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ロールスロイス、ランボ…
高級車が1日30台消える
米輸送詐欺産業の内幕
Richard Chance
カルチャー Insider Online限定
The curious case of the disappearing Lamborghinis

ロールスロイス、ランボ…
高級車が1日30台消える
米輸送詐欺産業の内幕

ロールスロイスを輸送に出したら、二度と戻ってこなかった——米国でオンラインの積荷掲示板を悪用した高級車輸送詐欺が急増。2024年春以降の被害は1日あたり30台、損害額10億ドル超と見られている。組織犯罪化した詐欺産業の実態を追った。 by Craig Silverman2026.03.16

この記事の3つのポイント
  1. 高級車輸送詐欺が全米で急増し、犯罪者がオンライン積荷掲示板を悪用して正規業者になりすまし車両を盗んでいる
  2. フィッシングメールや偽造書類で輸送業者アカウントを乗っ取り、規制の抜け穴を利用して架空会社を登録し詐欺を実行
  3. 積荷掲示板の監視体制が甘く業界の技術革新が犯罪対策に追いついていないため、被害車両の多くは回収されずに終わっている
summarized by Claude 3

サム・ザールは、オレンジ色の内装とルーフを備えたグレーのロールスロイス・ドーンのコンバーチブルを初めて見たとき、自社の車両ラインアップに加えるのに最適な1台を見つけたと確信した。「当社の顧客層にとって非常に魅力的でした」。ザールは私に語った。彼はドリーム・ラグジュアリー・レンタル(Dream Luxury Rental)のオペレーション部長として、結婚式や卒業式、その他のイベントでスタイリッシュに移動したいと考えるデトロイト地域(米ミシガン州)の顧客のために、ロールスロイス、ランボルギーニ、ベントレー、メルセデスGクラスなどの高級車を手配している。

しかしザール部長は、そのロールスロイスを貸し出す前に、購入したマイアミの中古車販売店からデトロイトまで車を運ばなければならなかった(日本版注:マイアミからデトロイトまでは約1800キロメートルの距離がある)。

ザール部長のチームは、この輸送案件を「セントラル・ディスパッチ(Central Dispatch)」に投稿した。これは、車両輸送を手配したい自動車ディーラーやメーカー、車両オーナーの間で広く利用されているオンライン・マーケットプレイスである。仕組みは、少なくとも理論上はそれほど複雑ではない。通常の掲載情報には、車両の種類、出発地と目的地の郵便番号、引き取り日と配送日、そして報酬額が記載される。セントラル・ディスパッチのアカウントを持つ者なら誰でもこの仕事を見ることができ、引き受けたい輸送業者や輸送仲介業者は掲載された電話番号に連絡ができる。

ザール部長のチームは、その仕事を引き受けたいという輸送会社から電話を受けた。双方は料金に合意し、2025年1月17日に車を引き取る予定を立てた。ザール部長は、車両が密閉式トレーラーに積み込まれる様子をすぐ近くで見守った。数日後、1月21日までにはデトロイトに到着するだろうと考えていた。

しかし、その車はついに到着しなかった。

ザール部長は輸送会社の担当者に電話をかけ、何が起きたのかを尋ねた。

「その担当者は、何の話をしているのかまったく分からないという様子でした」。

ザール部長によると、その担当者は怒りながら、自分たちの会社は主にコカ・コーラ製品を輸送しており、高級車など扱っていないと主張したという。「彼は怒鳴り散らしていました」とザール部長は語った。

長年の間に、事業所に侵入されて車が盗まれたことや、貸し出した車が返却されなかったことはあった。しかし、輸送中の車が単純に消えてしまうという事態は、それまで経験したことがなかった。特に今回は、「誰もが車の輸送に利用する正規のプラットフォーム」であるセントラル・ディスパッチを使っていたため、問題が起こるとは思っていなかったとザール部長は語った。

「それが今回の事件の怖いところなんです。分かりますよね?」

大混乱を引き起こす

ザール部長は知らないうちに、新たに増えつつある種類の組織犯罪に巻き込まれていた。それは車両輸送詐欺と車両盗難である。詐欺師たちはフィッシングメールや偽造書類などの手口を使い、正規の輸送会社になりすまして高級車の輸送を請け負う。そして積荷を本来の目的地とは別の場所へ運び、テクノロジーやコンピューター技術、さらには昔ながらの解体工場(チョップショップ)の手口を組み合わせて、車両の元の所有者や登録記録の痕跡を消し去る。

それらの車両は米国内で再登録されて販売されたり、輸送コンテナに積み込まれて海外の買い手へ送られたりする。場合によっては、本来の所有者が車両の消失に気づく頃には、すでに転売されていたり国外に持ち出されていたりすることもある。

「犯罪者たちは、Webのポータルサイトを通じて自動車を盗むことが極めて容易になったと気づきました。容易というより、ほとんどシームレスになっているのです」と、フロリダ州ウェストパームビーチに拠点を置くディーラーズ・チョイス・オート・トランスポートディーラーズ・チョイス・オート・トランスポート(Dealers Choice Auto Transport)のスティーブン・ヤリヴCEOは語る。

盗難車が高額であることや、プロスポーツ選手などの有名人が所有している場合もあることから、個別の事件がメディアで取り上げられたこともある。2024年下旬、コロラド・ロッキーズの三塁手クリス・ブライアントが所有するランボルギーニ・ウラカンが、ラスベガスの自宅に向かう途中で行方不明になった。また同年、R&B歌手レイ・JはWebメディアのTMZに対し、2台のメルセデス・マイバッハが予定通りにニューヨークへ到着しなかったと語った。さらに昨秋には、NBAの殿堂入り選手シャキール・オニールが、車両輸送を依頼した会社がハッキングされたことで、18万ドルの特注レンジローバーを盗まれた。「正直なところ、今ごろはたぶんドバイにあるんじゃないかと言われています」と、このSUVをカスタムした会社の従業員の1人はYouTube動画でシャキール選手に話した。

しかし、米国全体に広がる車両輸送詐欺と盗難の流行は、過去2年間にわたって業界を揺るがしてきたにもかかわらず、依然として大きな注目を浴びていない。MITテクノロジーレビューは高級車が関係する十数件の事例を特定し、裁判記録を入手したうえで、複数州の司法当局、仲介業者、ドライバー、被害者に取材した。そして、輸送詐欺が全米でいかに大混乱を引き起こしているかを明らかにした。

この種の犯罪の規模を数値化するのは難しい。追跡している単一の機関や業界団体が存在しないためである。それでも、こうした司法当局や仲介業者に加え、国内最大級の複数のオンライン自動車輸送マーケットプレイスも、詐欺や盗難が増加していることを認めている。

8月に私がヤリヴCEOに取材した際、彼は2024年春以降に約8000台のエキゾチックカーや高級車が盗まれ、損害額は10億ドルを超えると見積もっていた。「平均すると、1日に30台が消えている計算です」。

複数の州および地方の司法当局者は、この数字は十分あり得るとMITテクノロジーレビューに語った(FBIにも取材を申し込んだが、返答はなかった)。

「驚きはしません」と、ネバダ州自動車局警察部門の責任者であり、米国自動車管理者協会の詐欺対策小委員会委員長でもあるJ・D・デッカーは語った。「これは巨大なビジネスです」。

司法当局や保険業界と連携して保険詐欺や関連犯罪を調査する非営利団体、全米保険犯罪局(National Insurance Crime Bureau、NICB)のデータも、この犯罪の波をさらに裏づけている。NICBは自動車盗難と貨物盗難の双方を追跡している。貨物盗難とは、商業輸送の一部である商品や現金、手荷物が盗まれることを指す広範なカテゴリーであり、輸送トラックを本来とは異なる場所へ向かわせて車両が盗まれるケースや、盗難車が輸送コンテナに積み込まれて持ち去られるケースも含まれる。NICBの自動車盗難統計によると、盗難件数はパンデミック中の増加後に減少傾向にある。一方で、同じ期間に貨物盗難は大幅に増加し、年間推定350億ドル規模に達した。NICBは6月、この数字が2025年に22%増加すると予測した。

NICBは、盗難貨物全体のうち車両分だけを切り分けたデータは公表していない。だが、同団体の地域担当役員であるビル・ウルフによれば、ボルティモア港での不正対策の取り組みでは、回収された盗難車の台数が2023年から2024年にかけて200%増加したという。ウルフ役員は、この急増は港を通過する盗難車を特定する取り組みの強化による可能性があると述べたが、取材したその日の朝にも、調査官が海外へ送られようとしていた高級盗難車2台を回収したと指摘した。

「1日、コンテナ1本で100万ドルです」とウルフ役員は語った。

ほかの多くの車両は二度と回収されない。運び出されたり売却されたりするスピードが速すぎるためかもしれない。アトランタの高級車ディーラー、トラヴィス・ペインは、輸送詐欺の犯人たちは車を奪う前から買い手を確保していることが多いと語った。「盗むときには、すでに計画ができているのです」。

2024年、ペインは購入したロールスロイスが輸送詐欺で盗まれたあと、その行方を突き止めようとして何カ月も費やした。そして最終的には、メキシコのポップスターのインスタグラムのフィードにその車が写っているのを見つけたという。彼は結局、その車を取り戻せなかった。

犯罪者たちは「これからもやり続けるでしょう」とペインは言う。「電話を数本かけて、メールアカウントをいくつか作るだけで、40万ドルの車をただで手に入れられるのだから。つまり、神にでもなったような気分になれるんです。そうでしょう?」

業界の革新の先を行く

自動車輸送詐欺の爆発的な増加は、この20年ほどのあいだに経済のさまざまな分野で起きてきたのと同じパターンをたどっている。かつては電話やファクス、個人的な関係を基盤に回っていたビジネスが、効率を高めコストを下げるオンライン・マーケットプレイスへ移行した。しかし、人と人との直接的なやり取りが減ったことでセキュリティ上の脆弱性が生まれ、しばしば国境を越えて活動する組織化された詐欺集団が業界に入り込む余地を与えたのである。

車両輸送の分野では、そのマーケットプレイスがオンラインの「積荷掲示板(load board)」である。そこでは、自動車所有者やディーラー、メーカーが、ある場所から別の場所へ輸送する必要がある車両情報を投稿する。セントラル・ディスパッチは自らを最大の車両向け積荷掲示板だとしており、Webサイトによれば、毎日数千台分の車両情報が同プラットフォームに掲載されているという。同社はコックス・オートモーティブ(Cox Automotive)傘下にあり、この企業は主要な自動車オークション会社、オートトレーダー(Autotrader)、ケリー・ブルー・ブック(Kelley Blue Book)などを所有する、自動車業界の巨大企業である。さらに、自動車ディーラーや金融機関、購入者と取引するそのほかの事業も手がけている。

セントラル・ディスパッチの仕組みは、当初はかなりうまく機能していた。しかしおよそ2年前から、組織的な詐欺グループが仲介業者や輸送業者のアカウントを乗っ取り、政府の認可制度の抜け穴を悪用して、驚くほど容易に、しかも警戒すべき頻度で積荷を盗み始めた。

盗難は、正規の積荷掲示板から送られてきたように見えるフィッシングメールから始まることがある。仲介業者や輸送業者である受信者がメッセージ内のリンクをクリックすると、本物のサイトに見えるページに移動する。しかし、そこでログインすると、ユーザー名とパスワードが犯罪者に送られてしまう。犯人は被害者になりすましてログインし、アカウントのメールアドレスと電話番号を変更して連絡をすべて自分たちに転送させ、高級車の輸送案件を引き受け始める。コックス・オートモーティブは取材を断ったが、声明で「積荷掲示板のシステムは依然として適切に機能している」とし、「詐欺の影響を受ける掲載案件はごく一部にすぎない」と述べた。

さらに犯罪者たちは、規制環境の緩さを悪用してオンライン・マーケットプレイスにアクセスしている。オンライン・マーケットプレイスにアクセスするには米国運輸省(USDO …

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