KADOKAWA Technology Review
×
カバーストーリー 無料会員限定
Why We Still Don’t Have Better Batteries

電池のイノベーション
うまくいかない本当の理由

電池系スタートアップは、なぜフル操業に達する以前に計画が頓挫してしまいがちなのか。 by Richard Martin2016.08.30

ARPA-E(米国エネルギー省の「代替エネルギーのための先端研究」プログラム)のエレン・ウィリアムズ・プログラム・ディレクターが7月にガーディアン紙の取材に述べた言葉が見出しを飾った。

ARPA-Eが資金を拠出した75以上のエネルギー貯蔵の研究プロジェクトにはきわめて有望な成果もあるが、コンパクトで低コストなエネルギー貯蔵の聖杯はつかみ所がない状態だ。

かなりの数のスタートアップが、経済的で安全でコンパクトでエネルギー密度が高い、キロワット時あたり100ドル未満でエネルギーを貯蔵できる装置をもうすぐ製造できる段階にある。この価格帯のエネルギー貯蔵にはガルバノ効果(電流の向きが変わることの例え)があり、風が吹くか太陽が照っているときにだけ利用できる再生可能エネルギーを24時間365日、送電網に供給するときの問題を克服し、電気自動車を軽量化し低価格化することになる。

しかし、こうした電池は化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を急ぐ必要がある領域で、実際には商用化されていない。新テクノロジーの見込みを大げさに語りがちなテスラのイーロン・マスクCEOですら、そう認めざるを得ないだろう。現状では、電気自動車メーカーは既存のリチウムイオン電池が徐々に性能を向上させることを前提としており、今後大きく飛躍するとは考えていない。

実際、多くの研究者の考えでは、エネルギーの貯蔵方法はリチウムイオン電池ではなく、完全に新しい化学と新しい物理から生まれる。リチウムイオン電池は過去10年間にわたり、家庭用電化製品から電 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. A long-abandoned US nuclear technology is making a comeback in China 中国でトリウム原子炉が稼働、見直される過去のアイデア
  2. Here’s why we need to start thinking of AI as “normal” AIは「普通」の技術、プリンストン大のつまらない提言の背景
  3. AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る