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製造業をネット化する GEの巨額投資
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GE’s $1 Billion Software Bet

製造業をネット化する GEの巨額投資

ソフトウエア企業の製造業への進出に危機感を抱くゼネラル・エレクトリック(GE)は、産業機器をインターネットに接続し、ビッグデータを収集・分析する体制の構築で巻き返しを図る。 by Antonio Regalado2014.05.20

ゼネラル・エレクトリック(GE)のジェフリー・イメルトCEOの立場になれば、GEが2011年11月に製造業を変革すべく、10億ドルもの資金をソフトウェア開発に投じると発表した(GEはカリフォルニア州サンラモンに産業機器向けソフトウェアの開発拠点「GEソフトウェアセンター」を設立。今後3年間でソフトウェア開発に10億ドル以上を投資すると発表した)理由も理解できる。

つい10年ほど前まで地球上で最も価値のある企業として君臨していたGEは、今では米国最大の企業ですらない。時価総額でアップルやマイクロソフト、グーグルなどの大企業の後塵を拝している事実からわかる通り、今や産業界を支配しているのはソフトウェア業界なのだ。イメルトCEOが気付いたように、ソフトウェア業界でGEは大企業ではない。

社内調査によれば、GEはポンプの駆動や風力タービンの監視などに使われる産業機器用ソフトウェアの売り上げとしてセールスフォース・ドットコムの全売上高に相当する年間40億ドルを計上している。だがソフトウェアへの取り組みは散発的で、常に最新技術を採り入れているわけではない。こうした遅れは、3年前からGEにとって危険な兆候を示し始めていた。GEには昔から、ジェットエンジンや医療スキャナーの素材や物理特性について最も熟知しているのは自分たちだから、産業機器についての理解度の深さで脅威となる企業は現れないだろうと思い込んでいた。だが、IBMのようにデータ分析に長じた企業が次第にGEを脅かし始めた。IBMなどはガス・タービンのような高価な機器がどういう条件下で動作不良を起こすかを、計器類もしくは振動モニターから得られるデータを分析するだけで把握できるようになっていたのだ。

IBMのようなソフトウェア企業による、データ分析という形での産業機器への進出は、ささいな出来事ではない。GEは産業機器部門で年間600億ドルの売上高を誇っているが、利益率が高いのは産業機器の保守運用サービスだ。現在、さまざまなソフトウェア企業がGEの最大の収益源に食い込むタイミングを虎視たんたんと狙っている。しかし、イメルトCEOが後に語ったように、GEには「産業機器からデータを収集するノウハウを他社に譲り渡せるほど余裕はない」のだ。

2012年、GEは他企業の進出への対抗策として「インダストリアル・インターネット」を提唱した。シリコンバレーから湾を隔てた対岸のサンラモンに新しい研究所を建設し、プログラマーやデータサイエンティストを中心とする、800人の従業員を雇用したのだ。

昨年、イメルトCEOは「GEのような企業は、ソフトウェアビジネスでは成功しないと何年も言われ続けてきました。弊社は図体が大きいので、動きが遅く、反応も鈍い面は否めません。しかし弊社は、この市場で勝 …

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