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強制送還広報にAI動画、米移民局がSNSに大量投稿
Anthony Behar/Sipa via AP Images
DHS is using Google and Adobe AI to make videos

強制送還広報にAI動画、米移民局がSNSに大量投稿

米国の入国管理機関が連日、トランプ大統領の移民政策を支持する動画をソーシャルメディアに大量投稿している。1月末に公開された文書で、これらのコンテンツがグーグルとアドビの生成AIツールを使って作られていることが明らかになった。 by James O'Donnell2026.02.03

この記事の3つのポイント
  1. 米国国土安全保障省がVeo3とFireflyを使用してAI動画生成による広報コンテンツを制作していることが判明
  2. トランプ政権の大量強制送還政策を支持するSNSコンテンツの一部がAI生成ツールで制作されている
  3. テック企業従業員が雇用主に移民関税執行局への批判を求める中、AI生成コンテンツの検証と透明性確保が課題に
summarized by Claude 3

米国国土安全保障省がグーグルとアドビの人工知能(AI)動画生成ツールを使用して、一般向けに公開するコンテンツの制作・編集をしていることが新たな文書によって明らかになった。同省の移民関連機関は、トランプ大統領の大量強制送還政策を支持するコンテンツをソーシャルメディアに溢れさせており、これらのコンテンツの一部はAIで制作されたと思われる。テック業界の労働者らは雇用主に対し、こうした機関の活動を非難するように圧力をかけている。

1月28日に公開されたこの文書は、国土安全保障省が文書の草稿作成からサイバーセキュリティ管理まで、さまざまな業務でどの商用AIツールを使用しているかの目録を提供している。

「AIを使用した画像、動画、その他の広報資料の編集」に関する項目で、国土安全保障省がグーグルの「Veo 3(ベオ3)」動画生成ツールと「Adobe Firefly(アドビ・ファイアフライ)」を使用していることが初めて明らかになった。同省はこれらのツールのライセンスを100から1000の間で保有していると推定されている。また、文書の初稿作成と長文レポートの要約に「Microsoft Copilot Chat(マイクロソフト・コパイロット・チャット)」を、コーディング業務に「Poolside(プールサイド)」ソフトウェアを使用していることも、他社のツールと併せて開示されている。

グーグル、アドビ、国土安全保障省はコメント要請に即座には応じなかった。

このニュースは、国土安全保障省の一部である移民・関税執行局(ICE)などの機関が米国各都市で移民関連の作戦を拡大する中、Xやその他のチャンネルでシェアしている大量のコンテンツをどのように制作している可能性があるかの詳細を示している。これらの機関は「大量強制送還後のクリスマス」を祝うコンテンツを投稿し、聖書の一節キリストの誕生に言及し、逮捕した人々の顔を公開し、捜査官の募集を目的とした広告を公開している。また、これらの機関は動画でアーティストの許可なく音楽を繰り返し使用している。

特に動画を中心とした一部のコンテンツは、AIで生成された見た目をしているが、これまでこれらの機関がどのようなAIモデルを使用している可能性があるかは明確ではなかった。これは、国土安全保障省が一般向けに共有するコンテンツの制作にそのような生成ツールを使用している初の具体的な証拠である。

どの企業が特定のコンテンツの制作に関与したか、あるいは実際にAI生成されたものかどうかを検証することは依然として不可能である。例えば、アドビは自社ツールで制作された動画にAI生成であることを開示する「透かし」を入れるオプションを提供しているが、この開示はコンテンツが異なるサイトにアップロードされ共有される際に必ずしも維持されるとは限らない。

公開された文書により、国土安全保障省が具体的にグーグルの「フロー(Flow)」を使用していることが明らかになった。これはVeo 3動画生成ツールと映画制作ツール一式を組み合わせたグーグルのツールである。ユーザーはクリップを生成し、音声、対話、背景音を含む動画を含め、AIで完全な動画を組み立てることができ、極めてリアルな仕上がりにできる。アドビは2023年にFirefly生成ツールを発表し、訓練や出力に著作権で保護されたコンテンツを使用しないことを約束した。グーグルのツールと同様、アドビのツールも動画、画像、サウンドトラック、音声を生成できる。文書では、同省がこれらの動画生成ツールをどのように使用しているかの詳細は明らかにされていない。

グーグルの現職および元従業員140人以上、アドビの30人以上を含む大手テック企業の労働者らは、ここ数週間、移民・関税執行局と1月24日のアレックス・プレッティ銃撃事件(日本版注:米ミネソタ州ミネアポリスで男性が連邦捜査官によって射殺された事件)に対して立場を表明するよう雇用主に圧力をかけている。グーグルの経営陣はこれに対する声明を発表していない。2025年10月、グーグルをアップル(Apple)は安全上のリスクを理由に、移民・関税執行局の目撃情報を追跡することを目的としたアプリを削除した。

1月28日に公開された追加文書では、6月に404メディア(404Media)が最初に報じたように、移民・関税執行局が使用する顔認識アプリを含む、同省がより専門的なAI製品をどのように使用しているかの新たな詳細が明らかになった。

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ジェームス・オドネル [James O'Donnell]米国版 AI/ハードウェア担当記者
自律自動車や外科用ロボット、チャットボットなどのテクノロジーがもたらす可能性とリスクについて主に取材。MITテクノロジーレビュー入社以前は、PBSの報道番組『フロントライン(FRONTLINE)』の調査報道担当記者。ワシントンポスト、プロパブリカ(ProPublica)、WNYCなどのメディアにも寄稿・出演している。
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