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ビッグ5が支配する
デジタル・エコノミーは
何をもたらしたのか
Why Tesla Is Worth More Than GM

ビッグ5が支配する
デジタル・エコノミーは
何をもたらしたのか

デジタル・エコノミーのビッグファイブである、アップル、アルファベット、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックによる「寡占的」な市場支配は経済成長の停滞を招いたとの見方がある。ビッグファイブの支配力が一層強まっていく中、私たちになすすべはないのだろうか? by James Surowiecki2017.07.21

デジタル・エコノミーは、コミュニケーションの方法、情報や商品、サービスの購入、余暇の楽しみ方など、多くを一変させてきた。ぱっと見た限り明らかに、非デジタル産業に大変革が起こった。たとえば、金融サービスが20年前と比べてどれだけ変化したかを考えてみてほしい。投資家たちは、まもなくデジタル・エコノミーが他の産業も一変させていくと期待している。だからこそ、電気自動車を開発・販売するテスラ・モーターズ(Tesla)は、生産量や売上高がゼネラルモーターズ(GM)より恐ろしく小さいにも関わらず、時価総額がGMよりも大きいのだ。

この現象は、いわゆるデジタル・エコノミーのビッグファイブである、アップル、アルファベット(グーグルの持ち株会社)、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックが、昨年、さまざまな点で世界で最も価値のある5社であった理由を説明している。

デジタル・エコノミーは、Webが発明された20年前に世界が抱いていた期待に応えてきたと言える。ただし、成果が思っていたより小さいことは指摘しておかなければならない。ネット時代が到来してからというもの、米国のGDP成長は歴史的水準と比較しても非常に停滞している。

デジタル・テクノロジーの恩恵を享受し、生産性は向上したのではないかと考える人は多いだろう。しかし、今世紀に入ってからの生産性はぱっとしない。1990年代後半に起きたネットバブル全盛期には、1970年代以来初めて生産性の上昇が加速し、その状況がしばらく続いた。テクノロジー・イノベーションが米国経済の一番の課題を解決したかのように見えた。

だが、生産性バブルは2000年代初頭に終わり、再来することはなかった。当初は、デジタル・エコノミーがもたらす自由財(売買の対象にならない財)が持つ真の価値がGDPに含まれていないと議論が湧き上がり、計測方法が間違っているのではないかと疑問視する声もあった。だがほぼ間違いなく、デジタル化がもたらすはずだった生産性革命はまだ実現していない。

労働市場もまた、期待されたほどには変わっていない。確かにこのところ、今までにない新しい働き方が登場している。ウーバー(Uber、配車サービス)に登録した運転手は大勢いるし、タスクラビット(TaskRabbiters、仕事マッチングサービス)を使って委託を受け、主要都市のホールフーズ(Whole Foods、食料品スーパーマーケット)で買い物をしている人もいる。だが、米国人は昔ほど職を転々としていない。事実、現在の米国人の転職率は、過去20年間を通じて最も低い。加えて、デジタル化により多くの労働者が職を失った。原因は自動化だけでない。オンライン・ショッピングは、数十万人規模で小売り関連従事者の職を奪った。

より重要なのは、満足できるような給料の良い仕事を、デジタル・エコノミーがさほど生み出さなかったことだ。実際、デジタル・エコノミーの隆盛は、労働市場が非常に脆弱になった時期と一致する。米国人労働者の賃金上昇率は、最近になってインフレ率より速いペースになりはじめたが、今世紀に入って以来ほとんどの期間は停滞に近い状態だった(開発途上国に関しても状況は同じだ)。

一概にデジタル化のせいとは言えないが、デジタル化は多くの人が期待するような雇用や経済成長の原動力にはならなかった。娯楽や出版産業だけでなく、ソフトウェア企業やIT企業、インターネット企業などの情報通信テクノロジーがGDPに占める割合は、2000年以来たった1%上がっただけだ。GDPには他産業におけるデジタル化の影響が考慮されていないため、過小評価であることはほぼ間違いないが、1%という数字には驚くばかりだ。加えて、デジタル企業として知られている企業で働いているのが、民間の労働者のほんの一握りだという事実もある。

一番驚くべき(そして潜在的にやっかいな)ことは、今日のデジタル・エコノミーが著しく安定していることだ。デジタル化に関連するバズワードはいつも「破壊」だ。インターネットなどのデジタル・テクノロジーは、競争圧力を加速し、支配力の座の交代を促すと考えられていた。従来型産業の秩序が何十年もトップであり続けた企業によって築かれていたのだとすれば、低い参入障壁と低いスイッチング・コスト(切り換え費用)を特徴とするデジタル・エコノミーでは、トップ企業が常に入れ替わるはずである。

だが、実際は反対だった。少なくとも消費者側から見たところ、現在のデジタル・エコノミーは、過去10年間以上にわたって同じ顔ぶれのビッグファイブに独占されており、世の中のほとんどの人が当分の間はビッグファイブによる独占が続くと予測しているようだ(時価総額を見る限り、5社すべてが今後何年も巨額の利益を上げると市場は予測している)。デジタル・エコノミーはプラットフォームを最大の価値の源泉とする経済現象であり、ビッグファイブのプラットフォームは過去に例を見ないほど収益性が高い。結果として、デジタル・エコノミーは事実上、寡占状態にある。ビッグファイブは時に競合し、時に協力するが、結局は各社がそれぞれの中核市場で強固な支配体制を敷いているのだ。

「寡占」は悪い印象を与えるが、デジタル・エコノミーにおいては、明らかな競争の抑止や独占行為によって作り出されたものではない。むしろ、経済学者はデジタル市場のことを、成功すれば覆しがたい優位性を持つ「勝者独り占め市場」と呼ぶ。現在デジタル・エコノミーの時 …

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