KADOKAWA Technology Review
×
驚くほど似通うAIの答え、
「集団思考」の打破に挑む
スタートアップ
Photo illustration by Sarah Rogers/MITTR | Photos Getty
人工知能(AI) Insider Online限定
LLMs are stuck in a groupthink groove. This startup is trying to get them out.

驚くほど似通うAIの答え、
「集団思考」の打破に挑む
スタートアップ

チャットボットに1〜10のランダムな数字を聞くと、多くは「7」を返す。この奇妙な偏りは数字にとどまらない。車種を尋ねればトヨタかホンダ、タグラインを頼めば各モデルが判で押したように似た答えを返す。異なるLLM同士すら、ほぼ同じ答えに収束する。この「集団思考」を破ろうと、オーストラリアのスタートアップがあえて意外な答えを混ぜるAIを開発した。 by Will Douglas Heaven2026.07.02

この記事の3つのポイント
  1. 主流LLMは訓練データや手法の類似性から均質な回答に収束する傾向があり、創造性が求められる用途で限界を露呈している
  2. スプリングボーズはQwen3を独自追加学習し、多様性が必要な箇所にのみ意外性を挿入する手法でLLMの均質性を克服しようとしている
  3. 創造的発散が有効な場面は限定的であり、AIへの過度な依存自体への警戒も専門家から示されている
summarized by Claude 3

まずゲームをしてみよう。お気に入りのチャットボット——Claude(クロード)、ChatGPT(チャットGPT)、Gemini(ジェミニ)——を開いて、「1から10の間でランダムな数字を教えて」と入力してほしい。おそらく7が返ってくる。しかも、かなりの確率で。続けて「もう一つ」と入力すると3か4が、さらに「もう一つ」と入力すると8か9が返ってくるはずだ。

毎回当たるわけではない。だが、もしその通りになったなら、私に超能力があるのではないかと思うかもしれない。もちろん、そんなことはない。

実のところ、大半の大規模言語モデル(LLM)はマンネリ化している。その応答は、多くの人が想像するよりもはるかに予測可能で、創造性にも乏しい。コーディングやリサーチのような用途なら問題ないが、ブレインストーミングや旅行の計画のように発想の広がりが求められる場面では、この「集団思考」が問題になる。

オーストラリアのスタートアップ、スプリングボーズ(Springboards)は、その解決策を提示しようとしている。同社が開発したLLM「Flint(フリント)」は、「欧州のどこへ行くべきか?」といったオープンエンドな質問に対し、主流のLLMよりも幅広い回答を生成できるよう訓練されている。

「ほとんどの言語モデルはハルシネーション(幻覚)と戦っています」と、スプリングボーズの共同創業者兼CEO、ピップ・ビンゲマンは語る。「私たちはそれを歓迎しています」。

ビンゲマンが同社の新モデルを初めて見せてくれたとき、このランダム数字ゲームを披露してくれた。まるでカードマジックを見ているようだった。「これは営業で必ずお見せするデモなんです。毎回うまくいきます」と彼は笑う。

ChatGPTとClaudeがどちらも7を返した後、ビンゲマンはFlintに同じ質問を投げかけた。Flintも7を返した。「ほら、やっぱりそうなりましたね。でも構いません。7も立派な答えですから」。彼はセッションをリセットし、もう一度同じプロンプトを入力した。ChatGPTは7、Claudeは7、そしてFlintは3.7916を返した。

自分らしく走れ

数字だけの話ではない。ビンゲマンがChatGPTとClaudeに車の種類を一つ挙げるよう求めると、「トヨタかホンダが返ってきますよ」と予想した。そして実際にその通りだった。一方、Flintは「フォードF-150」と答えた。「これらのモデルには、表に出てこない情報がたくさんあります。ビュイックやテスラと答える能力は十分にあるのに、そうしない。特定の答えに偏っているのです」。

ビンゲマンは最後に3つのモデルへ同じプロンプトを送った。「ニューバランスのランニングシューズのキャンペーン用タグラインを一つ考えてください。タグラインだけで構いません」。Claudeの答えは「Run your way.(自分らしく走れ)」、ChatGPTもまったく同じ「Run your way.」だった。Flintは「Built to last, run to win.(長く使える、勝つために走れ)」と答えた。受賞作になりそうなコピーではないが、少なくとも違う発想ではある。

LLMのこの奇妙な制約は、研究者の間でも注目を集め始めている。11月には、『Artificial Hivemind: The Open-Ended Homogeneity of Language Models (and Beyond)(人工ハイブマインド:言語モデル〈そしてその先〉におけるオープンエンドな均質性)』と題する論文が発表され、個々のLLMだけでなく、異なるモデル同士でも驚くほど似通った回答を返すことが明らかになった。オープンエンドな質問を与えると、異なるLLMがほぼ同じ答えへ収束するの …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. Can the US battery market untangle from China? 送電網の蓄電池から中国製を締め出し、米国が払う「自立」の代償は
  2. Promotion How AI could reshape Japan’s white-collar workforce 【10/6開催】AIで浮いた人材、次の一手は地方に——冨山和彦氏ら登壇
  3. This geneticist’s age-reversal tech could help restore sight 失明マウスの視力回復に成功、若返りブームの震源となった研究者
  4. Meet a mouse whose brain cortex is made up of human cells 脳容積の半分がヒト細胞に、スタンフォード大が作った「異種皮質マウス」
MITテクノロジーレビューが選んだ、AIの10大潮流 [2026年版]

AIをめぐる喧騒の中で、本当に目を向けるべきものは何か。この問いに対する答えとして、MITテクノロジーレビューはAIの重要なアイデア、潮流、新たな進展を整理したリストを発表する。

特集ページへ
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る