排出量過去最高、米パリ協定離脱——それでも残る気候問題の明るい兆し
2025年、世界の温室効果ガス排出量は過去最高を記録し、米国はパリ協定から離脱した。だが中国は経済成長5%でも排出量を横ばいに保ち、送電網バッテリーは2035年目標を10年早く達成。温暖化予測は10年前の3.6℃から2.6℃に改善した。進歩は停滞しているが、希望は残る。 by James Temple2025.12.25
- この記事の3つのポイント
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- 2025年は世界の温室効果ガス排出量が過去最高を記録し観測史上2-3番目に暖かい年となった
- 中国は経済成長を続けながら18か月間CO2排出量を横ばいに保ち脱炭素化モデルを示している
- 送電網バッテリー普及とAI投資による次世代エネルギー技術への資金流入が進展するなど明るい兆しも
2025年の気候関連ニュースは良いものではなかった。世界の温室効果ガス排出量は(再び)過去最高水準に達した。今年は観測史上、2番目または3番目に暖かい年になる見込みである。米カリフォルニア州の山火事やインドネシアとパキスタンの洪水といった気候変動が引き起こした災害は、地域社会を荒廃させ、数十億ドル規模の損害をもたらした。
気候変動への継続的な人為的寄与とその明らかな影響を示すこれらの憂慮すべき指標に加えて、世界最大の経済大国は今年、気候政策で急激な方向転換をとった。トランプ政権下の米国はパリ協定から離脱し、気候研究の資金を削減し、気候技術プロジェクトへの数十億ドルの資金提供を打ち切った。
我々は気候変動に関して深刻な状況に置かれている。しかし、明るい兆しを探している人々にとって、2025年にはいくつかの良いニュースもあった。以下は、本誌の気候担当記者が今年注目したポジティブな話題の一部である。
中国の排出量横ばい
今年、最も注目すべき、そして励みとなる進展の兆候の一つは中国で見られた。世界第2位の経済大国であり、最大の気候汚染国でもある中国は、カーボン・ブリーフ(Carbon Brief)の分析によれば、過去1年半にわたって二酸化炭素排出量を横ばいに保つことに成功している。
こうした状況は過去にもあったが、それは新型コロナウイルスのパンデミック期を含め、中国経済が縮小している場合に限られていた。しかし現在は、経済が今年約5%成長する見通しで、電力需要が増え続けているにもかかわらず、排出量は減少に転じている。
では、何が変わったのか。中国は現在、膨大な量の太陽光発電と風力発電を導入し、さらに多数のEVを道路に普及させている。その結果、大気中に排出する二酸化炭素を増やすことなく経済成長を続けることが可能となり、排出量と経済成長の従来の結びつきを切り離しつつある。
具体的には、中国は今年最初の9か月間で240ギガワットもの太陽光発電容量と61ギガワットの風力発電容量を新たに追加した。これは、米国がこれまでに設置してきた太陽光発電容量の総量にほぼ匹敵する規模を、わずか今年の最初の3四半期で達成したことになる。
中国の排出量がすでにピークに達したと断言するには時期尚早だが、同国は2030年以前に公式にその水準に到達すると表明している。
明確にしておくと、中国はいまだ、比較的安全とされる気温目標を達成するために世界を軌道に乗せるほどの速さでは動いていな …
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