記録ずくめの猛暑の夏、しかし本番は来年かもしれない
欧州では6月と7月が観測史上最も暑い2カ月となり、米国本土では7月が史上最も暑い月を記録した。だが専門家は、すでに来年を見据えている。発達中のエルニーニョは観測史上最強級になる可能性があり、その影響は数カ月遅れて現れるため、気温への打撃は2027年に本格化する見込みだ。今から備える必要がある。 by Casey Crownhart2026.08.14
- この記事の3つのポイント
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- 2026年夏は欧州・米国・韓国で観測史上最高気温を記録し、気候変動が熱波を深刻化させている
- 急速に発達した今回のエルニーニョは観測史上最強級となる可能性があり、その影響は2027年に最大化する見通し
- 短期的な個人の適応策に加え、化石燃料依存からの脱却と再エネ移行が根本的解決策として不可欠
この夏、北半球の多くの地域は猛烈な暑さに見舞われた。6月と7月は、欧州で観測史上最も暑い2カ月間となった。米国本土(アラスカ州とハワイ州を除く48州)では、7月が観測史上最も暑い月となった。韓国では観測史上最高の気温が記録された。
猛暑はまだ終わっていないが、一部の科学者はすでに2027年を見据えている。専門家によれば、今回のエルニーニョ現象は今年よりも来年の気温に大きな影響を及ぼすという。
夏が(ゆっくりと)終わりに近づき、気温も(願わくば)下がり始めるなか、なぜ今年の夏はこれほど暑かったのか。来年は何が待ち受けており、私たちはどのように備えるべきなのか。
化石燃料を燃やし続け、温室効果ガスを大気中に放出するにつれて、世界各地の気温は上昇している。気候変動によって、熱波はより発生しやすくなり、強度も増している。ただし、温暖化の進行速度は地域によって異なる。欧州は世界で最も急速に温暖化している大陸であるという、不名誉な記録を持つ(地域的な温暖化の速さでは、北極圏に次ぐ)。
欧州がこれほど厳しい夏を迎え、熱波に繰り返し襲われたのも、それほど驚くことではない。ある研究では、欧州で5月に発生した熱波を分析し、気候変動が大きな役割を果たしていたことを明らかにした。同様の熱波が1976年に発生していたとすれば、現在の気候条件下での熱波より約3.5℃低かったと推定されている。
米国も猛暑を免れなかった。アラスカ州・ハワイ州を除く米国本土の7月の記録は、約1世紀にわたって維持されてきた1936年7月の記録を正式に塗り替えた。国土の広い範囲を襲った環境災害「ダストボウル」の時代に打ち立てられた記録を更新しているという事実は、懸念すべきことだ。
しかし来年に目を向けると、エルニーニョはさらに大きな影響をもたらす可能性がある。
ここで簡単に基礎を確認しておこう。海洋と大気にまたがる自然な変動パターンとして、エルニーニョ・南方振動(ENSO)がある。数年単位で、海洋と風のパターンの間にあるフィードバック系が一方向へ変化し、その後反対方向へ変化する。この2つの状態がエルニーニョとラニーニャである。
太平洋は大量の日射を受け、海面付近の水温が上昇する。通常の状態では、地球の自転の影響で生じる貿易風が暖かい表層水を西へ運ぶ一方、東部太平洋では深層の冷たい海水が海面近くまで湧昇する。それに伴って暖かい空気が上昇し、東へ流れた後、再び下降する。
エルニーニョが発生すると、貿易風が弱まり、中部太平洋に蓄えられた熱が増加する。その結果、上空の大気が暖められ、大気と海洋の循環を乱す暖気域が形成され、世界各地の降水量や気象パターンが変化する。
私たちはすでにエルニーニョの局面に入っている。米国海洋大気庁(NOAA)は、太平洋の特定海域の海面水温が平年より0.5℃以上高い状態に加え、大気にもそれに対応する変化が見られる期間をエルニーニョと定義している。
これは地球全体の気温にとって重大な意味を持ちうる。エルニーニョそのものが気候システムに新たなエネルギーを加えたり、地球全体を長期的に温暖化させたりするわけではない。本質的には、海洋に蓄えられていた熱を大気へ放出する現象である。
しかし気候変動によって、大気と海洋にはすでに大量の熱が蓄えられている。この年々の自然変動と長期的な温暖化傾向が重なることで、極めて深刻な結果をもたらす可能性がある。
今回のエルニーニョは、とりわけ強いものになると予想されている。一部の予測では、海面水温偏差が平年を3.5℃以上上回るところまでピークに達し、観測史上最強のエルニーニョになる可能性がある。また発達も非常に急速で、気候科学者ゼケ・ハウスファーザーは『カーボン・ブリーフ(Carbon Brief)』の分析記事で、「観測記録上、最も急速に発達したエルニーニョの1つ」としている。
今回のエルニーニョはすでに気温に影響を及ぼし始めているが、まだ発達途上にある。エルニーニョが世界平均気温に及ぼす影響は、海洋の状態が変化してから数カ月遅れて現れる傾向があり、影響は来年さらに顕著になる可能性が高い。
ハウスファーザーは分析の中で、近年のエルニーニョでは、記録的な高温が発生から2年目の暦年に現れることが多いと指摘している。直近のエルニーニョは2023年に発達し、2024年まで続いた。2024年は現在も、観測史上最も暑い年の記録を保持している。今回のエルニーニョが今後どのように推移するかには不確実性があるが、現時点では相当な規模になる見通しだ。
この夏の熱波がこれほど過酷だったことを踏まえると、来年は世界の多くの地域で、さらに高い気温が記録される可能性がかなり高い。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は6月のビデオ声明で、「エルニーニョの状況は、温暖化する世界の火にさらに油を注ぐことになります」と述べた。
今から備えを始める必要がある。個人でも、近い将来に向けてできることはある。これまで先延ばしにしてきたのであれば、エアコンの購入、太陽光発電設備と非常用蓄電池の設置、自宅の断熱性能の向上などを検討すべきだ。
しかし長期的には、化石燃料を燃やし続けて気候変動を加速させている限り、気温は上昇し続ける。グテーレス事務総長は声明でこう述べた。「唯一有効な対応策は、この危機に見合った気候変動対策です。化石燃料への依存を断ち、再生可能エネルギーへの移行を加速し、最も脆弱な人々を守り、すべての人に早期警戒システムを届けることです」。
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- ケーシー・クラウンハート [Casey Crownhart]米国版 気候変動担当記者
- MITテクノロジーレビューの気候変動担当記者として、再生可能エネルギー、輸送、テクノロジーによる気候変動対策について取材している。科学・環境ジャーナリストとして、ポピュラーサイエンスやアトラス・オブスキュラなどでも執筆。材料科学の研究者からジャーナリストに転身した。