KADOKAWA Technology Review
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「銃撃犯90分で逮捕」
米最大の監視都市シカゴ、
防犯カメラ4.5万台の功罪
Akilah Townsend
倫理/政策 Insider Online限定
Inside Chicago’s surveillance panopticon

「銃撃犯90分で逮捕」
米最大の監視都市シカゴ、
防犯カメラ4.5万台の功罪

2024年9月、シカゴのブルーライン列車内で4人が殺害された。警察は数万台のカメラを繋ぐ監視ネットワークを稼働させ、わずか90分で容疑者を逮捕した。だが、同じシステムは不均衡な監視や市民への萎縮効果も生み出している。米最大級の「監視都市」は、いったい誰を守っているのか。 by Rod McCullom2026.03.17

この記事の3つのポイント
  1. シカゴ市では凄惨な銃乱射事件が90分で解決されるなど、数万台の監視カメラと読み取りシステムが治安維持に効果を発揮している
  2. 黒人・ラテン系住民が多い地域に監視技術が集中配備され、人種格差を拡大する構造的差別の問題が深刻化している
  3. 市民団体による情報公開請求や訴訟活動が一部の監視システム廃止を実現し、技術導入の透明性向上を求める動きが広がっている
summarized by Claude 3

2024年9月2日早朝、シカゴ交通局ブルーラインの列車内で凄惨な無差別銃乱射事件が発生した。フォレストパーク郊外に近づきつつあった西行きの列車内で4人が銃撃され、死亡したのだ。

警察は迅速にデジタル捜査網を稼働させた。市内に設置された数千台のカメラを繋ぐ監視ネットワークである。

捜査はまず、交通局の監視カメラ映像をざっと確認することから始まった。その映像には、銃を持つ容疑者が処刑するような形で被害者を撃つ様子が捉えられていた。警察当局はリアルタイム映像を通じて、高速鉄道システム内を移動する容疑者の姿を追った。警察はその画像を、交通機関の職員と数千人の警官に配布した。隣接するリバーデイル郊外で勤務する1人の警官が、容疑者の顔を覚えていた。過去に逮捕したことがある男だった。銃撃事件発生からわずか90分後、別の駅で容疑者が逮捕された。このとき当局は、男の氏名、住所、過去の逮捕歴をすでに把握していた。

シカゴ市民にとって、この捜査過程の大部分はさほど驚くようなことではない。シカゴ市内には数万台の監視カメラが設置されており、その数は最大4万5000台に上ると推定されている。人口1人あたりの台数としては全米最多クラスだ。シカゴは国内最大級のナンバープレート読み取りシステムも備えている。さらに当局は、シカゴ公立学校、シカゴ公園局、公共交通機関といった独立機関の音声・映像監視データに加え、ドアベルカメラ「Ring(リング)」を含む住宅・商業施設の多くの防犯システムにもアクセスできる。

司法当局とセキュリティ擁護派は、この大規模監視システムが公共の安全を守っており、効果的に機能していると主張する。しかし、活動家や多くの住民はこのシステムについて、人々の行動に萎縮効果を生み出し、プライバシーと言論の自由の保障を侵害する、「監視パノプティコン(全展望監獄)」だと指摘する。

シカゴの黒人およびラテン系コミュニティは、歴史的に過剰な警察活動と監視の対象になってきたと、ノースイースタン・イリノイ大学の都市暴力学者、ランス・ウィリアムズは言う。そのような監視は、約束しているような安全をもたらすことなく、新たな問題を生み出してきたと、ウィリアムズは指摘する。「犯罪や暴力の問題を解決し、それらのコミュニティをより安全にする」ためには、市全体で、生活可能な賃金を得られる仕事や、手頃な価格の住宅、メンタルヘルスサービスといった「構造的な問題に対処する必要があります」と、ウィリアムズは言う。

近年、この監視体制に対して一定の効果的な反発も見られている。たとえば、つい最近までシカゴ市は、銃声を検知して警察に通知する音響センサー「ショットスポッター(ShotSpotter)」の最大の顧客だった。このシステムは2012年に市南部の小さな地域で導入された。その後2018年までに、市の約60%にあたる約136平方マイル(約352平方キロメートル)の地域が、この音響監視ネットワークでカバーされるようになった。

批判者たちはショットスポッターの有効性に疑問を呈し、センサーが主に黒人およびラテン系住民の居住地域に設置されていることに異議を唱えた。こうした批判は、2021年3月に起きた事件によってさらに切迫したものとなった。ショットスポッターの警報に対応した警官が、13歳のアダム・トレドを射殺したのである。この悲劇は、「#StopShotSpotter(ショットスポッターを止めろ)」抗議運動の象徴となり、2023年の市長選でブランドン・ジョンソンが勝利した際の主要争点の1つにもなった。ジョンソンは市長就任後、この公約を実行し、ショットスポッターを開発したサンフランシスコ・ベイエリアの企業サウンドシンキング(SoundThinking)との契約を打ち切った。推定では、このシステムに対して市が支払った総額は5300万ドル以上に上る。

コメント要請に対する回答で、サウンドシンキングはショットスポッターについて、法執行機関が「現場により迅速に到達し、被害者を救助し、証拠をより効果的に発見できるようにする」と述べた。また、同社は「導入地域の選定には一切関与していません」としつつも、「最も深刻なレベルの銃暴力を経験している地域も、他の地域と同じ迅速な緊急対応を受ける資格があると確信しています」と付け加えた。

この米国第3の都市では、警察による監視に対する成功した抵抗がある一方で、それに対抗する動きも存在する。シカゴおよび周辺郊外の政府や当局は、市民の圧力にも応える形で監視の利用拡大を進めている。音響監視に対する勝利も長続きしない可能性がある。昨年初め、市は銃による暴力を検知する技術に関する提案依頼書(RFP)を発行した。

シカゴおよびその周辺地域では、デジタルプライバシーや監視問題の活動家、被告側弁護人、法執行当局の職員、そして一般市民など多くの人々が、この綱引きのような状況に関わっている。以下に、彼らのいくつかの物語を紹介する。

アレハンドロ・ルイススパルザ、フレディ・マルティネス

ルーシー・パーソンズ・ラボ (Lucy Parsons Labs)共同創業者

シカゴ西端に位置する静かな郊外であるオークパークは、アーネスト・ヘミングウェイの生誕地だ。フランク・ロイド・ライトが設計した建物や住宅が、世界で最もたくさん集まっている場所でもある。

つい最近までオークパークの村は、その手入れされた芝生やプレーリー様式建築にそぐわない新たな設備に対する、3年にわたる反対運動の中心地でもあった。その設備とは、フロック・セーフティ(Flock Safety)社製の自動ナンバープレート読み取り装置である。ナンバープレートを自動でスキャンし、盗難車や指名手配車両、あるいは逮捕令状が出ている運転手を探すための高速度カメラだ。

オークパークの団体「フリーダム・トゥ・スライヴ(Freedom to Thrive)」は、親、活動家、弁護士、データ科学者など多様な人々で構成されており、自分たちの地域に新たに導入されたこの技術が、有益でも公平でもない可能性があるのではないかと疑っていた。そこで同団体は、シカゴを拠点とする非営利団体ルーシー・パーソンズ・ラボ(LPL)に協力を依頼し、イリノイ州情報公開法に基づいてナンバープレート読み取りデータを請求するという、しばしば気後れしてしまうような手続きを進めた。

ルーシー・パーソンズ・ラボは、20世紀初頭に活動したシカゴの労働運動家ルーシー・パーソンズにちなんで名付けられた団体で、ナンバープレート読み取り装置、銃声検知システム、警察用ボディカメラなどの技術を調査している。

LPLはさまざまな団体に対してデジタルセキュリティや公的記録の利用に関する研修を提供しており、自分たちの居住地域を対象に導入された監視システムを監査・分析したいと考える地域住民から、頻繁に協力を求められている。LPLを率いるのは、シカゴ南西部出身の第1世代メキシコ系アメリカ人2人である。アレハンドロ・ルイススパルザはコミュニティ組織化とデータサイエンスのバックグラウンドを持ち、フレディ・マルティネスもコミュニティ組織化に携わってきた人物で、物理学のバックグラウンドを持つ。

LPLは現在、設立から10年目を迎えようとしているが、2022年までは完全にボランティアによる活動だった。その年、LPLは初めて大規模財団から、用途制限のない複数年の運営助成金を受けた。それが、シカゴに拠点を置くジョン・D・アンド・キャサリン・T・マッカーサー財団である。同財団は、いわゆる「天才助成金」で世界的に知られている。翌年にはフォード財団からの助成金も続いた。

それまでの完全ボランティア体制の予算と比べるとかなりの金額だったとルイススパルザは認めているが、この新たな資金によって、2人の共同創設者と2人のボランティアが常勤職員となった。しかしLPLは、「居心地が良くなりすぎて」鋭さを失うことがないよう強く意識している。ルーシー・パーソンズ・ラボの活動には粘り強さがある。彼ら自身、それは「私たちがこの活動の多くを無資金で実施してきた」ことから生まれた「戦闘的なたくましさ」の感覚によるものだと言う。

LPLの主要な戦略の1つは、警察の監視に関する未加工のデータセットを対 …

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