している
- 気候変動や人口増加により遺伝子組換え作物が主流になる可能性がある
1960年代、 米国の生物学者ノーマン・ボーローグは、穀粒がぎっしり詰まった小型の小麦品種を人為的に選択することにより、「緑の革命」として知られる農業の画期的なイノベーションの時代の火付け役となった(この功績により、ボーローグはノーベル平和賞を受賞した)。アジアでは、フィリピンに拠点を置く国際稲研究所(IRRI:International Rice Research Institute)が、稲作で同様の成功を収めた。その結果、1990年代までに小麦と米の収穫量は世界中で倍増し、度重なる飢饉を回避できた。緑の革命が成功を収めたため、人口増加によってより深刻な飢饉が到来するという悲観的な予測は、もはや起こりそうにないと思われるようになった。
しかし、緑の革命には限界があった。従来の品種改良技術では、植物から引き出せる収穫量に限界があったのだ。交配種の遺伝子プールは、性による適合性の問題で限界があり、また、どの形質が受け継がれるかを制御するのも難しい。さらに、望ましい形質を生み出すために新しい品種を交配するには、何十年もかかる。1982年のMITテクノロジーレビューの特集記事では、異なる種の遺伝子を組み換えることで、このような従来の植物交配の制約を克服する取り組みが紹介されていたが、それでも、時間と費用がかかり、予測も難しかった。
ミズーリ大学の生物科学教授であり、ドナルド ダン …
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