DNAメモリ実現へ第一歩、バクテリアでHello Worldの読み書きに成功
今後も増え続けるデータを保存するには、従来のメモリよりもはるかに密度の高いメモリが必要になる。イタリアのパドヴァ大学の研究者たちは、バクテリアのDNAにデータを保存し、保存したデータを読み取る実証実験に成功した。 by Emerging Technology from the arXiv2018.01.31
人間は毎年およそ16ゼタバイトという空前の速さで情報を作り出している(1ゼタバイトは10億テラバイトだ)。しかも、その速さは年々増加している。昨年、IT専門調査会社のIDCは、2025年までに毎年160ゼタバイト以上のデータが生成されるようになると計算した。
このデータはすべて保存しなければならないが、そうなると現存するメモリよりもはるかに密度の高いメモリが必要になる。1つの面白い解決策として、DNAの分子構造を利用する方法がある。DNAがデータの保存に使えることは研究者の間では以前からよく知られている。考えてみれば、DNAは個々の人間を作るための設計図を保存していて、それを1つの世代から次の世代へ伝達しているのだから当然だ。
コンピューター科学者にとって驚異なのは、DNAが1グラムにつきおよそ1ゼタバイトというデータ保存密度を実現していることだ。
だが、DNAのライブラリーにデータを保存し、それを必要なときに再び取り出せるような現実的なシステムを考案した者は今までだれもいなかった。
現在、その状況が変わろうとしている。イタリアのパドヴァ大学のフェデリコ・タベラたちの研究チームがそうしたシステムを、バクテリアのナノネットワークを利用して設計し、実際に試験をしたのだ。
原理は簡単だ。バクテリアはプラスミドと呼ばれる2本鎖DNAの微小な円環の形で遺伝情報を運ぶことが多い。これらの分子は、宿主細胞に抗生物質耐性のような何らかの優位性を与えることが多いという点で重要な役割を果たしている。
中でも重要なのは、バクテリアが、接合と呼ばれる過程で1つの細胞から別の細胞へプラスミドを伝達できることだ。これはバクテリアが遺伝情報を交換する方法の1つであり、その過程で途方もなく複雑なナノネットワークが形成される。
このことが新しい手法の根幹になる。タベラたちはこのナノネットワークを利用して、遺伝子操作によってプラスミドに組み込んだ情報を伝達しようと考えているのだ。
そのアイデアは、バクテリア細胞の内部の特定の場所に閉じ込められたプラスミドにデータを保存しようというものだ。保存した情報を取り出すには、そのプラスミドが存在する場所に運動性バクテリアを送り込む。運動性バクテリアは閉じ込められたバクテリアと接合し、データを運ぶプラスミドを捕獲する。最終的に運動性バクテリアは、その情報を読み取り装置まで運ぶ。読み取り装置は運動性バクテリアからプラスミドを抽出し、プラスミドが持っているデータを読み取る。
タベラたちのチームは、それぞれ異なる抗生物質に対する耐性を持つHB101とノバブルー(Novablue)という大腸菌バクテリアの2つの異なる菌株を使用して、原理を実証する実験をした。HB …
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