KADOKAWA Technology Review
×
These Engineering Tricks Are Helping Automakers Build Greener Cars

地味でも効果が大きい
ガソリン車の省エネ対策

二酸化炭素排出量を削減しながらピックアップトラックが大好きなの米国人を満足させるために、自動車メーカーはさまざまな手法を駆使している。 by Jamie Condliffe2016.08.12

アメリカ人は大型自動車が大好きだ。しかし、大型自動車はすさまじい勢いでガソリンを消費する。ところが、販売中のハイブリッド車も完全な電気自動車も、製造費はかなり高い。そこで自動車メーカーは、販売台数の多いガソリン車の人気モデルの燃費を高めるために、安上がりな工学的手法を使っている。

2011年に米国のオバマ大統領が発表した自動車メーカー13社との合意では、2025年までに平均燃費を1リットル当たり約23kmに向上させるのが目標だ。 しかし、ガソリン価格の安値が持続し、普通乗用車よりもピックアップトラックの売上が増加しており、目標の達成はだいぶ無理が出てきた。先ごろ発表された米国政府の報告書でも、燃費はどんなによくても1リットル当たり21kmが限度とされている。

目標を達成するには車体重量を軽くする方法がある。この方法は、従来アルミニウムやマグネシウム、カーボンファイバーの割合を増やすことが多かったが、ニューヨーク・タイムズ紙が伝えるように、ビスの代わりに接着剤を使う、奇抜なアイデアもある。

2017年にゼネラルモーターズがGMCブランドで発売するアカディアのスポーツ用多目的車(SUV)は、航空機メーカーがサブフレームに使用するのと同様な高度な接着剤を利用している。通常のリベットやスポット溶接とは異なり、接着剤は継ぎ目全体を固定するので、安定性が増す。しかも、自動車メーカーはより薄いスチールを使える。他の軽量化技術も合わせて、アカディアは以前のモデルに比べて約320kgも軽くなった。

また、車内部の電気システムも、環境保護の観点から改良が進められた。一般的なガソリン車のほとんどは、12vの定格電気システムを使用しているが、エコノミスト紙が指摘するように、2017年には48vのシステムが採用されるようだ。電圧を上げれば、大きなコストをかけずにハイブリッド車のように燃費がよくなる。

アウディが発表する予定の高級SUVであるSQ7を例にとると、48vシステムを使用してタービンに電力を送ることで、エンジンにより多くの空気を押し込み、瞬間的なパワー上昇を図っている。フォードフォーカスのプロトタイプは、同様の電源でトルク支援制御することで加速する。

こういった種類の進歩は、完全な電気自動車やトヨタのプリウスといったハイブリッドシステムへの切り替えを促すような劇的な排出量削減にはつながらないかもしれない。しかし、メーカーと消費者が従来の習慣をやめるきっかけになる。こういった技術が、米国で膨大な台数が購入される車両の排出削減に役立つ可能性があるのだ。

自動車は、ますますソフトウェア的に製造されるかもしれないが、それでも電気エンジニアや機械エンジニアは、自動車の効率性を高めるのに大きな役割を担っているのだ。

関連ページ

人気の記事ランキング
  1. A tiny new open-source AI model performs as well as powerful big ones 720億パラメーターでも「GPT-4o超え」、Ai2のオープンモデル
  2. This is the reason Demis Hassabis started DeepMind ノーベル化学賞受賞 デミス・ハサビスが語った 科学にピボットした理由
  3. Geoffrey Hinton, AI pioneer and figurehead of doomerism, wins Nobel Prize in Physics ジェフリー・ヒントン、 ノーベル物理学賞を受賞
  4. Geoffrey Hinton tells us why he’s now scared of the tech he helped build ジェフリー・ヒントン独白 「深層学習の父」はなぜ、 AIを恐れているのか?
タグ
クレジット Photograph by Bill Pugliano | Getty
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者は11月発表予定です。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る