KADOKAWA Technology Review
×
Uber’s New Goal: Flying Cars in Less Than a Decade

ウーバー、飛行タクシーの10年以内実現を計画

配車サービスを手がけるウーバーは、青空の下で展開されるような非現実的なアイディアに溢れている。 by Jamie Condliffe2016.10.28

ウーバーは野心に満ちている。タクシー産業への革命的な参入自動運転車貨物輸送を自動化するトラックの開発といったビジネスでは飽き足らず、ウーバーは現在、さらに大きな目標を掲げている。難易度だけでなく、位置的にも高い。オンデマンドの都市型飛行システムを導入するというのだ。

「都市型飛行システム」(飛行車の呼び名としては背伸びした印象だ)は、新しいアイディアが少しでも現実的に聞こえるように、意図的に選ばれたとしか考えられない。しかしウーバーは飛行車の計画書を発表する段階まで至っており、非常に真剣だ。計画書では、自社の飛行車「ウーバー・エレベート」についての詳細を意欲的に説明している。

「高層ビルの建築で都会の狭い土地が有効活用されたように、都市型航空輸送システムで上空を飛び回り、地上の交通渋滞を緩和させる」

ウーバーは自動運転車が実現した後の近未来に夢を膨らませているようで、自動運転だけでは物足りないようだ(残念なことに、瞬間移動の技術はいまだ開発されていない)。

Uber of the future?
ウーバーは将来こうなる?

ウーバーが構想を描いているのは「垂直に離陸、着陸する小型の電気飛行機による輸送網」だ。しかし、ウーバーが現在配車に使われる自動車を開発していないことからわかるように、電気飛行機の開発計画は持ち上がっていない。その代わり、ウーバーは電気飛行機の開発者としてZee.AeroJoby AviationeHangTerrafugiaのような企業名をあげている。どの企業も、理論的にはウーバーの計画を実現できるような試作機を開発している。

その上、ウーバーは電気飛行機を開発するテクノロジーが5年以内には十分に発達すると考えている。グーグルの共同創業者ラリー・ペイジの考えもウーバーと同様だ。ペイジは今年初め、飛行車を開発する2社に対し、個人的に投資した。しかし、飛行車によるビジネスの実現以前に解決が必要な大きな欠点がいくつかある。欠点が解決されない限りは、ウーバーが掲げる5年の期間は楽観的すぎるように思われる。

もちろん、ウーバーは飛行車の問題を自覚している。発表された計画書では、ウーバーは懸念事項として、(深呼吸して!)電池テクノロジー、車両効率、車両性能や信頼性、コストや手頃な料金設定、安全性、航空騒音、排出ガス、離陸や着陸に必要なインフラ、操縦士のトレーニング、航空管制、認証プロセスの確立等をあげている。

こうした問題点は解決できるとしても、法律面での問題が残る。一例を挙げると、垂直離着陸機は軍事用を除いてはほとんど導入されていない。ウーバーもこの事実を認めており、「認証手続きの点で新しい取り組みになり、新設計の航空機の認証手続きは従来から非常に進展が遅い」としている。

ドローン産業でも指摘されているように、航空管制については全くの別問題だ。米国連邦航空局 (FAA)は、配達用の小型ドローンの利用に関する法律を2020年頃までに調整する見込みだが、飛行車は規制対象にすらなっていない。

あらゆる問題を考慮し、ウーバーはエレベートの本格導入を今後5~10年で実現できるのではないかと考えている。非常に大きな挑戦であり、ほぼ不可能だ。しかしウーバーも十分に知っているように、飛行車ビジネスの実現は非常に魅力的だ。

(関連記事:Uber Elevate, “Flying Cars Now Seem a Bit Less Ridiculous, but Not Much,” “Delivery Option: Drone. Arrival Estimate: 2020,” “Work in Transition,” “What to Know Before You Get in a Self-Driving Car,” “Otto’s Self-Driving 18-Wheeler Has Made Its First Delivery”)

人気の記事ランキング
  1. Advanced solar panels still need to pass the test of time ペロブスカイト太陽電池、真の「耐久性」はいつ分かる?
  2. The AI Act is done. Here’s what will (and won’t) change ついに成立した欧州「AI法」で変わる4つのポイント
  3. Apple researchers explore dropping “Siri” phrase & listening with AI instead 大規模言語モデルで「ヘイ、シリ」不要に、アップルが研究論文
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Advanced solar panels still need to pass the test of time ペロブスカイト太陽電池、真の「耐久性」はいつ分かる?
  2. The AI Act is done. Here’s what will (and won’t) change ついに成立した欧州「AI法」で変わる4つのポイント
  3. Apple researchers explore dropping “Siri” phrase & listening with AI instead 大規模言語モデルで「ヘイ、シリ」不要に、アップルが研究論文
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る