KADOKAWA Technology Review
×
なぜいますぐ気候変動対策に
取り組まなければならないか
Uriel Sinai | Getty Images
カバーストーリー 無料会員限定
Global Warming May Harm Children for Life

なぜいますぐ気候変動対策に
取り組まなければならないか

米国で生まれた1200万人についての新たな分析から、幼児期における酷暑日の体験日数と、成人後の所得には関係があることがわかった。地球温暖化を放置しておくと、私たちの孫の世代の経済生産性に有害な影響を及ぼす可能性がある。 by James Temple2017.12.12

多くの研究は次のように結論づけている。地球の気温の上昇は熱性ストレスや熱射病のリスクを上昇させ、生産性や経済生産高を減少させ、世界的な貧富の格差を拡大し、より激しい暴力を誘因する(「Hot and Violent」を参照)。

スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校、米国財務省の研究者による新しい研究は、極度の暑さはたとえ短期間であっても、子どもと子どもの将来の経済面に長期的な影響を与える可能性があると提唱している。12月4日に米国科学アカデミー紀要に発表された論文によると、産まれる前の期間を含めて、個人の幼児期における酷暑はその子どもの30年後の収入に影響する可能性があるという。受胎から1歳までの間に、摂氏32度強あるいは華氏90度弱にまで気温が上がる日が1日あるごとに、30歳における平均所得が0.1%減少する。

論文では、高い気温がどのようにして低所得に結び付くのかという難しい問題に直接は取り組んでいない。胎児と乳幼児は「温度調節機能と交感神経系が完全には発達していないため、高い温度に特に敏感である」と注記するにとどめている。先立つ研究のいくつかは、幼児期における極端な気温を出生率低下と乳幼児死亡率の上昇に関連付けている。そして研究分野全体は、胎児期から乳幼児期における健康面での衝撃が成人期に与える影響を追跡する「健康と病気の発育上の起源(DOHaD:developmental origins of health and disease)パラダイム」の周辺で発展してきた。

より高い気温が、結果的に成人してからのより低い収入にもしかするとつながる可能性がある道筋はいくつかある。認識力の減退、健康面での継続的な問 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. Inside the tedious effort to tally AI’s energy appetite 動画生成は別次元、思ったより深刻だったAIの電力問題
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2025 「Innovators Under 35 Japan」2025年度候補者募集のお知らせ
  3. IBM aims to build the world’s first large-scale, error-corrected quantum computer by 2028 IBM、世界初の大規模誤り訂正量子コンピューター 28年実現へ
  4. What is vibe coding, exactly? バイブコーディングとは何か? AIに「委ねる」プログラミング新手法
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る