KADOKAWA Technology Review
×
世界を変える前に自ら変革を
MITTRが見た
2017年のシリコンバレー
カバーストーリー Insider Online限定
Silicon Valley’s 2017 Report Card

世界を変える前に自ら変革を
MITTRが見た
2017年のシリコンバレー

シリコンバレー界隈のテック企業にとって2017年は、人工知能(AI)などの分野でテクノロジーが目覚ましい進歩を遂げた一方で、ソーシャルメディアへのでっちあげ記事や有害コンテンツの投稿、性差別などの問題が公けになり、世間の非難を浴びた年でもあった。 by Martin Giles2018.01.12

未来の歴史家が2017年のシリコンバレーを振り返ったら、米国有数の大手テック企業やそれを生んだベンチャー・キャピタル界隈がかつてないほどに政治家や公的機関から疑いの目を向けられた1年だったと評価するだろう。シリコンバレーの革新力によってテクノロジーにおける目覚ましい進歩が実現したが、フェイクニュースや女性起業家へのセクシャル・ハラスメントの暴露が、2017年のシリコンバレーに影を落とした。特に重要な動きについておさらいしておこう。

良かった点

サンフランシスコのベイエリアの巨大テック企業にとって、2017年はこれまでで最も慌ただしい1年だった。人工知能(AI)が多くの巨大テック企業にとって最優先事項になった。数多くの企業がAIへの取り組みを開始する中で、グーグルが提供を開始したのが「テンソルフロー・ライト(TensorFlow Lite)」である。グーグルはオープンソースの機械学習ソフトウェア「テンソルフロー」により企業のAI導入を後押ししてきたが、テンソルフロー・ライトはその軽量版にあたる。

新たに登場したテンソルフロー・ライトにより、携帯電話や、冷蔵庫、スピーカーといった家電上でAIが利用可能になる。フェイスブックも「パーレイ(ParlAI)」をリリースしてAIソフトウェアの利用拡大に貢献した。パーレイは、研究者が会話型AIシステムを構築して、機械との対話に関わるさまざまな手法を組み合わせることを容易にするプラットフォームである(「チャットボットの圧倒的な進化を目指すフェイスブックの野望」を参照)。

AIハードウェアでも進展があった。サンタクララに拠点を構える半導体製造企業であるエヌビディア(Nvidia)の株価は1年を通して上昇した。研究所や企業が同社のGPUを大量に購入したからだ。多くの機械学習アプリケーションのチップとしてエヌビディアのGPUが採用されたのだ。エヌビディアはAIに焦点を当てた製品を数多く発売しただけでなく、同社のテクノロジーを用いた創造的なアプリケーションを実際に動かしてみせた(エヌビディア、「説明できるAI」へ向けた一歩を踏み出す」を参照)。グーグルもまた、新型の機械学習チップである「クラウド・テンソル・プロセッシング・ユニット(Cloud Tensor Processing Unit、クラウドTPU)」を発表。高速データ接続経由でクラウド中のTPUを連結し、強力なAIスーパーコンピューターを形成した。

シリコンバレーのテック企業にとってAIのほかに優先度が高いのが、自動運転車と拡張現実(AR)だ。2017年には、アルファベット(グーグル)傘下のウェイモ(Waymo)、ウーバー(Uber)、リフト(Lyft)、テスラ(Tesl …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. The coolest thing about smart glasses is not the AR. It’s the AI. ようやく物になったスマートグラス、真価はARではなくAIにある
  2. A tiny new open-source AI model performs as well as powerful big ones 720億パラメーターでも「GPT-4o超え」、Ai2のオープンモデル
  3. Geoffrey Hinton, AI pioneer and figurehead of doomerism, wins Nobel Prize in Physics ジェフリー・ヒントン、 ノーベル物理学賞を受賞
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年受賞者は11月発表予定です。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る