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数時間かかる調べ物、数十分で=オープンAIが新エージェント
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OpenAI’s new agent can compile detailed reports on practically any topic

数時間かかる調べ物、数十分で=オープンAIが新エージェント

オープンAIは新しいAIエージェント「Deep Research(ディープ・リサーチ)」を発表した。時間がかかる調査を短時間で済ませることができるもので、オープンAIが開発した推論モデル「o3」を利用している。 by Rhiannon Williams2025.02.04

オープンAI(OpenAI) は、複雑で多段階のオンライン調査を人間のアナリストと同等のレベルで実行できる新しいエージェントを発表した。このエージェントは、科学的研究から個人に最適な自転車の推薦まで、あらゆる分野の調査が可能である。

「Deep Research(ディープ・リサーチ)」と名付けられたこのツールは、Webブラウジングとデータ分析に最適化されたオープンAIの「o3」推論モデルによって駆動されている。膨大なテキスト、画像、PDFを検索・分析し、綿密な調査結果をレポートとしてまとめることができる。

オープンAIはこのツールが、人間の能力に匹敵する(または上回る)「汎用AI(AGI:Artificial General Intelligence)」の開発という重要な目標の実現に向けた大きな一歩だとしている。また、このツールでは「数十分」で完了するタスクが、人間なら数時間かかるとも主張している。

「動画配信プラットフォーム間の競合分析をしてほしい」といった単一の問い合わせに対して、Deep ResearchはWeb上の情報を検索し、収集したデータを分析したうえで、出典を明記した詳細なレポートにまとめる。また、ユーザーがアップロードしたファイルから情報を取得することも可能だ。

オープンAIは、「o1」マルチステップ推論モデルに使用したのと同じ「思考の連鎖(Chain of Thought)」強化学習法を利用して、Deep Researchを開発した。ただし、o1が主に数学、コーディング、その他のSTEM分野に焦点を当てて設計されていたのに対し、Deep Researchははるかに幅広いテーマに対応できる。また、調査過程で新たに取得したデータに基づき、応答内容を柔軟に調整することができる。

とはいえ、Deep Researchが他のAIモデルが抱える課題を完全に克服しているわけではない。オープンAIによると、Deep ResearchはChatGPT(チャットGPT)よりも「著しく」低い頻度ではあるものの、誤った情報(ハルシネーション)を生成してしまうことがあるという。また、1つの質問への回答に5〜30分程度かかることがあり、高い計算リソースを必要とする。調査に要する時間が長いほど、消費される計算資源も増大する。

にもかかわらず、現在Deep Researchは、オープンAIの有料プランである「Pro」会員に追加料金なしで提供されており、「Plus」「Team」「Enterprise」ユーザーにも近日中に展開される予定だ。

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米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」の執筆を担当。MITテクノロジーレビュー入社以前は、英国「i (アイ)」紙のテクノロジー特派員、テレグラフ紙のテクノロジー担当記者を務めた。2021年には英国ジャーナリズム賞の最終選考に残ったほか、専門家としてBBCにも定期的に出演している。
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