KADOKAWA Technology Review
×
ニュース Insider Online限定
China Builds One of the World’s Largest Geoengineering Research Programs

気候変動に人工的に対抗、中国の多額投資にリスクはないか

気候を人工的に変えることで地球温暖化に対抗する地球工学に中国が多額の資金を投じている。地球全体に影響を与える問題を中国がリードすることにリスクはないか。 by James Temple2017.08.04

中国は、この3年間で国が出資するものとしては世界最大級の地球工学の研究プログラムを立ち上げ、気候問題の領域で他の国々をリードする実績を上げてきた (「気候変動の最終手段「地球工学」の使用を誰が決断するのか? 」を参照)。

中国科学技術部が出資した約300万ドルのプログラムには、3つの機関に約15名の教員と40名の学生が所属している。研究者たちは、気候変動の技術的手法を採用することによる影響を評価し、関連する政策や統治に関する問題を調査している。最近立ち上げられたハーバード大学やワシントン大学での研究プログラムとは対照的に、研究には技術開発や屋外実験などは含まれていない (「グレートバリアリーフの珊瑚礁を救うには雲を明るくするしかない」を参照)。

「地球工学に関わる技術開発や屋外実験はまだ一般的に認知されているわけではありません。批判を避けるために、実験を躊躇しているグループもあります」と、プログラムを監督する中国在住の英国人氷河学者で気象予報士のジョン・ムーア氏はいう。

ムーア氏は長期間中国に在住しており、北京師範大学の全球変化与地球系統科学研究院の主任研究員を務めている。ムーア氏は先日、メイン州ニューリーで開催された有名なゴードン研究会議で、浙江大学と中国社会科学院も関わった最新の研究成果を報告した。非公開のイベントだが、プレゼンテーション後にMIT テクノロジーレビューに対して話を聞かせてくれた。

地球工学は、気候変動に対処し、地球温暖化を防ごうとする手法だ。さまざまなアプローチがある中、科学者たちは成層圏に粒子を噴霧して太陽光を拡散させたり、雲の太陽光の反射を強め、地上に到達する太陽光を減少できないか検討している。一般的に、こうした手法を使えば気温の上昇を抑えることは可能だと考えられているが、副作用が起きる可能 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. An ancient man’s remains were hacked apart and kept in a garage 切り刻まれた古代人、破壊的発掘から保存重視へと変わる考古学
  2. This startup just hit a big milestone for green steel production グリーン鉄鋼、商業化へ前進 ボストン・メタルが1トンの製造に成功
  3. AI reasoning models can cheat to win chess games 最新AIモデル、勝つためなら手段選ばず チェス対局で明らかに
  4. OpenAI has released its first research into how using ChatGPT affects people’s emotional wellbeing チャットGPTとの対話で孤独は深まる? オープンAIとMITが研究
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る