KADOKAWA Technology Review
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Glaxo and Verily Join Forces to Treat Disease By Hacking Your Nervous System

神経信号のハッキングで
慢性疾患を治療できる?

小型の体内埋め込み型装置で脳から送られる信号をブロックしたり修正したりすることで、慢性疾患を治療できるかもしれない。 by Jamie Condliffe2016.08.02

グラクソ・スミスクライン(GSK)とグーグルのライフサイエンス子会社ヴェライリーが協力して資金援助する新しいベンチャー企業は、小型装置で神経信号を補正し慢性疾患を治療する方法に資金を投入する。

グラクソとヴェライリーが今後7年間で7.15億ドルを投資する新社ガルヴァーニ・バイオエレクトロニクスの名称は「動物電気」(=神経)を1780年に発見したルイージ・ガルヴァーニにちなみ、サンフランシスコに研究センター、イギリスにGSKの生物化学のハブ機能を設置する。新社の投資先は、不規則な神経インパルスを修正する体内埋め込み式の小型電子システムの開発だ。

「電気薬学」とも呼ばれる装置は、神経の束の周りに小さな鞘を配置し、神経繊維を通る信号をブロックしたり変化させたりして、神経の末端にある臓器を制御する。装置によって脳から発せられる信号を打ち消したり、増幅させたりして、病気を治療するのだ。

GSKのバイオエレクトロニクス研究の責任者で、ガルヴァーニ・バイオエレクトロニクスのクリス・ファム初代社長は、開発する装置は、最初は錠剤くらいの大きさだが、試作を重ねていけば、コメ粒ほどにまで小さくできる、とロイターに語った。ガルヴァーニ・バイオエレクトロニクスの目標は、投資から7年以内に規制当局の承認が受けられる装置を完成させることだ。

ただし現時点では、ガルヴァーニ・バイオエレクトロニクスに具体的な製品計画はない。GSKの広報担当者は、新社は「炎症、代謝・内分泌異常、2型糖尿病を含む、幅広い慢性疾患に対処することになる」とMIT Technology Reviewに答えた。

GSKは既に電気薬学分野での知見がある。GSKのワクチン子会社の会長で、新社のモンセフ・スラオウイ取締役会議長は2013年のネイチャーの論文で、電気薬学分野へのGSKの関与を公式に認めた。GSKは現在、電気薬学分野の 80人もの外部研究者に投資しているとブルームバーグは伝えている。ヴェライリーは電化薬品の世界では新参者だが、体内埋め込み型血糖値センサーや糖尿病患者用の電子コンタクトレンズなどの他のベンチャーの中でも高い目標を掲げていた
以上の通り、ガルヴァーニ・バイオエレクトロニクスは比較的最近登場した分野に取り組んでおり、スラオウイ取締役会議長自身も2012年になってようやく確信を得たほどだ。ニューヨークタイムス紙の記事でスラオウイ取締役会議長は、神経システムをハッキングして病気を治療できるかもしれないと最初に聞いたときは半信半疑だったと述べた。

「ええぇ!電気ショックで免疫システムを変化させるだって?と、とても懐疑的でした」

はっきりしているのは、ヴェライリーもGSKも、電気薬学の手法に引き込まれたのだ。今度は、ガルヴァーニ・バイオエレクトロニクスが両社の信頼に応える番だ。

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クレジット Image courtesy of Leandro Agrò | Flickr
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
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