ニューラリンク元社長の新会社、格安買収で「人工視覚」実用化
ニューラリンク元社長が創業したサイエンス・コーポレーションが、破産寸前のフランス企業から視覚インプラント技術を格安で買収。加齢黄斑変性の患者を対象とした臨床試験の結果では、読書できるまでに回復した例もあった。同社は欧州での販売承認を申請している。 by Antonio Regalado2025.10.22
- この記事の3つのポイント
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- サイエンス・コーポレーションが網膜インプラント技術を470万ドルで買収し人工視覚システムを実用化
- 加齢黄斑変性の治療として20年前から開発された技術で、一部患者は文字読解可能レベルまで視力が回復
- 現在400ピクセルの解像度を次世代では5倍に向上させる予定だが、市場規模は視覚品質に依存する
サイエンス・コーポレーション(Science Corporation)は、高度な試験段階にある視覚インプラントを格安で買収し、ライバルを一気に追い抜いた。同社は、イーロン・マスク率いる脳インターフェイス企業、ニューラリンク(Neuralink)の元社長が創業したライバル企業である。
ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに10月20日付けで掲載された報告によると、このインプラントは一種の「人工視覚」を生み出すもので、一部の患者は文字を読んだりクロスワードパズルを解いたりできるようになるという。
このインプラントは網膜の下に埋め込むマイクロエレクトロニクス・チップである。眼鏡に取り付けたカメラからの信号を利用してチップが電気バーストを放出し、高齢者の視力低下の主な原因である加齢黄斑変性で損傷した光受容細胞を迂回する。
「注目すべき点は、その効果の大きさです」。この「PRIMA(プリマ)」と呼ばれるシステムの臨床試験を主導したピッツバーグ大学の視覚科学者、ホセ・アラン・サヘル教授は言う。「英国在住のある患者は、普通の本のページを読んでいます。前例のないことです」。
この装置は昨年まで、サヘル教授が共同創業したフランスのスタートアップ企業、ピクシウム・ビジョン(Pixium Vision)によって開発が進められていた。だが同社は追加資金の調達に失敗し、破産の危機に直面していた。
そこでサイエンス・コーポレーションが介入し、裁判所提出書類によれば約400万ユーロ(470万ドル)で同社の資産を買収したという。
「ちょうど研究結果が出る直前のことで、買収価格はきわめて安価でした。サイエンス・コーポレーションにとっては良いタイミングだったと思います」とサヘル教授は話す。「彼らは市場投入が近い、先進的な技術をすぐに利用できるようになった。ライバル企業に対して有利な立場に立ったのです」。
サイエンス・コーポレーションは2021年、ニューラリンクの初代社長だったマックス・ホダックが同社を突然退社した後に設立された。ベンチャーキャピタル・データベースのピッチブック(Pitchbook)によると設立以来、およそ2億9000万ドルを調達し、その資金を脳インターフェースや新しいタイプの視覚治療に関する広範な探索的研究に投じてきた。
「野望は、アップルやサムスン、アルファベットに匹敵するような、大規模な独立系の医療テック企業を築くことです」。サイエンス・コーポレーションのCEOを務めるホダックは9月 …
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