KADOKAWA Technology Review
×
来れ、若きイノベーター! Innovators Under 35 Japan 2022 応募受付開始。
実用化が近づく飛行車のオーナーに求められるふたつの資格とは?
Flying Cars Are Becoming Reality—But Do You Have What It Takes to Own One?

実用化が近づく飛行車のオーナーに求められるふたつの資格とは?

電動飛行機や道路を走行できる飛行車の実用化が本当に迫っている。だが、本当に飛行車のオーナーになるには、ふたつの資格をクリアする必要がある。 by Jamie Condliffe2017.04.24

飛行車は必ず実現する。しかも、そう遠くないうちに、飛行車のオーナーにだってなれるだろう。だが、思い切って飛行車を買うと決めたオーナーには、かなり大きな障壁がふたつ立ちはだかる。

ドイツ企業のリリウム(Lilium)は4月20日、2座席の完全電動空中タクシーを実際に飛行して見せた。リリウムの機体は垂直に離着陸でき、長さ10mの翼部に搭載された36気筒ジェット・エンジンで空を飛ぶ。この機体は、オンデマンド型の飛行ネットワークを構築したいウーバーの熱い夢をさらに激しく燃え上がらせるだろう。

リリウムの機体の航続距離は1回の充電で約290kmで、最大飛行速度は時速288kmを目指して設計されている。リリウムはこの機体でマンハッタン(ニューヨーク)の中心部からジョン・F・ケネディ国際空港までわずか5分以内、36ドルの料金で素早く移動できる、としている(現在、同じ区間をタクシーで移動すると乗車時間は55分間、運が悪い日だと料金は2倍程度かかる)。渋滞がなく、ほぼ直線の経路。これこそ、空の魅力だ。

ただし、リリウムの飛行タクシーは自動車のように道路を走れない。では、電動飛行機のかわりに、道路も走行できる飛行車を所有できるなら、いったいどれだけの人が欲しがるだろうか?

ちょうどいいタイミングで、スロバキア企業エアロモービル(AeroMobil)が同社初の市販用飛行車を発表した。ずばり「フライング・カー」と命名された飛行車(記事冒頭の写真)は、幹線道路を素早く走行できる。フライング・カーは数年間かけて開発され、試作機が初飛行したのは2013年だ。だが今回、エアロモービルは市販用の機体を500機製造する計画で、2020年までには顧客に納機できるという。

ただし、フライング・カーの購入には、懐にかなりの余裕が必要だ。フライング・カーの価格は100万ドル以上になる見込みで、現時点では富裕層にしか手が届かない。だが、代金を支払えるなら、価格に見合った最高仕様の機体が手に入る。最大走行距離は約700km、最大飛行距離は約750kmで、平滑な舗装道路上の最大走行速度は時速約160km、最大飛行速度は時速約360kmだ。走行モードと飛行モードは3分以内に切り替えられる。緊急着陸用のパラシュートも搭載されている。

ちょっと待て、パラシュートだって? 飛行車による未来の移動と現実の間にあるもうひとつの障壁がこれではっきりしてきた。勇気だ。飛行車の機内でシートベルトを着用することに不安があるのはちっともおかしくない。飛行車の購入について消費者に関心をたずねたミシガン大学の研究チームによる最近の調査によれば「多くのアメリカ人は、飛行車の安全性について非常に心配している」ことがわかった。

調査は、飛行車は本質的に安全ではない、といいたいのではない。実際安全でも、パラシュートがあれば役に立つ。だが、空中を高速で飛ぶステーションワゴンほどの大きさの機体に自分の命を託すには、思い切った盲信的信頼が必要だ。それでも渋滞から解放され、思うがままの経路で素早く移動できる魅力は、多くの人が思い切りのよさを見せつけるには十分かもしれない。ミシガン大学の調査では「安全上の懸念はあっても、多くのアメリカ人は、それでも飛行車を使ってみたい」ともわかった。

それなら節約してお金を貯めておこう。

(関連記事:Reuters, Wired, University of Michigan, “ウーバー、飛行タクシーの10年以内実現を計画,” “Flying Cars Now Seem a Bit Less Ridiculous, but Not Much,” “「求む!飛行車のテストパイロット」は開発順調の証?”)

人気の記事ランキング
  1. How China’s biggest online influencers fell from their thrones 桁外れの中国トップ・インフルエンサー、一夜にして転落
  2. Scientists hacked a locust’s brain to sniff out human cancer バッタの脳を改造、人間のがんの「嗅ぎ分け」に成功
  3. What impact will DeepMind’s scientific AI have on our society? アルファフォールド2が社会に与える「アルファ碁」以上のインパクト
  4. How censoring China’s open-source coders might backfire 中国版ギットハブ、コードを検閲・遮断か? OSS開発者に衝撃
  5. Can grid storage batteries save Japan’s power supply crisis? 送電網向け蓄電池は「需給ひっ迫」の危機を救えるか?
タグ
クレジット Photograph by Valery Hache | Getty
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
日本発「世界を変える」35歳未満のイノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. How China’s biggest online influencers fell from their thrones 桁外れの中国トップ・インフルエンサー、一夜にして転落
  2. Scientists hacked a locust’s brain to sniff out human cancer バッタの脳を改造、人間のがんの「嗅ぎ分け」に成功
  3. What impact will DeepMind’s scientific AI have on our society? アルファフォールド2が社会に与える「アルファ碁」以上のインパクト
  4. How censoring China’s open-source coders might backfire 中国版ギットハブ、コードを検閲・遮断か? OSS開発者に衝撃
  5. Can grid storage batteries save Japan’s power supply crisis? 送電網向け蓄電池は「需給ひっ迫」の危機を救えるか?
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.7
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.7世界を変える10大技術 2022年版

パンデミック収束の切り札として期待される「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)飲み薬」、アルファ碁の開発企業が作った「タンパク質構造予測AI」、究極のエネルギー技術として期待が高まる「実用的な核融合炉」など、2022年に最も注目すべきテクノロジー・トレンドを一挙解説。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る