KADOKAWA Technology Review
×
【4/24開催】生成AIで自動運転はどう変わるか?イベント参加受付中
全ゲノム解析でも
診断できない病気がある
Sam D'Orazio
カバーストーリー 無料会員限定
When Even Genome Sequencing Doesn’t Give a Diagnosis

全ゲノム解析でも
診断できない病気がある

ゲノム解析の費用が下がり、以前ならばく大な料金がかかった全ゲノム解析は、米国で数千ドルで受けられるようになった。しかし、ゲノム解析の結果をどう解釈するかは決まっておらず、希少疾患によっては、全ゲノム解析でも病気を診断できないことがある。 by Emily Mullin2017.04.24

4歳児のベケット・エドワーズくんは、すでに数多くの遺伝子検査を受けてきた。しかしエドワーズ一家は答えを得られずにいる。

両親のエリックとトリシア(ロサンゼルス在住)は、生まれてすぐにベケットくんの筋肉がふにゃふにゃしていることに気付いた。2歳6カ月時点で40~50語あった語彙は失われ、現在はごくわずかな言葉しか話せず、そのほとんどが片言だ。

病気の子を持つ親なら誰もが、わが子の病気が何なのか知りたい。エリックとトリシアも例外ではない。ベケットくんは遺伝性疾患だと考えた医師は、答えを得るためにDNAを調べた。遺伝子検査で診断できることはよくあり、それで患者を治療に導けるケースがある(「勝つのは誰か?適確医療イノベーション」参照)。病気が何なのかを知るため、エドワーズ一家は長い診断の旅に出た。精度が向上し続けるたくさんの検査の最後にたどり着いたのがベケットくんの全ゲノム解析だ。ゲノム解析のコストは下がり続けており、患者はより包括的な検査を受けられるようになっている。

ベケットくんの担当医はまず、標準的な遺伝子検査を受けるように勧めた。遺伝疾患の「プラダー・ウィリー症候群」(ベケットくんの症状のいくつかと一致する希少疾患)を調べる検査を受けたが、結果は全て陰性だった。

一部の疾患の可能性が除外された後、一家は次の段階である「全エクソーム解析」でベケットくんを調べることにした。全エクソーム解析とは、人間の全ての既知の遺伝子を解析することだ。「エクソーム(exome)」の「ex」は「expressed(遺伝子発現)」のことで、タンパク質の合成に関わるDNAを指す。エクソームはヒトゲノムの60億のDNA文字のうち、たった1.5%分に過ぎないが、疾患を発生させる可能性はエクソームの突然変異である可能性が最も高い。ベイラー医科大学(ヒューストン)で遺伝子カウンセラーを務めるジル・モクリー助教授は、エクソームは遺伝子分野の「低い位置の果実(簡単に解決できる問題)」だという。

エドワーズ一家は3人とも全エクソーム解析を受けた。健康な両親の検査で発見された異常なDNAの突然変異は、ベケットくんの疾患の原因から除外できる。エクソーム解析は2010年に初めて専門クリニックに導入され、約25 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る