EV失速で苦境の電池業界、
製造撤退のスタートアップは
AI材料発見に賭ける
米国のEV税額控除が2025年末に終了し、主要バッテリー企業の倒産が相次いでいる。こうした中、米新興企業の1社は製造から撤退。AIによる材料発見に活路を求めている。だが、それが業界の救いになるかどうかは不透明だ。 by Casey Crownhart2026.03.30
- この記事の3つのポイント
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- セスAIのCEOは欧米のバッテリー企業の大半が倒産の運命にあると断言し、EV向け大量生産から撤退してAI材料発見事業に軸足を移した
- 同社は自社開発のプラットフォームで6つの新電解質材料を発見し、バッテリー製造の実績とデータを活用して他社への技術提供を目指す
- 専門家はAI材料発見が投資減少と政策支援鈍化に直面するバッテリー業界の短期的打開策になることに懐疑的な見方を示している
チャオ・フーは、バッテリー業界の現状についての見解を率直に語る。「欧米のバッテリー企業はほとんどが倒産したか、倒産する運命にあります。それが現実です」。
フーはマサチューセッツ州を拠点とするバッテリー企業であるセスAI(SES AI)のCEO(最高経営責任者)である。同社はかつて電気自動車(EV)などの主要産業向けに先進的なリチウム金属バッテリーを大量に製造することを目指していた。しかし現在は、人工知能(AI)による材料発見に賭けている。
フーCEOはこの方向転換を不可欠なものと見ている。「欧米企業が持続可能なビジネスを構築することは不可能です」と彼は言う。同社は依然としていくらかのバッテリーを製造しているが、EVのような大量生産が必要な市場ではなく、ドローンなどの小規模市場向けに絞っている。セスAIが事新たに注力するのは、独自の電池材料発見プラットフォームである。これを他のバッテリー企業にライセンス供与するか、自社で販売する材料の開発に使用する。
米国の主要なEVバッテリー企業の数社がここ数カ月で倒産し、セスAIのような企業は戦略を劇的に変更している。バッテリー製造を担う企業と業界のこの変化は、エネルギーの将来の地政学を形作る可能性がある。
最終的にセスAIへと発展することになる研究は、フーCEOが大学院での研究を修了したマサチューセッツ工科大学(MIT)で始まった。当時のフーCEOの研究は、石油・ガス探査への応用を目的としていた。この業界では地下深くにセンサーを送り込むが、そこでは温度が120℃を超えることがある。フーCEOらのチームはこれらの高温に耐え、1回の充電でより長く持続するバッテリーの開発を目指していた。
採用された技術は、固体ポリマーリチウム金属電池だった。これらのセルはアノード(負極)にリチウム金属を使用し、電解質(電池セル内でイオンが移動する材料)にポリマーを使用する。これらの構成要素を組み合わせることで、個人用デバイスやEVで現在一般的に使われているリチウムイオン電池に比べて、セルのエネルギー密度を大幅に向上させられる(リチウムイオン電池は一般的にアノードにグラファイト材料を、電解 …
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