送電網にAI革命、カリフォルニア州で北米初の自動管理システム
カリフォルニア州独立系統運用機関(CAISO)が、生成AIを活用した停電管理システムの導入を決定した。現在は停電報告書を人手で読み込んでいるが、AIが自動でキーワードをスキャンし予測レポートを生成。将来は送電網の主要機能に関する意思決定の自律化を検討する。 by Alexander C. Kaufman2025.07.15
- この記事の3つのポイント
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- CAISOが生成AIソフトウェア「ジーニー」を用いて停電管理の自動化を進めている
- 従来は人手で行っていた停電報告書の分析作業をAIが一括処理し効率化を図る
- 米国エネルギー省もAIによる送電網運用の改善可能性を報告書で指摘している
カリフォルニア州全域を管轄する送電網運用事業者が、北米で初めて人工知能(AI)を用いた停電管理の導入を進めていることが、MIT テクノロジーレビューの取材で明らかになった。
「私たちは送電網運用を近代的なものに変えたいと考えていました。この技術はまさにその目的に合致しています」。カリフォルニア州独立系統運用機関(CAISO、カイソー)の電力系統技術担当上級顧問であるゴパクマール・ゴピナサンは話す。「AIはすでにさまざまな業界に変革をもたらしています。しかし、私たちの業界でAIが活用されている事例はまだ多くありません」。
7月15日にミネアポリスで開催される公益事業の業界サミット「DTECH Midwest」で、CAISOはエネルギーサービス大手OATIの新しいAIソフトウェア「ジーニー(Genie)」を用いたパイロット・プログラムの実施を発表する予定だ。ジーニーは、生成AI技術を用いて、送電網運用者向けにリアルタイム分析を実行。さらに、送電網の主要機能に関する意思決定を自律的にこなす可能性を秘めている。たとえて言うなら、交通整理を担う警察官からセンサー付き信号機へと移行するようなものだ。
CAISOは、シリコンバレーの最先端企業や研究所に電力を供給しているが、カリフォルニア州の電力系統の実際の運用は、驚くほどアナログな作業に依存している。現在、CAISOのエンジニアたちは停電報告書から計画中または進行中の保守作業に関するキーワードを探し出し、それらのメモを読み込み、それぞれの項目を送電網ソフトウェアに入力し、断線した送電線や変圧器が電力供給に与える影響をシミュレーションしている。
「1件のレポートを調べるのに1分もかからないとしても、それが200~300件にのぼれば、莫大な時間になります」。OATIでプラットフォーム・可視化・分析部門を担当するアビマニュ・タクル副社長は語る。「さらに、部署ごとに独自のキーワードで処理しているため、それらを単一のキーワード辞書に統合すれば、AIが一括でスキャンし、予測レポートを生成できる …
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